第21話 ライム師匠

「ライムさん、昔は魔法が使えたのですよね。僕に魔法の基礎を教えてくれないでしょうか。僕はある日突然、魔法が使えるようになったため、独学の所が多いのです」

「わかりました。現在は魔法は使えませんが、教えることができます。私にできることならお手伝いさせていただきます」


 僕はライムさんにノーマのことを教えた。

「なるほど。そういうことがあったのですね。この世界を滅ぼすとは大それたことを考える人間もいるのですね」


「魔法を教えてもらうということは、これからは『ライム師匠』と呼ばないといけませんね。『師匠』とは僕の祖国で先生という意味です」

「私はカオル殿に仕える身です。今まで通り『ライムさん』とお呼びください」


 まあ、当然そうなるわけだが、僕はケジメはつけたい派だ。

 だから魔法を教えてもらう間だけ『ライム師匠』で通してもらうように説得した。


 ライムさんの安全を考慮して訓練は次の日から行うことにした。

「ライム師匠よろしくお願いします」

「何か立場が逆転してこそばゆいですね。よろしくお願いします。ますはカオルさんの魔法の最大火力を見たいのですが」


 どこで魔法を使っても環境破壊にしかならない。

 僕たちはコートの村の試練ダンジョンの最深部へと来た。

 前にアキミ、モナミの能力を習得した所だ。


 ここなら最大火力を出しても問題ないだろう。

 ライム師匠にはリクルートスーツ姿になってもらった。


 これはミャタさんの衣裳部屋で見つけたものだ。

 師匠、というか先生ならこの姿が鉄板だろうと思い、お願いして着てもらった。

「あの、カオルさん、この衣装初めて着るのですが変じゃありませんか」

「大丈夫です。ライム師匠。似合っていますよ」

 ライム師匠はリクルートスーツを着て顔を真っ赤にしていた。


「こほん。それでは修行を開始しましょうか。カオル君の中で1番強い魔法を放ってください」

「分かりました」

 僕は距離を取り、壁へ向かい魔法を放った。

「ファイアボール」


 僕自身が使える1番強い魔法を放った。

 ブフォン。

 ファイアボールは壁に当たった。


「中々の威力ではないでしょうか。気づいているかもしれませんが、同じ魔法でも術者の経験によってい威力は異なります。つまり使えば使うほど強くなるのです」

「そうは言うものの、ライム師匠。それでは修行に膨大な時間がかかります。ノーマは自ら魔法を使ったわけではありませんが、魔符を使うことにより、同時に複数の魔法を使っていました。このままではこの攻撃に耐えられません」


「そうですね。右手と左手から別の魔法を放つ研究はありました。成功もしましたが、それでも同時に2発です。ノーマの攻撃には耐えられそうにないですね」

「発想を変えましょう。攻撃魔法に攻撃魔法をぶつけて対抗するのではなく、魔力の盾を形成して魔法に耐えましょう。ノーマの魔符には限りがあるはずですが、カオルさんの魔力は無限大と聞いております。その勝負に持ち込めばこちらが有利です」


「わかりました。師匠。魔力で魔法を防御をする訓練ですね」

「その……。修行中は師匠と呼ぶのは良しとしましたが、なるべく呼ばないでくださいね。恥ずかしいです」

 ライムさんは顔を真っ赤にして言った。


 僕は魔力を使って障壁を作る訓練をずっとした。

 イメージはモナミの『ヴァイエイト』だ。あれくらい自由に扱えて、しかも何倍も強力な盾だったら、ノーマの攻撃も防ぎきるだろう。


 休憩中に僕は師匠にたずねた。

「カオルさんは回復魔法は使えますか?」

「それが使えないのです。適性も無いです」

「そうでしたか。いざという時の為に練習だけはしてみませんか?」


「それはよいですね。ある日突然に使えるようになるかもしれませんしね」

「魔法は『キュア』です」

 僕は適性のない回復魔法の練習もした。師匠が言うなら従うまでだ。


 それから何日も試練ダンジョンにこもり、魔法の練習をした。

 練習自体は簡単で、魔法障壁を長時間ずっと張りっぱなしの訓練だ。

 それでも、大きく広げたり、分厚くしたり、球場にして全員を守るといった、形状変化の訓練は行い続けた。

 

 念のため、アキミ『メルクリウス』に手加減をして攻撃してもらったが、初めは『メリクリウス』が折れていたが、だんだんとアキミが本気になってきたので中止した。

 本気の『メリクリウス』ならこちらの障壁が破られていたかもしれない。


 これで対ノーマ戦ならなんとかなるだろう。

 向こうの『シャドーバイト』も魔法障壁を地面に這わせておけば無効果にできるし、それ以外は魔符の数が尽きるまでこちらが耐えるだけだ。


 問題はノーマの言っていた『魔法使い軍団』だな。

 軍団というからには数名という事はあるまい。

 数十名? もしかすると数百名の『魔法使い』が襲ってくるとなると防御が難しい。


 こちらをどうするかの課題が残っている。

 しかし、大量の『魔法使い』をどこから集めてくるのだろうか。

 ノーマは異世界人召喚に成功したのであろうか。


 でも、ノーマは魔法使いではないと言っていたし。

 異世界召喚は魔法ではなく、能力なのであろうか。

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