裏では陽キャ配信者、表では陰キャの俺が、真の陽キャになる物語
@R-to-E
第1話 恐怖の赤スパさん
「ハァッ。ったくなんで二年生なのに入学式に参加しなきゃならないんだよ。」
新一年生の入学式が終わり、俺ーー倉竹詩恩(くらたけしおん、高校二年)は一人でスタスタと帰路を辿っていた。
今日は一年生の入学式だったため、校内はお祝いムードで、放課後には、
仲の良いメンバーで入学式の打ち上げ兼新一年生歓迎会があったようだが、
案の定俺は誘われなかった。
(陰キャでボッチな高校生の宿命だからいいんだけど。
あんなことして何が楽しいんだか。)
まあそんなことは置いといて、こんな俺でもネットの世界ではスーパースターなのである。そう、何を隠そう俺は登録者100万人超えの大物ゲーム配信者、
「クラッシュ」なのである。
ちなみに、名前の由来は、
俺の苗字の最初の文字と名前の最初の文字を足しただけだ。
……などとかっこつけて言ってみたが、そんなこと世間に対しては言えない。
だって身バレしたら怖いし、配信とリアルの人格が違いすぎて、引かれたりするかもだし。
とまあそんなこんなで、今日は最近人気の「9番入口」をやる予定だ。
こう見えて一応プロなので、配信とは違う別のアカウントで下見をしたり、
レベルを上げたりしてから配信している。だから割と時間がないのだ。
時計を確認すると、現在時刻は17時過ぎ。
さっきよりもスピードを上げて家へと向かう。
と、その前に、今日もバリバリ徹夜をする予定なので、エナドリを買わなければならない。クルっと方向転換をして近所のコンビニまで向かい、
光並みの速さでエナドリを買って、コンビニを出て帰ろうとしたその時、聞き慣れた声がした。
「ちょっと!またそんな体に悪いもん買ってんの!?いい加減にしたら?」
出やがった。鮮やかな緑色の髪の、ポニーテールの少女。
身長は俺より少し低いが、クラスの女子では高い方だ。
綺麗に整っている顔から放たれる、俺に対する暴言はゼリーのように柔らかい俺の心を突き刺す。彼女は俺の幼馴染である、剱持理沙(けんもちりさ)だ。
ちなみに今年もクラスが同じだった。
先ほど俺が配信をやっていることは世間に言えないと言ったが、面倒なことに、訳あってこいつは知っている。
「……んだよ理沙か。今日も配信するからな。エナドリ必要なんだよ」
「またゲームかい。あんた好きだねー。今度さ、私と格闘ゲームとかやってみない?」
(げ、まずい。)
悔しいが、こいつは俺より格闘系のゲームが上手いのだ。中学の頃、勝負に挑んでフルボッコにされたのは、苦い思い出だ。可哀想だったな、俺のザンOエフ。
「……やんねーよ。どーせ弱いし」
「あら、まさか天下の配信者様が私相手にビビってんの?」
(こいつぅ……)
今すぐここでリベンジしてやりたいが、俺は今、急いでいる。
「 なわけねーだろ! でも俺は今急いでるんだ!また今度な!」
と言って俺は逃げるように走った。なんか奥で「卑怯者ー!」だとか叫んでるのが聞こえたきがしたが、幻聴かな?幻聴だね☆
「配信、いつも見てるんだから。」
そう言った剱持の声は、走り去る詩恩の耳に届くことはなかった。
***
なんとか予定していた時間に家へと着き、いろいろと準備し、俺は配信を始めた。
ちなみに俺は1人暮らしで、アパートに住んでいる。
アパートといっても、結構大きい方で、三階まである。
あと親が心配性すぎるので、エントランス前の入口では、カードをかざさないと入れない、完璧最強アパートなのである。一人暮らしで親元を離れて初めて分かる親のありがたさってのは、多分このことだな。
さて、配信(もちろん同接一万人!)はいつも通り進んでいき、そのまま終わって、いつもなら今ごろ寝ているはずだった。
が、今日の配信はなんというか、もうとんでもなかった。
どういうことかというと、その、ガチ恋勢に上限赤スパをされたのである。しかもわざわざアカウントを変えて3回もだ。
その内容はというと、
「いつも応援してます!」
「大好きです!!」
「愛してます! 絶対あなたのお嫁さんになります!そしてぐちゅぐちゅにしてぇ~♡」
などといったものだった。
(まぁ最初はいい。最初は。その後からはやばいと思うんだが?というか、最後怖いんだが?上限赤スパ3回したってことは……合計150000万円よ!?どこの金持ち?送ってくれるのは嬉しいんだけど、そっちの財布とか大丈夫そう?
あと、送り主、誰?匿名ってか名無しだったからわからないじゃん!)
とまあ、頭がパニックになり、そのせいで、眠気が吹っ飛び、そのことしか考えられず、全然眠れていないのだ。
赤スパさん(視聴者のみんなが勝手に考えた)による、もはやテロと同義な赤スパで、コメ欄はいつもの3倍くらい盛り上がっていた。
「結婚おめでとう、クラッシュ」とか、
「金分けて」とか、
「クラッシュは私のものよ!」とか。
……いやふざけんなよ!こっちは本気で困ってるんだぞ!!
結局ゲームに集中できなくて、クリアできなかったし、微妙な感じで配信を終わらせてしまったし。あぁ、もう本当に最悪な気分だ。
「もう何なんだよ!赤スパさん!!」
そんな詩恩の叫び声は深夜の街へと響いたのだった。
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