第25話 後始末(ライム視点)
私はエルフのライム。今はカオル殿の専属メイドです。
長い間、生きていて、生き疲れたのでしょうか。私は自分の記憶を封印して、放浪していました。しかしカオル殿の魔法を見て記憶が戻ったようです。
自分が魔法を使えるのはカオル殿には話していない秘密です。
ここはとある廃墟の地下にある研究所。
今は人を待っています。
ドッ。
どうやら待ち人が戻ってきたようです。
「ちくちょう。あのカオルとかいう小僧。俺の大事な『魔法軍団』を全滅させた上に、俺を追い詰めるとは。この復讐は必ずしてやるぞ」
「おかえりなさいノーマ」
「なっ、お前はライム! 勝手に消えおって。そうかそうか、俺の女になりたいから戻ってきたのか。愛いやつよのう。お前はエルフだから30年たった今でも美しいままだな」
とても残念な勘違いをノーマはしているようです。昔から何も変わっていませんね。
「そんなわけないじゃない。相変わらず身勝手な考えをしているのね。30年前から全然進歩していないじゃない。だからカオル様に勝てないのよ」
「カオルだと?! お前、あの小僧の仲間なのか!」
「カオル様とお呼びなさい。あなたはあのお方の足元にも及ばないのよ」
「俺が小僧に劣っているというのか! あいつは『童貞』だぞ。しかもこのアザレアでも女1人に手を出さないでいる腑抜けたやつだ。俺の世界には『据え膳食わぬは男の恥』という
ふーー。聞いていて
ノーマは私が丸腰のため、襲ってくる気配がありません。いつでも殺せると思い油断しているのでしょう。
私はさっさとカオル様の元へ戻りたいので、用件を切り出しました。
「ノーマ。魔符の作り方を教えなさい」
「何でお前がそんなものを欲しがる? 魔法も使えないくせに」
そういえば、魔法のことはノーマにも話していませんでしたね。
「シャドウバイト」
ノーマの影を縛り、身動きを取れなくしました。
「お前、魔法が使えたのか?」
「ええ、そうよ。言っていなかったかしら」
「くそ、そういうことか。お前があの小僧に入れ知恵をしたのか。だから俺は勝てなかったのだ」
とてもとても残念な考えしかできないようです。元の世界からこんな考え方しかできなかったのかしら。それともアザレアに来て『魔法使い』になってからおかしくなったのでしょうか。まあどちらでも構いませんね。
「もう1度聞きます。魔符の作り方を教えなさい」
「断る」
まどろっこしいですね。でもこうなることは想定済みです。
「レベルP Phobos《ポポノス》」
その瞬間ノーマの目はうつろになり、表情が無くなった。
「ノーマ、魔符の作り方を教えなさい」
「わかりました。魔符の作り方は……」
これで私の役目は終了です。しかるべきが来た時にカオル殿に魔符の作り方を教えて差し上げましょう。
その前に自分で予め魔符を作成しておくのも良いですね。
今はカオル様に仕えるのが楽しくて仕方ありません。
あのお方が次に何をなさるのか興味が尽きません。
そのお役に立てるならこんな汚れ仕事でも喜んで引き受けましょう、ってこれは勝手に行っているのでしたね。
この事を知ったらカオル殿は怒るでしょうか。困った顔をして、窘めてくれるかもしれません。
とりあえず、ノーマは用済みですし、ここにある、『魔法軍団』を作るための施設も不要ですね。完全に消滅させた方が良いでしょう。『魔法使い』はカオル様1人で十分なのです。
私は廃墟の頭上に移動しました。空中に浮いています。
「こんなところを人に見られるとやっかいなので、さっさと破壊しましょう」
「レベルBH black hole《ブラックホール》」
すると廃墟の中にブラックホールが発生して、全てを飲み込んでしまいました。後には、大きな穴が残りました。
「レベルBHは威力の調整が難しいですね」
そして私はカオル殿の待つ、お屋敷へ移動するのでした。
今はカオル様が遠征中で私がお屋敷で待っているはずですね。早く戻らないと。
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