第11話 水晶の龍

モンスターを出現させることが可能らしいです」

「言っているのだのぜーー」

「それはご親切な水晶玉だな」


「ただし、モンスターを出現させると、水晶玉が割れてしまい。潜在能力開放の役目を果たせなくなるらしいのです」

「そうなのぜーー」

「却下だ。却下。絶対に呼ばないで。他の人も使うかもしれない水晶玉を割るのはまずいと思う」

「カオルーー。もう遅いのだ。すでに呼んでくれと頼んだのぜ」

「モナミちゃんお願いしちゃったのね」


 これもお約束というものなのか。

 武具の名前の件からしてお約束が続いていたと思ったが、僕が絶対に呼ぶなと言ったのがフラグになったのだろうか。


 水晶玉が光始めた。そしてピキピキと音が鳴り、水晶玉に割れ目が入った。

「水晶玉から離れて下さい。モンスターが出現するします」

「龍を呼んでくれたのだぜ。名前はシンシアなのぜ」

「あら、女の子の龍なのですね」


「サキさん、結構冷静ですね」

「能力を試すための龍ですもの。そんな大事には至らないと思います」

 水晶玉は僕たちが離れるのを待ってくれたかのように見計らって、水晶玉が割れた。

 そこから竜が出現した。


 身体は水晶で出来ているみたいだ。しかも2体いる。

「これってアキミとモナミの2人が能力開放したから2体出現したのかな」

「わからないですわ」

「わかんないのぜーー」


 出てきてしまったものは仕方ない。利用させてもらおう。ちなみに名前はどっちもシンシアなのかな……。

「危なくなったら僕がサポートします。訓練用のモンスターらしいから危険もないでしょう。まずは2人で戦ってみてくれませんか。サキさんも様子見でお願いします」

「了解です」

「わかりましたわ」

「のぜ」


 2人はそれぞれ、矛と盾を構えて2体の水晶の龍と対峙した。

 武具をもらったらといってすぐに使いこなせるものだろうか。

 2人とも戦闘の経験はないはずだ。


 まずは1体の龍が炎の息を吐いてきた。

 えっ、ちょ、まって……。この1撃で全滅もありえるんじゃない?

 シンシアAさん怒ってらっしゃいます?

 しかしモナミは『メリクリウス』を巨大化させた上に、炎の前まで盾を飛ばし簡単に防いだ。


 同時にシンシアBが炎の逆に位置取り、氷の息を吐いてきた。

 その瞬間、モナミからもう1つの『メリクリウス』が出現し、そのまま氷の息まで飛んでいき、防いでくれている。盾は複数出現させることができるらしい。

 どうやら能力は、武具の使い方も与えてくれているようだ。

 『最強の盾』の名は伊達では無いらしい。全方向からの攻撃に対処できるのではないだろうか。


 それでは『最強の矛』はどうだろうか。

 シンシアは飛んでいる。アキミのリーチでは届かない。

 炎の攻撃が終わり、シンシアAが1呼吸おいた。

 その時、アキミが『ヴァイエイト』を龍に放った。

 単に龍の方向へ投げたという感じであった。


 しかしアキミの手を離れた瞬間、『ヴァイエイト』はものすごい勢いでシンシアAへ飛んで行った。

 そのままシンシアAの身体を貫き、ヴァイエイトは壁に突き刺さった。


 アキミはそれを確認してか、左手にヴァイエイトを出現させて、シンシアBへ投げた。

 こちらもシンシアBを貫き壁に突き刺さった。

 1瞬全滅すると焦ったが、終わってしまえばあっけないものであった。


「訓練は終わったな。どういう感じだった?」

「勝手にからだが動きましたわ」

「勝手にからだが動いたのぜ」

 どうやら能力が自動に戦闘をしてくれるみたいだ。


 使い方を教えてくれるのではなく、自分の意思が盾と矛にはあるみたいだ。

 これなら本人の経験は必要ないな。

 訓練は終わったが、水晶玉が壊れたのが痛いな。

 魔法で何とかならないだろうか。


 シンシアA、Bの破片を集めて、魔力を込めて、丸めてみた。

 すると元の水晶が出来上がっている。

「コントロールZレベル1を覚えました」とノルンの声がした。

 んーー、水晶が元に戻ったのは助かったが、魔法のネーミングセンスよ。ノルンが決めているのかな。


 僕はそれを元の場所に戻した。

「これで全て元通りだな」

「カオルさん、ずるしたように思えますが」

 サキさんは小さい溜息を吐いたが、僕は見なかったことにした。

 僕たちはダンジョンを後にした。

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