第3話 お爺ちゃん/転移装置
白い軍服に身を包んだ初老の男性は、やさし気な笑顔を向けながら瞳は、先生と俺の一挙手一投足を見るかのように視線が置かれていた。つい先程まで、書類仕事をしていたであろう机の奥の椅子に座るその人は、そのままの体勢で重々しくも優しさの混ざるような声で先生へ向けて声をかける。
「まず、最初に任務お疲れ様、早瀬君。任務の報告を聞いて良いかな?」
「へ~い。まず、任務は、ほとんど失敗だね。ほんとにお爺ちゃんには、悪い事をしたと思っているだよ?言い訳になっちゃうけど、村に着いた時点でこの子を残して村人は全滅だったのさ」
「ッ?!」
一瞬、この場の空気が急変し、目の前の人物から溢れる重圧で体が硬直し、その場に縫い留められる。しかし、すぐにその圧は収まり、あたりに静寂が広がる。俺の体は、圧が消えると同時に忘れていたかのように機能を停止していた呼吸を無理やり再開させ、苦しさのあまり膝をつく。
「……っはぁっ!はっぁ!」
今の何が起きて!一瞬雰囲気が変わったと思ったら息ができなくなって。でも、先生は何もないみたい立っている。気のせいか?いや、そんな事より、早く息を整えないと。
俺が、必死に息を整えようとする横で先生は、飄々とした態度でたたずんでいた。
「いや~気持ちは理解できるけど、そんなかっかしたら募が死んじゃうんじゃないかなぁ?」
「はぁ、君が間に合わなかったのならば誰に頼んでも大きな違いはなかっただろうし、ここでは不問とする」
大きなため息をつき、頭を抱えるように片手を頭に当てる。すぐに先ほどの優しげな笑顔に戻り、俺の方を向く。
「すまなかったね募くん。少し気を荒立てすぎた。私は、フォルダーをまとめさせてもらっている
黒田さんは、椅子から立ち上がり、頭を深々と下げる。何とか、息を整え終え、返答する。
「いえ、それは俺の中で、もう決着がつけられたので大丈夫です。その気持ちだけでとてもありがたいです。ですから、頭を上げてください」
「ありがとう。できる限りの支援は約束する。だから、安心してこのトレースで生活しt」
黒田さんの言葉を遮るように先生が口を開く。
「あっ、それについてなんだけどねお爺ちゃん。彼は、私の弟子にするから孤児院には送らないからね」
「???……すまなかった早瀬君。うまく聞き取れなかったようだもう一度言ってくれないか?」
訳が分からないといった表情を浮かべた黒田さんがは、何とか質問をしたかのようだった。
「ん?ついに、ぼけたのかいお爺ちゃん?それとも、耳が遠くなったのかな~?」
「……はぁ、いいだろう。私がいくら否定した所で君は聞く気がないだろうしな」
「さっすがお爺ちゃん話が早くて助かるよ」
「はぁ、無駄口を叩いていないで早く彼を休ませて上げなさい。手続きは、こちらで済ませておく」
「そういう事なら遠慮なく。じゃ、またねお爺ちゃん」
先生は、黒田さんへ背を向け、俺を連れて部屋を出る。
先生と黒田さんの会話は、ヒヤヒヤで心臓と命に悪い。正直、最初の場面で何回逃げ出したいと思ったことか。
「君も疲れてるだろうしさっさと私達の家に帰ろうか」
「はい、先生」
先の道順を遡るように歩きエレベータに乗っていた。
ん?先生の家ってどこにあるのか聞いた事なかったな。大方、トレースの中だと思うけど、どの辺なんだろうか。
「先生。先生の家ってどこにあるんですか?」
「ん?そういえば、話していなかったねぇ。私の家は、群馬成王帝国の近辺にある拠点デネトレスにあるからここから移動しないとだよ」
「え?じゃあ、またホバーで移動ですか?」
「まあ、それもいいけど……と、着いたね」
先生が何かを言おうとしたタイミングで、エレベータが止まり扉が開く。先生の後を追いエレベータから降りる。ホバーを停めた場所や黒田さんが居たような階とは異なる重い雰囲気のある廊下を先生と二人で歩く。
「確かに、ホバーで移動する方法もあるけど、それじゃあ、急な会議があった時に集まれないだろう?だから、ここにはアレがあるのさ」
アレってなんだ?ここから素早く移動可能な手段……そんなものあるのか。あったとして、秘密事項もいいところなんじゃ。
「君なら察してるだろうけど、こっからトップシークレット。私の弟子って事でと・く・べ・つに見られるけど、絶対にだれかに話さないことだね」
話さない事だねって、選択肢なんてある圧じゃないんですけど。
廊下をあるいていると、厳重そうな重厚感のある扉が現れる。
デカいというか、重いというかそんな感じの扉だな。かなり頑丈そうな扉だな。相当、重要なものがあるはず。
先生が、扉の脇にある黒い板へ手で触れると淡く光り、扉が開き始める。扉が開ききると、中には円状の台に何本もの配線が伸び、その先には様々な機械がつながっている。
「さぁ見たまえ!これがフォルダーの技術力が遺憾なく発揮された一品!転移装置だよ!」
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