第16話 『魔法使い』であるということは
ランクアップもしたいが、お金も稼ぎたい。
ミャタさんは滞在費は受け取ってくれないが、僕はメイドさんにチップというかお小遣いをあげるようにしている。少しでも心象をよくしておきたいからだ。
『魔法使い』の正体がばれたとき、ドン引きされないための予防線とも言える。
だからお金が必要だった。現在はそんなに大きなお金が必要なわけではないが、いつ必要になるかわからない。
お金に関してはミャタさんに泣きつけば何とかなるかもしれないが、それは最後の手段に取っておきたい。
ということで、どうゆう風にお金を稼げばよいか、ミャタさんに相談をした。
「伝説の『魔法使い』は銅を金に変えたというが……」
「近くに銅山はないですか。僕も同じことを試してみたいです」
「なんじゃと」
ミャタさんの目の色が変わった。銅から金が生成できるとなると、それは大きな利益になると思う。
「それなら、マーブル商会が所有しておる銅山がある。そこへ行って試してもらえるかの。モンスターもいない安全な所だ」
「わかりました。みんなで行ってきます」
「場所はフレシール村だ。サキが知っておる」
そんなわけでいつもの4人で馬車に乗り移動中である。シロはお留守番だ。
馬車の操作はサキさんが行っている。
フレシール村はお昼に着くことができた。
村の様子がなにやらおかしい。あわだたしい様子であった。
村人に聞いてみた。
どうやら銅山が攻撃を受けているらしい。
僕たち4人は銅山へと急いだ。
銅山の中はひどい有様であった。燃やされた遺体や、凍らされている遺体が散在していた。
おかしい。この世界では魔法が途絶えているため、このような『燃やす』や『凍らす』といった攻撃は存在しないはずであった。
30年前の『魔法使い』を除いて。
僕たちは奥の広場までたどり着いた。そこには1人のフードを被った者が立っていた。
僕は迷わずにファイアボールをその怪しい人物に投げつけた。
するとフードの者は紙のようなものを放った。
紙は僕の投げたファイアボールとぶつかった瞬間に、ファイアボール共々消滅していた。
「危ないではないか。しかも今のは魔法ではなかったか」
フードの者から男性の老人の声がした。どうやら人間のようだった。
「そうだ。僕は『魔法使い』だ」
「お前『魔法使い』なのか。ハーハハハ、ヒャーヒャヒャヒャ。銅を求めて銅山に来たが、面白いものを見つけてしまった」
男は急に笑い出した。
「何がおかしい」
「だってお前『魔法使い』なんだろ。ということは導き出させる答えは1つだ」
ばれている。この男は『魔法使い』の秘密を知っているようだ。
「そちらのお嬢さん方にも教えたらどうだ。自分がどういう人生を歩んできたか。あーはっはっはっ」
「うるさいだまれ」
僕は頭に血が上っていた。いづれはその日が来るとは思っているが、それは『今』じゃないはずだ。
僕は殺意満々でファイアボールを老人に投げまくった。
しかしそれは全て老人の放つ紙によって防がれてしまった。
「カオルさんを侮辱するのは許せません」
「カオルに謝るのぜーー」
「カオル様は『魔法使い』でなくても立派なお方です」
それぞれが武器を構えた。
「おっと、4対1では不利だな。動きを止めさせてもらう」
老人は紙を地面に置いた。
「シャドウバイト」
その瞬間、老人の影が伸びてきて、僕たちの影は固定されて身動きが取れなくなってしまった。
「アキミ、こいつに『ヴァイエイト』を投げろ! 殺せ!」
僕にはこの老人を殺すことしか頭になかった。
「できません。この人は人間です。攻撃できません」
しまった。アキミは今までは魔物相手だから戦えていたが、対人戦は無理なのか。
「何! 『ヴァイエイト』だと。危険すぎるな。そのお嬢さんを先に殺させてもらおう」
老人はアキミに向かって紙を放った。その紙はファイアボールになった。
「モナミ、『メリクリウス』を出せるか」
「わかってるぜ。みんなを覆うように大きい盾を出すぜ」
さすが『最強の盾』の『メリクリウス』である。完全に炎を防いだ。
「ふむ。この炎を防いだか。さすがは『メリクリウス』だな。やはり、最強の矛と盾とは常に一緒に存在するのだな。どれ、俺の研究の成果を確かめようか」
そう言うと老人は複数の紙を取り出した。
「出でよ、ファイアボール、ウォーターカッター、ウインドストーム、シャイニングボルト、ダークネスライト」
5種の魔法が『メリクリウス』に集中する。モナミもきつそうだ。
モナミは2枚目の『メリクリウス』を出現させ、防御を厚くしたが、それでも耐えられそうになかった。
「なんでだよ、『最強の盾』なんだのぜ。これくらいの攻撃を防げないで何が『最強』なんだのぜ」
モナミは叫んだ。
「残念だったな、お嬢ちゃん。複数同時の魔法攻撃なんてこの世界には存在しえない威力があるのだよ。たとえ『メリクリウス』とて防ぎきれまい」
このままだと全滅してしまう。それだけは避けなければ。僕は自分の繋ぎ留められている影に魔力を集中させる。パリンと音がし、シャドウバイトの効果が解けたようだった。
僕は迷わず『メリクリウス』の前に飛び出していた。
「僕は魔力無限大なんだ。これくらいの魔法、全て防いで見せる」
魔力を集中させるが、魔法を防ぐ方法がわからなかった。今までは攻撃魔法ばかり鍛えていたから。
僕は全身に魔法を受けて、瀕死のダメージをおって気を失った。
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