第2話 悪魔の女王、使い魔になる
エレナの元で魔術や魔法の修行を始めて早数年。
15歳になったカルヴァンは、今やそこらの大人の魔法使いよりもよっぽど優れた技術を持っていた。
本物の魔女に教わってるのだ、上達しないはずがない。
そんなエレナは彼の才能を見抜き、古代から伝わる「使い魔召喚の儀式」を教えようと決めたのだった。
もっとも、この儀式は今や古代の魔法で、現代の魔法使いたちは即効性のある攻撃魔法を好むため、わざわざ使い魔を召喚する者は少ない。
それでもエレナは言うのだ。
「カルヴァンにはそれを学ぶ価値がある」と。
彼女は古びた魔導書を開き、真剣な眼差しで儀式の手順を説明した。
カルヴァンはエレナに促され、魔導書の呪文を声に出して唱え始めた。
「万物の精霊よ、我が呼びかけに応え、次元を越えし力を貸し与えたまえ。 我が魂と結びつき、永劫に守護する使い魔よ……今、姿を現せ!」
最後の言葉が口を離れると、空気が一気に張り詰め、強烈なマナの波動が周囲に広がった。眩い光がカルヴァンの視界を奪い、そして光が収まると──そこには、見知らぬ美しい少女が立っていた。
彼女は14歳くらいの見た目で、艶やかな黒髪をサイドポニーテールにし、瞳は鮮やかな赤色に輝いている。
まるで人間のような容姿だが、頭には鋭い角、背中には大きな羽、さらにお尻には細い尻尾まで揺れており、あからさまに普通ではない姿をしている。
しかし、その容姿は控えめに言っても超美少女だ。
カルヴァンは思わずその魅力に目を奪われ、無意識に視線が彼女の胸元に向かっていく。
「……どこ見てんのよ、このムッツリスケベ!」
彼女の声が響き、カルヴァンは顔を真っ赤にして視線を逸らした。
「ご、ごめん!そんなつもりじゃ……!」
そんな彼の動揺にはお構いなしに、少女は余裕たっぷりに胸を張って微笑むと、堂々と宣言した。
「ふふ、私の名前はリリス。アークデーモンにして悪魔の女王よ!」
「…え?悪魔?…君が……使い魔?」
驚きに目を見開くカルヴァンをよそに、リリスは得意げに頷いた。
エレナも驚愕の表情でリリスを見つめていた。
「これは一体どういうことなの……?カルヴァン、これは普通の使い魔ではないわ。彼女はアークデーモンよ。こんな存在が召喚されるなんて……」
「え、そんなにすごい存在なの?」とカルヴァンは半信半疑でリリスを見上げた。
するとリリスは肩をすくめ、ニヤリとした笑顔を浮かべる。
「安心しなさいよ魔女さん。私がここに来たのは彼の強力な力に興味があったから。それでちょっとだけ儀式に手を加えさせてもらったの。」
エレナは少し警戒しつつも、リリスの説明に納得したように頷いた。
そして、カルヴァンに向き直り、優しい眼差しで言葉を続けた。
「カルヴァン、今回リリスが召喚されたのは、あなたの持つ強力なマナが原因よ。本来なら、悪魔の召喚には人間の生贄が不可欠なの。それが必要なかったのも、そして彼女がこうして姿を保っていられるのも、すべてあなたの桁違いに膨大なマナのおかげ……少しは理解できたしょう?あなたがどれほどこの世界で稀有な存在なのかを。」
カルヴァンはその言葉にしっかりと頷いた。エレナの真剣な眼差しを見て、彼女の意図が伝わってくる。
「一歩間違えば、大惨事になっていたかもしれないわ。だからこそ、その力をしっかりと使いこなす術を身につけてほしいの。私ができる限り、全てを教えるからね。」
カルヴァンはその言葉の重みを受け止め、真剣な表情で応えた。「わかったよ、母さん。」
そんな二人のやり取りを見ていたリリスが不機嫌そうに鼻を鳴らし、腕を組む。
「ふふ、まぁ、あたしがわざわざ出向いてきてやったんだから、あんたにはそれなりの価値を見せてもらわないとね!」
カルヴァンは慌てて姿勢を正し、リリスの方に向き直った。
「そ、そうだよね……僕はカルヴァン!これからよろしくね、リリス!」
「ふ、ふん。ま、あんたがちゃんと役に立つかどうかは、これから見させてもらうわよ!」
彼女のツンデレな反応にカルヴァンは思わず微笑み、これからの新たな生活に向けて胸を高鳴らせるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます