第2章第10話: 「奇妙なショーとリオナの爆発」
広間はどこか異様な雰囲気に包まれ、派手な縦縞タキシードの男がくるくると踊りながら、「POW!」「BAM!」などの奇声を発していた。そのたびに、ピエロのように誇張された動きで手足を振り回し、くるりとシルクハットを投げ上げてはキャッチして見せる。まるで自分の世界に入り込んでいるかのようなその様子に、リオナは眉をひそめながら立ち尽くしていた。
ルビィはあまりの馬鹿馬鹿しさに呆れた様子で、そっとタバコに火をつけて一服しながら男のダンスを眺めている。
一方で、ミレイはとにかくその場に合わせようと、棒読みで「わ、わーすごーい……」と無表情で声を上げるものの、内心は完全に興味を失っている。
そんな中、なぜかエリオは目を輝かせながら楽しそうに男のダンスに見入っている。「うわぁ!すごい!こんな動き、見たことないよ!」と、心底ワクワクした声を上げていた。
リオナはそれを見てさらにイライラが募る。どうしてこんなバカバカしいショーに興奮しているのか、理解に苦しんだ。
ダンスが終わると、男はシルクハットを脱ぎ、深々とお辞儀をした。そして勢いよく立ち上がり、手を広げながら声を張り上げた。
「皆様、次は素晴らしいマジックショーをお見せしましょう!この公爵様の魔術をご堪能あれ!」
リオナが「……素人のくせに魔術って言っちゃってるし」と呟くと、ミレイも「本当の魔術師の前でよく言うよね」と同意した。
だがエリオは、キラキラと目を輝かせて男の動きを追いかけている。広間に流れる派手な音楽と共に、紳士は手品の準備を始めた。
「さあ皆さん、これが私の特別な魔法です!」
男はシルクハットに向かって何かを呟くと、両手を広げて「見てください!今からこの帽子から美しい白い鳩が登場します!」と宣言した。そして帽子を振りながら、「さあ、出ておいで~」と歌うように呼びかけた。
次の瞬間、帽子から白い煙がもくもくと立ち上り、「ボン!」と音を立てて小さな爆発が起きた。広間には一瞬にして煙が立ちこめ、やがてその中から黒焦げの鳥の羽がひらひらと舞い降りた。床には、黒焦げになった鳩がポトリと転がっていた。
リオナは目を見開き、開いた口が塞がらないままその光景を凝視していたが、男は動揺しながら帽子で黒焦げの鳩を隠そうとしている。
「え、黒焦げで出てきたよ?」エリオは驚きながらも拍手をし、「不思議だね!すごいや!」と楽しげにミレイに話しかけた。
ミレイも苦笑しながら、「そ、そうね……本当は生きたまま出すつもりだったんだろうけど」と答えた。
一方で、ルビィはもはや完全に無関心のようで、椅子に座っていびきをかいて寝ている。何が起こっても反応しないその様子が、逆にこの異様な空間をさらに強調しているようだった。
リオナのイライラは限界に近づいていたが、ミレイは落ち着いて彼女に耳打ちした。「まあまあ、合わせておきなさいってば。ここで怒ったら厄介だから」
「はぁ……本当にめんどくさいわね」とリオナは呆れながらため息をつき、何とか気持ちを落ち着けようとした。
男のマジックショーが終了すると、男は再び両手を広げ、広間に響くような声で叫んだ。
「さあ、ここからは皆様にもショーに参加していただきますよ!」
男が手を叩くと、スタッフらしき人物が現れ、一行に奇妙な形の帽子をかぶせた。帽子のてっぺんには謎のアンテナのようなものがついていて、見た目も滑稽だった。
「クイズ!公爵様!」と男が大げさに叫ぶ。「これから私が出題する問題に答えてもらいます!答えがわかったら、帽子についているボタンを押してね!」
エリオはその帽子を興味深そうに触り、「よーし、頑張るぞー!」と意気込みを見せていた。ミレイもため息をつきながら「だるいけど、我慢我慢……」とつぶやいた。
一方、ルビィは帽子をかぶせられても寝たままで、一切反応しなかった。
男は意気揚々と「それでは第一問!」と問題を読み上げようとしたが、その瞬間、リオナが限界に達して声を張り上げた。
「いい加減にくだらないからやめなさいよー!」
彼女の突然の叫びに、広間の全員が一瞬静まり返った。エリオやミレイも驚いた表情でリオナを見つめ、男は唖然とした表情を浮かべた。
「なんだって!?私が、くだらないことをしてるだって!?」男はリオナの言葉に反応し、顔色を変えた。
リオナは一歩前に出て、男を睨みつけながら続けた。「こんなくだらない茶番に付き合ってる暇なんてないの!さっさと話を進めてちょうだい!」
男はその言葉にカチンときたのか、手を振り上げながら大きく息を吸い込んだ。
「くだらないだと……?ふむ、これは失礼だな。私は野蛮なことが嫌いでね、野蛮人には即退場していただくのが礼儀だ!」
彼は指をパチンと鳴らし、鋭い笑みを浮かべた。次の瞬間、男の背後から「ごごご……」と不気味な音が響き始め、巨大な影が現れ始めた。
リオナは一瞬身構え、「な、何よ、今度は一体……?」と怯むが、その背後に現れた巨大な影を見て、さらに緊張が走る。
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