第16話 星祭ー2
夜が更け、星々が夜空にまばゆい光を放ち始める頃、村の広場で特別な星祭りの儀式が静かに始まった。
村人たちは広場に集まり、地面に横たわりながら満天の星空を仰いでいる。
儀式の進行役が静かに語り始めた。
「遠い昔、まだこの大地に人の影も少なかった頃、星の精霊たちは夜ごと地上に舞い降り、人々と共に過ごしていたと伝えられています。彼らは、月明かりのもとでそっと耳を傾け、ただ一つの願いを持つ者がいれば、その願いを夜空へと運んだのです」
進行役の語る神秘的な声が夜の静寂に溶け込むように響く。
「精霊たちは、星に想いを刻むことで、人々に力と導きを与えました。今も流れ星が現れるとき、それは星の精が地上の願いを受け止めるために、空を翔けているからだと言われています。だから流れ星が現れたときには、誰にも告げず、自分の中で一番大切な願いをそっと託すのです」
その話に心を動かされた村人たちは、各々の祈りを星に託し、静かに夜空を見上げた。
カルヴァンとリリスも、村人たちに混じり星空を仰いでいた。
涼しい夜風が二人の間を流れ、静寂に包まれながらも、どこか温かい雰囲気が漂っている。
リリスはふと隣にいるカルヴァンに目をやり、どんな時も自分を支えてくれている彼の存在を改めて感じた。
彼が隣にいることで、自然と心が安らいでいくのを感じる。
(この気持ちって…いったい何なのかしら?)
リリスは自分でもまだよくわからない感情に、静かに思いを巡らせた。
やがて、夜空を彩るように花火が打ち上がり、光のショーが始まった。
色とりどりの光が夜空に咲き、村人たちは歓声を上げ、目を輝かせながらその光景を見つめている。
カルヴァンとリリスも、共に感動しながら、その美しい花火に見とれていた。
やがて花火が終わり、広場が静けさを取り戻すと、カルヴァンは地面に腰を下ろし、どこか物思いに耽っている様子だった。
それに気づいたリリスが、そっと隣に腰を下ろし、「どうしたの?」と優しく声をかけた。
カルヴァンは少し照れたように笑って、答えた。
「いや、ただ、こうしてみんなと一緒にいられるのが嬉しくてさ」
二人は星空を見上げ、言葉を交わさないまま、静かにその瞬間を共有していた。
すると、夜空を流星がいくつも横切り、まるで二人を祝福するかのように光の筋を描いていく。
カルヴァンはポケットから赤いガラス玉のついた小さなネックレスを取り出し、リリスに差し出した。
「これ、リリスに似合うと思って…」
彼は少し照れたように言い、リリスも驚きと喜びが入り混じった表情でネックレスを受け取る。
「ありがとう……これ市場であたしが見てたやつよね?、本当に素敵ね」
リリスは小声で呟き、そっとそのネックレスを手にとって眺めた。
小さな赤い光が、まるで二人の気持ちを代弁するかのように、星空の下で優しく輝いている。
リリスはふと、心の中に温かさが広がっていくのを感じた。
隣にいるカルヴァンに対して、ただ感謝の気持ちだけでなく、何か特別な感情が生まれ始めている気がする。
(…カルヴァンと一緒にいると、心が安らぐの。こんな気持ち、初めてかも)
一方、カルヴァンもまた、リリスの横顔を見つめながら、自分の胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じていた。
彼にとってリリスは、どんな時も共に戦い、支え合える大切な存在だ。
それがただの仲間以上のものなのか、自分でもまだはっきりと理解できない。
祭りが終わり、二人は静かな夜道を歩きながら宿屋へと戻る。
しんとした夜風が二人の間を吹き抜ける中、ふと二人の手が触れ合った。
お互いに少し驚きつつも、自然とそのまま手を繋ぎ、言葉なく歩みを進めていく。
(あたし、こんな風に誰かと手を繋いで歩くのって、初めてかも…)
リリスの胸に、じんわりと温かい感情が広がっていく。
「カルヴァンがこんなにも大切な人になるなんて…」彼女の胸には、今まで感じたことのない温かさが広がっている。
一方で、カルヴァンもまた、リリスといることでこれまでにない安らぎと力強さを感じ、心の中で静かに思っていた。
「リリスと一緒なら、どんな未来もきっと越えていける」
そう誓いながら、二人は新たな想いを胸に、次なる旅へと一歩を踏み出していった。
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