第15話 星祭ー1
カルヴァンたちが村に戻ると、長老がすぐに迎え入れてくれた。
カルヴァンたちが無事に村人たちを解放したことを報告すると、長老は安堵の表情を浮かべながら深々と頭を下げ、「本当にありがとうございます。この村に再び平和を取り戻してくださった」と温かい感謝の言葉をかけた。
その報告が終わると、村全体が一気に忙しくなり、再び星祭りの準備が始まった。
村人たちは皆一丸となって、装飾や料理の支度に取り掛かり、どこもかしこも活気に満ちている。
子どもたちが楽しげにはしゃぎ、大人たちは笑顔で準備を進め、村全体が祭りへの期待で高揚しているのが伝わってきた。
リリスはふとその様子を見渡し、感心したように呟いた。
「こういうときの人間の団結力って、やっぱりすごいのね」
カルヴァンは肩をすくめながらも、少し複雑そうに微笑んで言った。
「まあね。でも、団結力が強すぎると、逆に争いの原因になることもあるんだ。理想を求めすぎると、互いの違いが見えなくなってしまうからね」
「そうなのね…やっぱり、あなたたち人間って複雑なのね」
リリスは少し驚いたように目を丸くしながらも、興味深そうにカルヴァンの横顔を見つめた。
やがて、二人も村の星祭りの準備に加わることになり、リリスは梯子に登って高い場所に装飾を施していく。
彼女が軽やかに手を動かし、星形の飾りを揺らすたび、淡い光が反射してきらきらと輝き、村の通りが少しずつ幻想的な雰囲気に包まれていった。
その様子を見上げながら、カルヴァンは下で見守りつつ、彼女に飾りを手渡したり、微笑みながら彼女の作業をサポートしていた。
そのとき、近くで作業していた村人が二人に気づき、興味津々な表情で声をかけてきた。
「お二人さん、どこから来たんだい?」
カルヴァンは柔らかく笑って答える。「僕たちは、深淵の森を抜けてきたんだよ」
村人はその言葉に驚き、目を見開いた。
「えっ?!深淵の森から?!無事に出られるなんて、驚いたよ。普通の旅人があそこを通るなんて、無謀だと思ってたのに…」
カルヴァンは少し照れたように頭を掻き、「はは、まあ、なんとかね。思ったより手強い場所だったけど、こうしてここまで来られたからね」と穏やかに笑った。
村人は感心したように頷き、「いやはや、まったく見かけによらずタフなんだな、あんた」と目を丸くしていた。
村人たちとの会話を楽しみながら、カルヴァンとリリスはさらに準備を進めていった。
二人の手助けもあり、装飾はあっという間に完成していく。
村全体が星祭りの雰囲気に包まれ、空気に一層の高揚感が漂い始めた。
やがて、空が次第に暗くなり始め、星のひとつが夜の帳を引き裂くように輝きだす。
村の通りには松明の光が並び、星形の飾りが揺れ、夜の風にそよいでいる。
村人たちは装飾の仕上げに取り掛かり、子どもたちの笑い声が夜空に響き、いよいよ星祭りが始まることを告げていた。
カルヴァンは静かに夜空を見上げ、「いよいよだね、星祭りの本番が始まる」と呟いた。
リリスも同じように星空を見上げて微笑み、「ええ、楽しみだわ」と応じた。
星がまたたき、松明の光が揺らめく中、村全体が期待と興奮に包まれているのがわかる。
ふたりは村人たちと同じように、この特別なひとときを胸に刻みながら、祭りの始まりを待ち望んでいた。
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