第2章第5話: 「泉の真実と森のモンスター」

ご機嫌なポップ爺さんの独演会が続く中、ミレイは軽くあしらうように言った。


「今度また寄らせてもらうからね~」


エリオとリオナも苦笑いを浮かべながら、爺さんに手を振りつつ別れを告げた。


「そうかそうか!いつでも寄ってくれ!お茶を淹れて待ってるぞ!」

爺さんは満面の笑みで手を振り続け、見送ってくれた。


リオナは少し不思議そうに首をかしげた。


「たかが金貨一枚で、なんであんなに喜ぶのかしら……」


それを聞いたミレイは、笑いながらリオナに軽く肩を叩いた。


「これだからお姫様は~。世間の価値ってものを知らないのね~」


ルビィもそれに同意し、「本当、それ!」と笑いながら頷いた。リオナはちょっとムッとしながらも、言い返すことができずに黙ってしまった。


「いや、実際、王族ってのは金貨なんかに慣れてるもんさ」

エリオも少し笑いながら同意する。リオナはさらに顔を赤らめながら、軽くため息をついた。



一行は空を飛びながら、公爵の屋敷を目指していた。エリオも、少しずつ飛行に慣れてきたようで、今ではあまり恐怖を感じずに移動できているようだった。


ふと、リオナが思い出したかのように、ルビィに疑問を投げかけた。


「そういえば、ルビィ。あなたは泉の精霊なのに、どうして真実の泉を知らないの?」


ルビィは肩をすくめ、軽く笑って答える。


「だって、真実の泉は水が関係する泉じゃないんだもん。だから知らないのよ~」


「え、水じゃない?どういうこと?」

リオナが驚いて聞き返すと、ミレイが少し説明を加えた。


「真実の泉ってのは、水じゃなくて、鏡みたいなものなのよ」


エリオはその言葉を聞いて、ピンと来た様子で顔を上げた。


「なるほど!それに僕の姿を映して、元に戻してくれるんだね!」


しかし、ミレイはすぐに手でバツを作り、「ブッブー」と音を立てて否定した。


「いやいや、そうじゃないの。あれはあくまで質問に答える道具にすぎないのよ。だから、その道具に『どうやって元に戻るか』を聞きに行ってるの」


エリオは少しがっかりした表情を浮かべながらも、黙って頷いた。



しばらくして、一行はとある森の入り口にたどり着いた。公爵の屋敷は、この森を抜けた先にあるらしい。


「さて、じゃあここまで案内したから、後は自分たちで行ってね~」

ミレイは軽く手を振り、さっさとその場を立ち去ろうとした。


だが、エリオは少し冷たく呟いた。


「……またお酒でも飲んじゃおうかな……」


その一言を聞いた瞬間、ミレイは慌てて飛び去ろうとしていたホウキから降り、急いでエリオに駆け寄った。


「ちょ、ちょっと待って!わかったわよ!案内するから!だから、それはやめて!」


エリオは満足げにニヤリと笑い、ミレイを見つめた。


「ありがとう。よろしく頼むよ」


こうして、渋々ながらもミレイは案内を続けることになり、一行は森の中へと足を踏み入れた。



「気をつけてね。この森にはモンスターが出るわ」


ミレイが軽く警告をするが、リオナは肩をすくめ、軽く笑いながら答えた。


「どうせ、エリオのドラゴンの姿を見たらモンスターなんて逃げ出すでしょ?」


だが、ミレイは険しい顔で首を横に振った。


「それが、ここではそう簡単にはいかないのよ。この森にいるのは……」


その瞬間、森全体が急に静まり返った。そして、周囲の木々の間から、不気味な音が聞こえ始めた。リオナが周りを見回すと、音の正体が姿を現した。


そこには、剣と盾を持った骸骨の兵士たちが立っていた。ガチャガチャと音を立て、骸骨の兵士たちは無表情で一行を取り囲んだ。


「何これ……!?」リオナが驚いた声を上げた。


だが、エリオはその光景に震え上がり、尻込みしてしまった。彼の大きなドラゴンの体が縮こまり、震えながら呟いた。


「こ、こ、これは……怖い……」


リオナはエリオの様子に気づき、驚いて彼を見た。


「ちょっと、何ビビってるのよ!あんたドラゴンでしょ!?」


「だ、だって……あれは……生きてないのに動いてる……怖すぎるよ……」

エリオは完全に怯え、動けなくなっていた。


リオナは剣を抜き、気を引き締めた。


「しょうがないわね……私が何とかするしかないか」


骸骨兵士たちはじわじわと距離を詰めてきており、一触即発の状態だ。リオナは覚悟を決め、エリオに頼らず、自分の力でこの危機を乗り越えるしかないと決心した。

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