第26話 再び銅山へ

 ノーマの襲撃から数日が過ぎた。

 今は平凡な日々を過ごしている。

 ノーマがまだ生きている事。多分、まだ世界を滅ぼすことを諦めていないだろう。次はどんな手で来るのだろうか。


 30年かけて作られた『魔法使い軍団』はあれで全滅したはずだ。

 また同じように30年かけて同じことをするだろうか。今のノーマは、60代のはずだ。次の30年は耐えられないかもしれない。

 とするともっと時間のかからない手段を考えるはずだ。


 ちなみに僕が『EVE《イヴ》』で無力化した『魔法使い軍団』の人々は、正気にもどったものの、完全に回復するのには時間がかかるとの報告を受けている。

 とりあえず、今はノーマの再襲撃が来ないように願いながら、平凡な日々を楽しんでいた。


 ここは応接間。ミャタさんと会話している。サキさんには飲み物を準備してもらい、ライムさんと共にドアの外に待機してもらっている。

「ということで、フレシールの銅山へ行ってきます」


「何だ急に。カオル殿はそんな性格だったかの」

「もともとこんな性格ですよ。ノーマの出現によって、少し考えが変わったかもしれませんが」

「というと?」

「ノーマは僕の反面教師になってくれました。『魔法使い』も一歩踏み外すと、あそこまで堕ちるのだと」


「ふむふむ。それで?」

「ノーマを撃退した時の戦闘で、あの時の会話を聞いていたアキミとモナミ。サキさんは多分、『魔法使いの』条件を察したはずです。モナミは理解していないかもしれませんが」

「なるほど」


「彼女たちはやさしいので、それを僕に伝えることはないですし、口外することもないと思います」

 僕はサキさんの入れてくれた紅茶を1口飲んだ後に話を続けた。


「僕は調子に乗る男なのですよ。みんなが察してくれた上で、僕と行動をともにしてくれるなら、僕はもっと慕ってくれる女性を増やしたい。ハーレムを作りたいのです」

「またそれはぶっちゃけたね。カオル殿。儂も会ったころに、けしかけた覚えはあるが……。ノーマとの出会いでそんなに変わってしまったのじゃな」


「ということで、お金が欲しいのです。ハーレムを維持できるような大金が。そのための銅山です」

「よし。わかった。もともと許可をだしていたものだし、儂としても止める理由はない。まだ、拠点はこの屋敷のままなのじゃろ」


「そうですね。銅山で、どれくらい金を生成できるかわかりませんから、いきなり、自分だけの拠点を作るのは無謀だと思います。もう少しミャタさんに甘えようと思います」

「全然かまわんよ。儂としては銅から金ができるなら、丸儲けじゃからのう。もちろんカオル殿の言い値で買い取るよ」


「そういう訳にはいきません。あくまで銅山の所有者はミャタさんです。僕は銅から金を生成するに過ぎません。ミャタさんのものですよ。僕は……、取引の1割でももらえればよいと思います」

「大胆な発言をしたかと思えば無欲よの。カオル殿は」


「銅から金の生成などありえない『魔法』じゃ。ここは5割5割の分け前でどうじゃ」

 僕は一呼吸おいて、紅茶を飲んだ。お金はあればあるほどよい。ここはミャタさんの案に乗っても良いのではないか。


「分かりました。僕も譲って6割4割でどうでしょう。もちろん6割がミャタさんで」

「よし。それで大丈夫じゃ」

「まだ成功もしていないのに、僕たちは皮算用の会話をしているかもしれませんね」

「なに構わんさ。それに儂は成功すると信じておるからの」


 そんなわけで今回は5人と1匹での移動だ。アキミとモナミ。サキさん、ライムさん。それにシロだ。

 中学生に、元婚約者あり、エルフ。全員僕が手を出せない人たちだ。でも、こうやって仲良くなり、一緒に移動するだけで楽しいものだ。日本では考えられなかった事だ。

 次はどんな人と出会えるかな。それも楽しみだ。それには甲斐性が必要だ。まずその為にも錬金を成功させないと。

 

 そういえば、シロの牙をギルドに納品もしてきた。ランクは残念ながら上がらなかったけど、カードを交換しなくてはいけないから、助かったかな。

 ノーマの撃退を考えたら、幻のレインボーカードも申請できる。とはギルド長、サトオーさんの言だ。レインボーともなると国王の判断が必要になるから、もらえるとしても当分先になるとも言っていた。


 僕たちは再びフレシールの銅山へ到着した。

 今回は前回のように騒動にはなっておらず、のどかな状況であった。


「今回はノーマの襲撃のようなこともないだろうから、今日はゆっくりして、明日にでも銅山へ入ろうか」

「わかりました。早速宿の手配をしてきます」


「ありがとうサキさん。僕たちはその間、町でも探索してみようか」

「カオルーー、お菓子買ってお菓子ーー」

「モナミちゃんはお菓子が好きですね。私はカオルさんと一緒にデートできれば……。みんなで一緒に歩きましょうか」

「私はサキさんと一緒に宿の手配に行きます」

「カオルさんはアキミとモナミとシロの面倒をお願いします」

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