第27話 サキの人生(サキの視点)
私はサキ・マーブル。ミャタ・マーブルの姪に当たります。
商家の娘として大切に育てられ、将来はマーブル商会を盛り立てるような婿を迎えて、夫と共にマーブル商会を次ぐものだと思っていました。
あの時が来るまでは……。
お見合いで出会った男性は、さすが、おじ様が探してきただけのことがあり、何の問題もない男性に思えました。
ただ、商人というよりも、冒険家の方が似合う体格をしており、実際に交渉事よりも、身体を動かすことの方が得意とのことでした。
お見合いといっても、婚約は確定されていたようでした。
しかし、高い能力を持ちつつも、私の好みの男性を探してくるあたり、おじさまの手腕はなかなかでした。
直ぐに結婚というわけではなく、婚約中という形である程度一緒に行動を共にすることになりました。
一緒に冒険をするようになり、私も鍛えられました。あまり興味はなかったのですが、ゴールドカードをもられるまで評価されました。
私たちは色々な所をめぐり、珍しいお宝を見つけて、マーブル商会に大きく貢献しました。
そしてその時は来ました。あるダンジョンの最深部での出来事でした。
私たちは中年の男と戦闘になりました。
「ここにあるお宝は吾輩がいただく」
「何を言っている。お宝は見つけた者が所有者だ。急に現れたお前にその権利はない」
「うるさい。これらは我が『魔法使い軍団』に必要な資金になるのだ」
「何わけの分からないことを言っている」
「シャドーバイト」
それは1瞬でした。私たちの影は縛られてしまい。身動きが取れなくなってしまったのです。
「男は嫌いだ。くらえファイアボール」
元婚約者は一瞬で丸焦げにされてしまいました。
「ふむ。魔符は便利じゃが、まだ量産できないのが難点だな。女、殺されなくてよかったな。この世界の女は全て俺の女になる。またの」
そういうと男とお宝は1瞬で消えてしまいました。
残ったのは丸焦げになった元婚約者と私だけでした。
後の記憶はあいまいです。気が付いたらお屋敷に戻っていました。
「……さん、サキさん?」
ライムさんに呼ばれて気が付きました。そうでした。
今はフレシールの町でカオル様の宿を取ろうとライムさんと一緒に移動している最中でした。
どうして昔のことを思い出していたのでしょう。
元婚約者が殺されたのはだいぶ昔です。
今はカオル様に仕えています。ライムさんもカオル様に同じように仕えています。
「サキさん、本当は気が付いているんでしょう。『魔法使い』の秘密に」
私は周りを見渡しました。誰も私たちの会話を聞いている人はいません。
「その会話を屋外でするのは、
「わかったわ。大事な部分はぼやかして話すわ。で、どうなの? 気が付いているんでしょ」
「どうしてそれを……。ノーマとの会話はライムさんは聞いていないですよね」
「私は元々知っているのよ。エルフは長寿ですからね」
「気が付いているとしたら、何だというのでしょうか?」
「これからどうするのかって聞いているのよ。カオルさんと一緒にいても幸せになれないかもしれないということよ」
「幸せの価値は人それぞれです」
「でも子を成せないとわかっていてもそれでも幸せなのかな」
「それはあなたも一緒でしょう。ライムさんはどう考えているのですか?」
「私はカオルさんと添い遂げてもかまわないわ。エルフは人間と比べて長寿ですからね。カオルさんを看取った後、また新しい人生を始めるわ。でもあなたたちは違う。アキミちゃんやモナミちゃんはまだ若いからいいわ。新しい男性が現れることもあるでしょう。でもあなたは違うわ。今が旬なのよ。そんな時にカオルさんと一緒に行動しているのはもったいないから忠告しているのよ。あなたのことが好きだから心配なのよ」
「心配してくれるのはありがたいけど、私はカオル様のことが好きよ。あれほど誠実な方は珍しいわ。そういえば元婚約者も同じくらい誠実だったからしら。だから惹かれたのかもね。確かに子は成せないかもしれない。それでも一緒にいると楽しいのよ。詳しくは話せないけど、私の人生は1度終わっているわ。でもその人生を蘇らせてくれたのはカオル様よ。心配してくれるのはありがたいけど、実はライバルを減らしたいだけじゃないの?」
ライムさんは笑いながら言った。
「ばれてしまった」
私も笑い返した。
カオル様のことは好きだけれども、ライムさんとも良いお友達になれそうだ。
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