第7話 マクシミリアン亭にて

 マクシミリアン亭の門を通ると、キオスクのような建物の中に、右目にモノクルをかけた男が、わたしのを睨んできた。



「パスポートが欲しいだって?」



 モノクル男の声と顔には、いかにも不機嫌そうな色があった。



「はい。できれば安く」



「都合の良い考えだな。そうはいかん! 出すものを出さねばらなぬ」



 モノクル男の額に、深いシワができた。



「でもお金はあまりないのです」



「労力を出せるだろう!」



 モノクル男は、一々怒る人らしい。



 わたしは辟易しつつあったが、引き下がるわけにはいかない。

 


 北へ行くのだ。



「実は労力もあまりないのです。非力なもので」



「非力であっても、あるのなら差し出すがよい!」



「わかりました。で、なにをすれば」



 わたしは言葉のやり取りによるパスポートの獲得を、早々にあきらめた。



「よろしい。では、これを持っていけ」



 モノクル男は、キオスクの奥から大きなツルハシを持ちだしてきた。



「こいつで、魔王を討伐してこい。パスポートは、魔王の首と交換だ」



 わたしは、まともな手段でのパスポート取得をあきらめた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る