第17話 カオルの資質(サキの視点)
「ふむ、死んでしまったかの。せっかくのおもちゃ、もったいない。この魔符、魔法を貯められるのは良いが、威力の調整までは出来ないからの。手持ちの魔符も切れたし1旦、退散させてもらおう。わしの名はノーマだ。この世界を憎むものだ。近いうちに俺の最強の『魔法使い』軍団が国を殲滅するじゃろうよ」
そう言うと、ノーマは消えてしまった。
私の目の前でカオル様は倒れていた。確かめてみるとかすかに息はしていました。
私たちが不甲斐ないばっかりにカオル様に重傷を負わせてしまった。
私は急いで手持ちのポーションをカオル様に使いました。
これはおじ様から預かっていた、カオル様に何かあった時に使う緊急用ポーションです。
これで、最悪の事態は回避できたはずです。
私たちはカオル様をダンジョンの外へと運び出しました。
お屋敷に戻った方が良いと判断をし、帰路を急ぎます。
馬車での移動中、私たちは終始無言です。
アキミ様とモナミ様は何を考えているのでしょうか。
2人とも真剣な表情をしておられます。
たぶん、カオル様に重傷を負わせたことを悔やんでいるのでしょう。
それは私も同じです。
それにあの会話。『魔法使い』にはどんな秘密が隠されているのでしょうか。
あんなカオルさんを見たのは初めてです。
あの老人、ノーマがが30年前の『魔法使い』なのでしょうか。時系列的には合います。
何故表舞台から消えてしまったのでしょうか。
そして世界を憎んでいる理由は何なのでしょうか。
お屋敷に着きました。ひとまずカオル様を寝室に寝かせ、ありったけのポーションを使いカオル様を回復させます。
お医者様に見せたところ、ポーションの効果もあり、数日中に目を覚ますとのことでした。
私は事の
「なるほど。30年前の『魔法使い』か……。そしてノーマは、『魔法使い』軍団を率いて、この世界を滅ぼそうとしている。それくらいこの世界を憎んでいるということだな」
「はい。それに『魔法使い』であるカオル様を大笑いしていました。何か『魔法使い』には秘密があるようです。人に話せないような」
「まず問題は、ノーマが世界を滅ぼそうとしているという事じゃ。これに関しては国王に報告をして判断を待とう。我々が手を出す範囲を超えておる」
おじ様は真剣にこちらを見て言いました。
「もう1つの問題じゃ。『魔法使い』とは何者かという事じゃ。たぶん、カオル殿は『魔法使い』になるにあたって、人には言えない秘密を抱えてるのだろう。サキよそれがどんな秘密でもカオル殿を受け入れる勇気はあるかの。もしくはカオル殿は一生それを秘密にするかもしれん。それでも仕えることができるかの」
「私の答えは決まっております。どんな秘密でも受け入れますし、もしカオル様が一生墓まで秘密をもって行きたいのであればそれでも構いません。日常、普通に接していて、カオル様に穏やかで優しい印章をいだきました。だからカオル様が何者でもこのままお仕えするつもりです」
私は言っていてはずかしくなりました。
「1つ気になるのは、カオル殿は優しすぎることじゃ。優しいというか、周りに気を使いすぎているように思える。常に奥手で、自分の意見を後回しにしている雰囲気がある。いや、それを自覚していて何とかしようとあがいているようにも見える。サキに手を出しても良いといっても一向にその報告も来ぬしのう」
「確かに。カオル様は優しいですが、周りに気を使いすぎていることには納得です。私に手を出さないのは私に魅力がないからでしょうか。胸にカオル様の視線は良く感じるのですが……」
「だとしたら我慢しているだけだな。やはり、元とはいえ婚約者がいた女性に手を出すことに抵抗があるのかのう」
「とりあえず今は、カオル様に完全復活していただかないと、これからの方針もきめられませんね」
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