第22話 魔法の学び舎、友情の始まり

荘厳な雰囲気が漂うアルバンシア王立魔法学校の大講堂。

新入生たちは胸の高鳴りを抑えながら、整然と並べられた椅子に次々と腰を下ろしていく。

高い天井と彩り豊かなステンドグラスから注ぐ光が、神聖な空気をさらに引き立てている。


「これが王立魔法学校か……想像以上だね。」

カルヴァンは周囲を見回しながら呟いた。

その隣では、リリスが腕を組みながらやや興奮気味に椅子にもたれかかっている。


「ふん、確かに立派だけど。これくらいで驚いてたら、先が思いやられるわね。」

リリスは涼しげな顔を装っているが、時折ステンドグラスを見つめて感心しているのが分かる。


壇上に立つのは、この学校の校長、ランドルフ・レグナル公爵。

厳格な表情と重厚な佇まいが、彼の威厳を物語っている。


「ようこそ、アルバンシア王立魔法学校へ。」

その声は堂々と響き渡り、会場に静寂をもたらした。


「ここでは魔法の本質を学び、その力を国や人々のため、そして己の成長のために正しく使う方法を身につけることが求められます。」

彼の言葉には一つひとつ重みがあり、新入生たちの胸に深く刻み込まれた。


「……期待しています。」

校長の締めの言葉に続き、講堂には大きな拍手が響き渡る。

カルヴァンは少し緊張した様子で手を叩きながら、隣のリリスに視線を送った。

彼女もまた、真剣な表情を浮かべていた。





入学式を終え、カルヴァンとリリスは他の新入生たちと共に教室へ向かう。

その教室は、これから彼らが時間を共にする仲間たちとの初めての出会いの場となる。


教室のドアを開けると、先に着席していたイザベルが手を振りながら迎えてくれた。


「カルヴァン、リリス!こっちだよ!」

イザベルの明るい声に、二人は自然と笑顔を浮かべる。


「ありがとう、イザベル。」

カルヴァンがそう言いながら彼女の隣に座ると、イザベルは安心したように小さく笑った。


「ずっと一緒にいられるって、なんだか心強いよね。」

イザベルの言葉に、リリスは「まあね」と短く返しながらも、どこか満足げな様子を見せた。





その時、後方から大きな声が響いた。

「おい、お前らも新入生か?」


振り返ると、赤髪を短く刈り込んだ筋肉質な青年が立っていた。

灰色の瞳が好奇心で輝いている。


「俺はガイルだ!お前たち、名前は?」

彼は笑顔を浮かべながら手を差し出してきた。


カルヴァンは手を握り返しながら自己紹介する。

「僕はカルヴァン。こっちはリリス、それとイザベルだ。」


リリスは少し目を細めながら「よろしく」と短く言い、イザベルは控えめに「よ、よろしく……」と小声で答えた。


「カルヴァンにリリス、イザベルか。覚えたぞ!」

ガイルは大きく頷き、興奮気味に続ける。

「ところでお前ら、どんな魔法が得意なんだ?」


「僕は火属性の魔法が得意だよ。」

カルヴァンが答えると、リリスが自信満々に口を挟む。

「私は闇属性よ。」


ガイルは目を輝かせながら、腕を振り上げて笑った。

「火と闇か!俺は筋力強化魔法だ!筋肉は何よりも信頼できるぜ!」


「筋力強化魔法?」

カルヴァンが驚いたように聞くと、ガイルは自慢げに腕を見せつける。


「そうだ!どんな困難も、この腕一本で解決だ!」





その時、教室のドアが開き、一人の女性が静かに入ってきた。

長い黒髪をシニヨンにまとめた凛とした女性。

その目には知性と冷静さが宿っている。


「皆さん、おはようございます。」

彼女の声が響くと、教室全体が静まり返った。

「私はフライヴィ・アレイスター。このクラスの担任を務めます。呪文学を担当しますので、よろしくお願いします。」


その冷静な佇まいと優雅な仕草に、生徒たちの視線は釘付けになる。

フライヴィ先生は教室を見渡し、一人ひとりを観察するように目を向けた。


「では、まず自己紹介をしてもらいましょう。名前と得意な魔法を順に発表してください。」


順番が回り、ガイルが勢いよく立ち上がった。


「俺の名前はガイル!筋力強化魔法が得意だ!信条は、筋肉がすべてを解決するってことだ!」

彼は堂々とした声で言い放つと、教室の生徒たちはぽかんと彼を見つめた。


「それから先生!」

ガイルが突然フライヴィ先生に向き直り、勢いよく続ける。

「こんなに美しい先生が担任なんて、俺たちは恵まれすぎです!どうですか?放課後、俺と一緒にランニングでも――」


「ガイル君。」

フライヴィ先生は微笑みながら遮った。

「放課後、私のところに来るように。」


「えっ!?本当ですか先生!俺、全力で行きます!」

ガイルは顔を輝かせ、拳を握りしめて喜ぶ。

だが周囲の生徒たちは顔を見合わせながら苦笑していた。





その日の放課後。


「ガイル君、来ましたね。」

フライヴィ先生は冷静な声で彼を迎えると、静かに椅子を指差した。


「やっぱり先生、俺に興味が――」


「座りなさい。」

その一言に、ガイルの足が止まる。


「さて、学校での態度についてお話ししましょうか?」

フライヴィ先生の柔らかな微笑みと冷徹な言葉に、ガイルの表情が固まった。


廊下の外でその様子を窺っていたカルヴァンは、リリスに小声で呟いた。

「ガイル、大丈夫かな……?」


「さあね。」

リリスは肩をすくめて答えた。「筋肉が先生の説教に耐えられるといいわね。」

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