第18話 王都への旅、出会いの予感
朝焼けが薄紅色に空を染める中、カルヴァンとリリスはカルン村の宿屋で静かに目を覚ました。
昨夜の星祭りの余韻が、まだ二人の心を温かく包んでいる。
「リリス、おはよう。昨日は本当に楽しかったね」
カルヴァンが微笑みながら目をこすり、リリスも小さくあくびをしながら返事をする。
「おはよう、カルヴァン。よく眠れたみたいね。もう出発するつもり?」
「うん、そろそろカルン村を出て次の目的地に向かおうか」
二人は手早く荷物をまとめて宿を後にし、村の人々に別れを告げるため広場へと向かった。
朝の澄んだ空気の中、すでに村人たちが集まり、感謝の言葉をかけてくれる。
「本当にありがとうございました。おかげで行方不明の村人たちが無事に戻ってこれました。」
長老が深々と頭を下げる。
カルヴァンは照れくさそうに頭をかきながら答えた。
「いえ、こちらこそお世話になりました。みなさん、どうかお元気で」
リリスも穏やかに微笑んで、「ありがとう。おかげで楽しかったわ、またいつか」と別れの挨拶をした。
そうして二人は、村を後にした。
広がる草原をしばらく歩き続けると、景色は徐々に険しい山々へと変わっていった。
「この山道、なかなか厳しいね。でも、王都に行くにはこの道が一番近いって聞いたから」
カルヴァンが険しい山道を見つめながら呟くと、リリスは軽く肩をすくめた。
「まあ、運動にはなるし、悪くないんじゃない?それに、景色も素敵だし」
彼女は少し笑みを浮かべながら、余裕の様子だ。
そんな中、突然、遠くから悲鳴が聞こえてきた。
二人は顔を見合わせると、即座に悲鳴の方角へ駆け出した。
山道を駆け抜けていくと、倒れた護衛たちに囲まれた馬車が目に入った。
数人の盗賊が馬車を取り囲み、残った護衛に襲いかかっている。
「リリス、あの馬車を助けよう!」
カルヴァンは迷うことなく前方へ駆け出し、リリスもすぐに続いた。
「ファイアボール!」
カルヴァンの手から放たれた炎の球が盗賊たちの間で炸裂し、火花が舞う。
驚いた盗賊たちがカルヴァンに視線を向け、剣を振り上げて向かってくる。
「ダークネス・バインド」
リリスの冷たい声と共に、影が蛇のように盗賊の足元に絡みついた。
「くそっ、離せ!」
動きを封じられた盗賊がもがくが、リリスは冷たく鋭い目で彼を睨む。
「そう焦らないで。すぐに終わらせてあげるわ」
そう言って、リリスは闇属性を纏わせた鋭い爪を展開し、一気に盗賊の懐に飛び込んだ。
素早い一撃で盗賊の剣を弾き飛ばし、その隙をついてカルヴァンが「フレイムアロー!」と鋭い炎の矢を放つ。
矢は正確に盗賊の肩を貫き、彼は悲鳴を上げて倒れ込んだ。
「ぐっ…!こいつら、ただの冒険者じゃねえ!」
怯えた盗賊たちは後ずさり、逃げ出そうとするが、リリスの冷ややかな笑みが彼らを睨みつける。
「そんなに弱くて、恥ずかしくないの?」
彼女の冷徹な声に、最後の盗賊は剣を捨て、恐怖で震えながら崩れ落ちる。
盗賊たちが全員倒れ、辺りが静まり返った時、馬車の扉がゆっくりと開き、中から一人の美しい少女が姿を現した。
「助けていただいて、本当に感謝します」
彼女は深く頭を下げ、涙ぐんだ瞳で二人を見つめる。
「君、大丈夫?怪我はない?」
カルヴァンが優しく声をかけると、少女はほっとした表情で頷いた。
「ええ、大丈夫です。ただ…護衛の皆さんが…」
少女は悲しげに倒れた護衛たちを見つめた。
リリスがそっと肩に手を置き、「護衛のことは残念だけど、あんたが無事でよかったわ」と言うと、少女は少し気を取り直した様子で顔を上げた。
「ありがとうございます。私はアイリス・フォーレンと申します。フォーレン伯爵家の娘です。あなたたちは?」
慎ましやかに名乗る彼女に、カルヴァンとリリスも自己紹介を返す。
「僕はカルヴァン、こっちはリリス。僕たちはアルバンシア王国の王都に向かっているんだ」
「まあ、ちょうど良かった!私も王都に戻るところなの。よければ一緒に行きませんか?馬車なら楽に行けますわ」
アイリスは微笑み、二人を馬車に招き入れた。
「それは助かるわね。歩きで王都まで行くのは少し大変だったから」
リリスも軽く微笑み、カルヴァンと共に馬車に乗り込んだ。
馬車の中、アイリスは興味深そうに二人を見つめ、話しかけてきた。
「カルヴァンさん、リリスさん、どんな冒険をしてきたのですか?ぜひお話を聞かせてください」
「そうだなぁ…昨日はカルン村の星祭りに参加してきたんだ。夜空に星がきらめいて、とても素敵な夜だったよ」
カルヴァンが微笑みながら話すと、アイリスは楽しげに頷き、目を輝かせた。
こうして、三人は笑い合いながら王都へ向けて旅路を進み、新たな物語がまた一歩始まった。
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