第15話 シロが仲魔になりました

 ここは冒険者ギルド。ゴブリン殲滅せんめつの報告に来ている。

「というわけで、ゴブリンの巣からゴブリンを退治し、リーダーと思われるゴブリンシャーマンも倒しました」

「で、で、そちらが無害なビャッコウルフですか」


 受付のお姉さんは引いているし、ギルド内にいた冒険者の大半は逃げて行ってしまった。

 見た目がこんなにもふもふでかわいいけど、ゴールドクラスの魔物ってだけでみんな怖がるか。


 お姉さんは職務上逃げれないだけで、本当は逃げたいんだろうな。

 僕はビャッコウルフが僕の命令を聞くことを示すために、「お手」や「ふせ」をして見せた。

 これで少しは安全なことをアピールすることができるだろう。


「ギルドのお姉さん。ビャッコウルフは安全ですし、依頼報告が終わったら連れて帰ります。早く依頼の処理をした方がお互いのためではありませんか」

「わかりました。こちらは村人からの報告も受けているため、依頼達成とします。カオルさんはゴールドランクへランクアップになります。カードの変更を行いますので、手続きをお願いします」

 そうか。また採血されるのか……。またアキミに頼もう。


「カオルちゃんは痛がりですねーー。チクっとするだけですよーー」

 慣れないものは慣れない。しかたない。これは幼児プレイの一種にあたるのだろうか。決してくせにはならないと思うけど。


 無事、カードの交換も済み、お屋敷でミャタさんに報告に来ていた。中庭でビャッコウルフを見せている。

「それがビャッコウルフか……」

 ミャタさんは厳しい目をして観察している。


「確か、ギルドの依頼にビャッコウフルの牙の素材納品があったな」

「おじいさま、その為にこの子を倒せと言うのですか」

「じじい、見損なったのぜ、こんなにかわいいのぜ」

「おじ様が言うならしかたな……。子どもの情操教育上良くないと思います」


 サキさんだけ若干、危険な発言な気もしたが、みんな反対の意見をミャタさんに言った。

 ミャタさんは右手を上げて発言を制した。

「待て。何もそのビャッコウルフを倒して素材にしろと言っているわけではない。むしろ生かしていれば、いずれは、古い歯が抜けるのではないか。そうすれば、ビャッコウルフが生きている間はずっと牙を納品できるではないか」

 古い歯って抜けるものなのか。僕はビャッコウルフを見たが、ビャッコウフルは首をかしでるだけであった。言葉が通じるわけではないから当然か。


「ではおじいさま、この子を飼ってもよろしいのですね」

「それにビャッコウルフの生態などあまり知られていない。観察すれば、どこかの研究者が欲しがるだろう。サキ、適任者を数人選びビャッコウルフを飼育するといい」

「飼うとなりましたら、名前をつけましょう。この子は男の子かしら、女の子かしら」


 アキミがビャッコウフルを観察している。ビャッコウフルは自分の周りをきょろきょろするアキミが気になる様子であった。

「わかりましたわ。どうやら男の子のようです」

 アキミは、どういう名前をつけたいんだ。ここまで積極的なら案くらいあるんだろう」

「男の子だったら『ゲレゲレ』、女の子だったら『シロ』がいいなと思っていました」

 ゲレゲレはまずいだろう。というかアキミのセンスがわからない。


「『シロ』は良いのではないですか。真っ白な所からつけたんですよね。合っていると思います」

「俺も賛成だぜ」

「私も構いません」

「儂も構わん」

 ということでビャッコウルフもといシロが仲魔なかまになりました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る