第13話 シルバーランクへの道

 僕は冒険者ギルドへ向かった。

 水晶で見てもらった日の次の日に来てくれと言われたが、それを忘れて試練ダンジョンへと行ってしまったので気まずい。

「やっときてくれましたね。カオル様」

 妙に下手に出てくる受付嬢。怪しい。


「翌日にこれなくて申し訳ありませんでした。これに関してはすっぱり忘れていたとしかい言いようが無く……」

「あ、大丈夫ですよ。カオル様」

「こちら側としても協議が必要で翌日来られても対応が出来なかったというのが本音です。だからこうして遅れてきてくれて助かりました」

 遅れてきてありがたれるのは珍しいが、そういうこともあるだろう。


「で、結論としまして『魔法使い』カオル様には殲滅系せんめつけいの依頼を斡旋あっせんしても問題ないと結論が出ました。そして現在斡旋できる依頼がこちらになります」

 受付嬢が依頼書を出そうとしたが、後ろからムキムキのおっさんが出てきて、依頼書を取ってしまった。


「ここからは俺から説明させてくれ」

「ああーー、ギルド長。おいしい所だけ取っていくのですね」

「たまにはギルド長らしいことをさせてくれよ」

「わかりました。今日は休憩時間を30分多く取らせてもらいます」


「改めて紹介させてもらう。ここのギルド長をやっている、サトオーという。よろしくな。それでだ、今回の依頼は2つある。近くの村にゴブリンが最近出没しているらしい。近くに巣があると思われるから、それを見つけて殲滅してほしいという依頼。と後は素材集めだな。ここからは場所が少し遠いんだが、ビャッコウルフという魔物から牙を納品してほしいという依頼だ。どっちにする?」

「村人が困っているゴブリン退治に行こうと思います。

「そうか。そっちに行ってくれるか。ありがとう。ちなみにゴブリンの戦闘力を甘くは見ていないよな?」

「大丈夫だと思います。油断しないようにがんばります」

「『魔法使い』なら大丈夫か……。」


 ゴブリンの出る村へと急いだ。4人一緒の移動である。アキミとモナミが能力『最強の矛』『最強の盾』が使えるようになった今、戦力不足なメンバーは誰もいない。

 単純に比較してしまうと、より人間に近いサキさんが1番戦力不足になるか……。


 今回の依頼はゴブリンの巣の壊滅である。ということは巣を発見しないといけない。

 こんな時に役に立つのは、やっぱりサキさんだ。サキさんに聞いてみる。

「逃げるゴブリンを追跡して、巣を発見することってできる?」

「そんなことは簡単です」

 サキさんは豊満な胸をはり、さらりと答えた。


 ゴブリンはいつ襲撃してくるかわからないから、村人にも手伝ってもらい、見張りをしてもらった。

 その時は思いの外早く来た。ゴブリンの襲撃である。


 しかし様子がおかしかった。というか一目見ただけでわかった。今回の襲撃はゴブリンだけではなく、トロルも一緒であった。

 幸いなことに、村人は敵を畑で食い止めている。このままいけば建物への被害を出さずにすみそうだ。


 僕たちは事前にしていた打合せ通りに行動を開始した。

「今回の作戦ではみんな、バラバラに行動してもらいます。モナミが盾で防ぎながら、アキミは矛で片っ端から敵をやっつけてください。サキさんは戦闘開始直後から隠れて、逃げるゴブリンをそのまま追って巣の発見をして下さい。戦闘は不要です。僕も魔法をバンバン打ちますが、この程度の敵なら近づかれることもないと思うので大丈夫だと思います」


「それならモナミちゃんの盾の中で私と一緒の攻撃でも良いのでは?」

「んーー。それだと攻撃できる範囲が狭すぎるからだめ。かと言って今回は殲滅せんめつではなく撤退てったいさせるのが目的だから、遊兵として、危なそうな村人がいたら助けるようにするよ」


「今回のポイントはサキさんだけど、村人が危ない状態だったら、迷わずに助けて下さい。追跡するチャンスなんていくらでもありますから」

「わかりました」


 僕は走りながら、目についたゴブリンめがけてファイアボールを投げまくった。

 日々の訓練により、体力も上がり、走りながら魔法を使っても的に当てる技術も上がっていた。


「『魔法使い様』、できれば火の攻撃を変えて下さらないか。ゴブリンが燃えて消えてしまう。遺体なら使い道もあるもんでよ」

 むむ。炎魔法でクレームが来るとは思っていなかった。敵の戦力を落とせばいいと思い、今度はウインドカッターで足や手を切っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る