第24話 この正しい世界で

「ノーマさん、世界が裏切ったと言いますが、あなた、しちゃったのですよね」

「う……」

「ノーマさんも転生者なんですよね。僕と同じ『不名誉』な『魔法使い』だったのですよね」


「だからナニをすれば『魔法使い』じゃなくなるものご存じだったはずです。それなのにあなたはしてしまった。単純な理屈じゃないですか。何も間違っていない。ノーマあなたが世界を怨むのは逆恨みというものです」 


「う、うるさい。俺はこの国の英雄になった。お金も権力も、そして女もだ。お前だってわかるだろう。手を出したくなる気持ちくらいは」

「でも僕は手を出さないで『魔法使い』でいることを選びました。あなたは手を出して『魔法使い』ではなくなった。それだけのことですよ」


「おれは英雄なんだ。女くらい自由にさせろーー」

 ノーマはまだ魔符を残していたようだった。僕は魔法障壁を展開して防御を固めようとした。しかし、今度の魔符は一味違った。


 魔符からナイフが召喚され、サキさんの胸に刺さってしまった。

 魔法障壁は物理攻撃には無力であった。


「どうだ。その魔符は毒入りナイフだ。お前らでも防げまい。それはお前の女だな。女に手を出さないというのなら、女を失う苦しみを味合うといい。そしてもう1枚は」

 ノーマはその魔符を自分へ貼り付けた。

 そのまま瞬間移動してしまった。


「サキさん!」

 僕たちはサキさんに近寄った。傷は深い。

「サキさん、あのポーションは出せる?」


 サキさんは弱く否定した。顔は青ざめている。毒の効果だろう。

「あ、あのポーションは、わ、私が健康な状態ではないと取り出すことができないです……」


「くそっ、サキさんを助けることは出来ないのか」

 そこでサキさんは気を失ってしまった。


 そんな時、場違いなメロディーが流れた。

 僕のスマートウォッチからだ。

「なんだってんだ。この忙しい時に」


 画面を確認してみる。

 そこには「40才の誕生日おめでとう」と表示されていた。

 そのままステータスが表示された。


穂村薫

レベル:27

職業:大魔導士

魔力:無限大

回復力:256

能力:童貞(暫定)、魔法限界突破(暫定)、賢者(暫定)


 僕は理解した。40才になったことにより、『魔法使い』から『大魔導士』へとクラスチェンジしたようだ。そして能力に『賢者(暫定)』が追加された。

 今なら回復魔法を使えるはずだ。


「キュア」「ヒール」僕はサキさんに『魔法』を使った。

 サキさんの青ざめた顔は元に戻り、ナイフで刺された部分からの血も止まってしまった。


 サキさんは目を覚ました。

「う……。私、生きている」

 みんな泣いている。

「おかえりなさい。サキさん」

「おかりなさい。サキお姉ちゃん」

「よかったのぜ、サキ」

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