第19話 誘拐事件
それから1週間ほど経過した。
僕はほぼ回復することができた。
瀕死の状態から2週間で回復できたのは、サキさんが持っていミャタさんから預かっていたたポーションのおかげだ。
あとで2人にはお礼を言っておかないと。
僕は久しぶりに、4人でお屋敷の外へ出た。
シロの散歩も兼ねている。
今日はリハビリを兼ねて町を散歩するつもりだ。
風が心地よい。生きていることを実感した。
あの時はアキミを助けるために飛び出した。結果的にノーマは退いてくれたが、全滅した可能性もあった。
「次にノーマに出会ったら、全滅するかもしれないね」
「そんな事を言わないで下さい。対策を立てましょう。ノーマはこの世界を滅ぼすと言っていました。絶対に阻止をしないと」
隣にいるサキさんが僕を励ましてくれる。本人もやる気があるようだ。
「私たちもいますわ」
「そうだよ、カオル。最強の矛と盾もいるんだのぜ」
「そうだな。アキミ、モナミ。ありがとう」
4人で歩いていると、見知らぬ人々に取り囲まれていた。
「そこのガキ、いいご身分だな。女を3人も引きつれて。俺たちにも分けてくれよ」
「サキさん対応をお願いします。聞きたいことがあるので、1人だけ、気絶をさせないで下さい」
「承知しましたわ」
一瞬であった。サキさんは取り囲んでいたゴロツキを制圧してしまった。
サキさんは残った1人の首筋に鉄針を当てていた。
「素直に答えてくれると、これ以上痛くはしないけど、誤魔化したり、嘘をついたりすると、そのメイドのお姉さんが死ぬよりつらい痛みを与えるよ」
「わ、わかった。素直に話すから、このメイドを下がらせてくれないか」
「サキさん、いいよ」
「わかりました。カオル様」
サキさんは男のから離れて、持っていた鉄針をしまった。
「君たちは、組織だって人を襲っているのかい。それとも偶然、今日たまたまゴロツキのまねごとをしたのかい」
「そ、それは……」
「サキさん、太もも」
「はい」
サキさんは一瞬で男の太ももに鉄針を刺した。
「痛てー!!」
男は太ももを押さえて、苦痛に顔をゆがませた。
「次はもっと痛くするから。言いよどんだということは、組織があるんだね。誘拐組織かな。組織の場所を教えて」
「痛いのは勘弁してくれ。組織の場所は知らないんだ。一時的に誘拐した人を集める場所までしか知らない」
男は必死そうに答えた。
巡回中だった兵士に誘拐犯を預け、僕たちは誘拐された人が集められている場所へ急いだ。
「カオル様、なぜ誘拐された人を助けに行くのですか? 兵士にまかせても良かったのではないですか」
「確かにそうだね。でも今は身体を動かしていたいんだ」
「そうでしたか。でもカオル様はまだ動けるようになったばかりです。戦闘はお控えください。私1人で十分です。アキミとモナミもいますし」
「そうですわ。カオルさん」
「アキミ様も後ろへ控えてください。相手は人間ですよ」
「そうだのぜ。アキミ。僕の盾がみんなを守るんだのぜ。カオルーー。ゆっくり見学していればよいのぜ」
お屋敷の廃墟。どうやらここに、誘拐された人が集められているらしい。
「先頭は私が。その後にカオルさん。後方をアキミちゃん、モナミちゃんと続いてください」
門の周りには人はいなかった。
廃墟なのに人が立っていたら、不審がられる。
それくらいの知恵はあるようだった。
黙って僕はサキさんの後に続いて建物の中へと進んだ。
外観は廃墟なのに、中はそれほど、痛んでいなかった。人が出入りしている証拠だ。
そのまま奥に進んでいくと、やっぱり出てきたゴロツキども。建物の中ではサキさん無双であった。
出会う敵、出会う敵、全て一瞬でカタがついた。
奥にあった大部屋には誘拐されていた女性が沢山いた。
駆け付けた兵士に全員、保護されて1件落着に終わった。
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