第2章第6話: 「崩れる骸骨とルビィの魔法」
リオナは剣を構え、迫り来る骸骨たちに臨戦態勢を取った。しかし、後ろで様子を見ていたミレイは、軽くため息をつきながら声をかけた。
「やめときなって、リオナ。無駄だからさ~」
リオナは振り返らずに言い返す。
「無駄かどうかはやってみないとわからないでしょ!」
一方で、エリオは完全に怯えて、頭を抱えて縮こまっていた。
「こんなの無理だ……怖すぎるよ……」
エリオの姿はあまりにドラゴンらしくなく、情けない様子だったが、リオナはそれどころではなく、目の前の骸骨に集中していた。
骸骨の兵士たちが次々とリオナに襲いかかり、リオナも応戦する。剣を振り下ろし、激しい鍔迫り合いが起きるかと思いきや――
「パシャン!」と、間抜けな音を立て、骸骨は崩れ落ちた。
「……え?」リオナは驚きの声を漏らした。
再度剣を振るうと、また別の骸骨が「カシャッ」と音を立てて崩れる。リオナは拍子抜けしながらも、次々と襲いかかる骸骨を簡単に撃退した。
「すごく脆いんだけど……」
しかし、ミレイはまた肩をすくめた。
「だから言ったでしょ、無駄だって」
「無駄じゃないわ。これだけ脆いならすぐ倒せるもの」
リオナは自信たっぷりに言い放ったが、ミレイは呆れた様子で質問を投げかけた。
「ねえ、リオナ。アンデッドって知ってる?」
リオナは剣を振りながら、「なにそれ?」と聞き返す。
「アンデッドって、死なないって意味よ。倒してもすぐ復活してまた襲ってくるの」
その言葉を聞いた瞬間、リオナの動きが止まった。周囲を見渡すと、確かに崩れたはずの骸骨たちがゆっくりと再生し、再びリオナに向かって立ち上がってきた。
「ちょ、ちょっと待ってよ!これじゃ、永遠に終わらないじゃない!」
「だから言ったでしょ、やめとけって」
ミレイは冷静な口調で言いながら、さらに続けた。
「こういう時はさ、あれを使わないと」
「え?あれって何?」リオナは眉をひそめた。
「聖水に決まってるでしょ。早く出して」ミレイは呆れた様子で言い放つ。
「聖水!?そんなの持ってないわよ!」リオナは反論するが、ミレイは苛立った顔で言い返す。
「どうしてよ!?冒険者としての常識じゃないの?」
「常識?そんなの知るわけないでしょ!それに、あんただって聖水持ってないじゃない!」リオナも負けじと反論する。
ミレイは目を細め、ますます苛立ちを露わにする。
「私は魔女だから!こんな時に普通の冒険者みたいなアイテムなんか必要ないの!」
「だったら、魔法でなんとかしなさいよ!」
リオナとミレイは顔を突き合わせ、どんどん言い合いになっていく。
その間に、骸骨たちは復活を繰り返し、数が増えていく。最初は数体だった骸骨が、今では数十体にまで膨れ上がり、一行を完全に取り囲んでしまった。
「や、やばいじゃない……どうするのよ!」
リオナは焦りを感じながらも、ミレイと喧嘩を続けていた。
その時、ルビィが二人のやり取りを見かねて、腰を上げて近づいてきた。
「もう、うるさいな~。二人とも、ちょっと黙って目を閉じな」
リオナとミレイは一瞬きょとんとしたが、すぐにルビィの言う通りに目を閉じた。ルビィはどこからともなく水晶玉を取り出し、それに軽くキスをして、頭上高く持ち上げた。
「ロックンロール!」
ルビィの詠唱が始まり、周囲の空気が震える。そして、その瞬間――
眩しいほどの光が一帯を包み込み、全てが真っ白に輝いた。骸骨たちはその光にさらされ、瞬く間に姿を消していった。
リオナとミレイが目を開けると、周囲にはもう骸骨たちの姿はなく、静かな森の風景が広がっていた。
「……え?」
ルビィは満足そうにニカッと笑い、腕を組んでドヤ顔を見せつけた。
「どうよ、これが精霊の力ってやつさ」
リオナとミレイは呆然とした顔でルビィを見つめ、言葉を失っていた。エリオは、まだ状況を把握できずにキョロキョロと辺りを見回していた。
「な、なにがあったの……?」
状況を全く理解していないエリオを見て、リオナは少し笑い、ようやく緊張が解けた。
「もう、本当に……あんたは相変わらず情けないわね」
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