第2章第9話: 「奇妙な歓迎ショー」
一行は重々しい扉を開けて中に足を踏み入れた。そこは広間で、天井の高い空間が広がり、正面には大きな階段が堂々と構えている。階段の両脇には、意味のよくわからない奇妙なオブジェがいくつも並んでおり、全体がどこか怪しげな雰囲気に包まれていた。リオナは不安そうに辺りを見渡し、ルビィもミレイも何が起こるのかと周囲を伺っていた。
「……なんか、普通じゃないよね?」リオナが声をひそめて呟いた。
エリオは怯えた様子でリオナの後ろに隠れるようにして、「本当にここを通って大丈夫なのかな……?」と不安そうに言った。
一行が一歩を踏み出そうとした瞬間、広間が突然真っ暗になり、辺りが一気に静まり返った。リオナは思わず剣に手を伸ばし、緊張感が一気に高まる。
「ちょっと、何これ……暗すぎるって!」リオナは叫んだが、返事はない。
エリオはすっかり怯え、震えながら「怖い……暗すぎて何も見えないよ……」と不安げに呟く。
すると、ミレイが軽くため息をつき、「ルビィ、さっきみたいにチャチャっと明るくしてよ。あんたの芸でしょ?」と、頼りない口調でルビィに話しかけた。
ルビィはその言葉に笑いながら返事をした。「芸じゃねーよ!お前も骸骨と一緒に消しちまうぞ!」と軽口を叩き、笑い声が広間に響いた。
その時、突然ドラムロールが鳴り始め、まるで舞台が始まるかのように音が高まっていく。スポットライトが何本も現れ、広間の中をぐるぐると回り始めた。
「な、なにこれ!?本当に何が始まるの!?」リオナはますます緊張し、エリオはおびえながらルビィの背中にしがみついていた。
ミレイはまるで退屈そうな顔をしながら「ふぅ……またかよ」とため息をつき、わざとらしく興奮した口調で棒読みで言った。「わー!何が始まるんだろー!ワクワクするなー!」
リオナはそんなミレイに驚き、「ちょっと、何言ってんのよ!?こんな時に……!」と小声で言ったが、ミレイは彼女を脇でつつきながら「いいから、合わせなさい!」と促した。
リオナは少し戸惑いながらも、「わ、わーい……ワクワクする……なー」とぎこちなく声を上げ、やっとミレイに合わせることにした。
するとその瞬間、
「Welcome, ladies and gentlemen! The fun show is about to begin!」
という、英語でのアナウンスが響き渡った。ドラムロールがピタリと止み、辺りが一気に明るくなった。そして、派手な音楽が広間に流れ出し、まるで大掛かりな舞台が幕を開けたかのような雰囲気に包まれる。
一行が目を凝らして正面を見ると、階段の上に派手なタキシードを着た紳士が立っていた。紅白の縦縞模様のタキシードにシルクハット、そして目の前に大きな蝶の形をしたメガネマスクをかけ、背中には派手な鳥の羽を何本も背負っているという、異様な出で立ちだ。
リオナは驚きのあまり、その場に釘付けになった。
「な、なにこの人……?」
その間も、ミレイは棒読みで「わー!公爵様、今日は何をなさるのかしら~」と、これまたわざとらしく興奮を装って声を上げる。リオナはそんなミレイを横目で睨んだが、ミレイはリオナの脇を軽くつついて「ほら、合わせなさいってば!」と小声で急かしてきた。
「えーと……わーい、楽しみだなー」と、嫌々ながら合わせるリオナ。しかし、どうしても納得がいかない表情で、最後には「なんで私が……」とぼそっと呟く。
ミレイは苦笑しつつ、「いいから、拗ねると面倒くさいから合わせてよ」と言った。
「はぁ……もう、しょうがないわね」とリオナは諦め顔で、再びテンションを上げて見せた。
階段の上の紳士は、二人のやり取りに気づいたのか、豪快に「ハハハハハ!」と笑い声を響かせながら、広間の注目を集めた。両手を大きく広げ、エリオやルビィに向かって手を振り、ゆっくりと階段を降りてくる。
リオナもミレイも、その姿に少しだけ圧倒されていたが、やがてリオナがぽつりと呟いた。
「……やっぱり変な人よね、あれ」
エリオも後ろからひょっこり顔を出し、「ちょっと怖い……けど、なんだか面白そう……?」と小声で同意を求めてきた。
紳士は、両手を再び広げ、階段を降りる姿があまりに堂々としているが、何が目的なのかさっぱりわからない。その奇妙な存在感が、一行にさらに困惑を与えた。
「ようこそ、紳士淑女の皆様!本日はこの館で特別なショーをご覧いただきます!」
その堂々とした宣言を聞きながら、一行はますます不安げな顔でお互いを見つめ合った。
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