序章
第1話 平凡な僕、魔術の道へ
カルヴァンは小さな手鏡をじっと見つめ、そこに映る自分の姿にため息をついた。
「……転生したら、なんかもっとイケメンに生まれ変わると思ってたんだけどなぁ……」
鏡の中に映るのは、緩いウェーブがかった赤茶けた髪が目にかかるくらいの長さで、どこにでもいそうな平凡な顔つき。ただただ普通だ。異世界転生した“主人公”のイメージとはほど遠い。
「ラノベでよくある特別な力とか、目立つ特徴とかもないし……ほんと、ただの『人間』って感じだよな」
そうぼやく彼の背後から、柔らかい声が聞こえてきた。
「カルヴァン、今日から魔法の基本を教えるわ。あなたの持つマナは、この世界で類を見ないほど膨大なの。だからこそ、その使い方をしっかり学ばないとね」
カルヴァンは一瞬驚き、振り返った。そこにいたのは、いつも優しく見守ってくれる育ての母、エレナ。けれど今は、その瞳にどこか決意めいた光が宿っていた。
「え……僕が? 類を見ない……?」
平凡だと思っていた自分が、実は異世界でものすごいポテンシャルを持っているという事実に、カルヴァンはぽかんとしたままエレナを見つめた。
エレナは微笑みを浮かべつつ、ゆっくりと説明を始めた。
「そうよ。マナは魔法や魔術を使うためのエネルギー源。普通の人は限られた量しか持っていないけれど、あなたは次元を超えてこの世界に転生したから、膨大なマナを持っているの」
「え、えっと……本当に、僕にそんな力があるの?」
エレナは優しく頷き、「そう。だから、あなたには特別な才能があるのよ」と微笑んだ。戸惑いながらも、自分の中にそんな力が眠っているのかと意識し始めたカルヴァンは、ふと思いついて尋ねた。
「でも、どうやってその力を使えばいいの?それに、母さんが使ってる『魔術』ってやつ、僕もやってみたいんだけど……」
エレナは少し微笑み、「カルヴァン、『魔術』は魔の力を持つ者、つまり魔物や魔人のような存在が扱える特別な術なのよ。だから、人間のあなたが『魔術』を使うには、魔女の力を継承して『魔人』になる必要があるの」
「魔法と魔術って、やっぱり違うんだね……」
「ええ、魔法はマナさえあれば誰でも使えるけれど、魔術には特別な力が必要なの。魔女の力を受け継いで初めて使える強力で神秘的な術なのよ。あなたにはその素質があるけれど、まずは魔法からしっかりと学んでいきましょう」
エレナの言葉に、カルヴァンは期待と不安が入り混じった表情を浮かべたが、やがて自信を取り戻したように頷いた。
「わかった、じゃあまず魔法を学んでみるよ!」
こうして、カルヴァンとエレナの魔法訓練が始まることになった。エレナに見守られながら、カルヴァンは深呼吸をし、自分の中にある「力」を感じ取ろうとする。やがて、彼の心の中に不思議な暖かさが広がり始め、そのエネルギーが少しずつ湧き上がってくるのを感じた。
エレナが手本を見せながら、カルヴァンに基本的な魔法の呪文を唱えるように促す。
「じゃあ、試しに『ファイアボール』をやってみましょうか。集中して、内なるマナを手に集めるの」
カルヴァンはエレナの指示に従い、深く息を吸い込み、内なるマナを意識しながら手のひらに集中させた。すると、彼の手の中にぽっと小さな火の玉が生まれた。
「や、やった…!本当にできた!」
カルヴァンが信じられないというような表情で歓声をあげると、エレナは満足そうに頷きながら微笑む。
「そう、それがあなたの力よ。これからもっと難しい魔法や、いずれは魔術も学んでいかないとね。あなたのマナはとても強力だから、きちんと制御することが重要なのよ」
カルヴァンはエレナの言葉を真剣に受け止め、大きく頷いた。
「わかった、母さん!僕、頑張るよ!」
その日からカルヴァンの魔法の訓練は本格的に始まった。エレナとともに、彼は自分の持つ「特別な力」と向き合い、ひとつひとつ魔法を習得していくのだった。
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