第2章第4話: 「お爺さんとの茶話会」
荒涼とした岩場の一角で、一行は砂埃を避けるように岩陰に身を寄せ、輪になって座っていた。時折、強い風が吹き荒れ、砂が舞い上がるが、彼らはそれを気にする様子もなく、静かに待っていた。
ポップ爺さんが、背負っていた大きなリュックを降ろし、そこから茶道具を取り出すのを見て、リオナとエリオは不思議そうな顔をしていた。爺さんが器用に茶器を並べ始め、手際よくお茶を淹れていく姿は、見た目のぼんやりした印象とはまったく違う。
「爺さんのお茶は、意外と美味しいんだよ」
ミレイがニヤリと笑って言った。
「美味しいお茶ね……?」リオナは半信半疑だったが、爺さんが茶碗を差し出してくると、素直にそれを受け取った。エリオも、巨大な鉤爪を器用に使い、茶碗を持って慎重にお茶をすすった。
「……うん、これは本当に美味しい!」
リオナが驚きの声を上げ、エリオも同意するように頷いた。
「うん……確かにすごく美味しい……」
爺さんはぼんやりした目をしたまま、淡々とお茶を振る舞い続けた。彼が何も言わずにお茶を注ぐ姿に、奇妙な落ち着きが漂っていた。
「今どき、ドラゴンなんて……めんどくさいもんだねぇ」
突然、爺さんがぼそっと呟き、エリオを見ながらめんどくさそうに言った。
「まあまあ、そう言わないでよ。エリオは人間に戻りたいって言ってるんだから」
ミレイが肩をすくめ、説明するように言う。
「人間に戻りたい……?」
爺さんは少し驚いた様子で、エリオをじっと見つめた。その視線はどこか不思議そうで、まるでエリオの考えが理解できないようだった。
「そうそう、だからさ、爺さん。真実の泉が今どこにあるのか教えてくれない?」
ミレイが続けて尋ねると、爺さんは一瞬考え込むような表情をしたが、すぐに適当に「あっち」と指を差した。
「あっちって……」リオナが呆れたように呟く。
ミレイは深いため息をつきながら「まぁ、そんなもんだろうと思ったよ」と呟き、再び爺さんに話しかけた。
「でもさ、ちゃんと教えてくれないと、困るんだよね……」
その時、ミレイはふとリオナの方を振り返り、指で小さな丸を作りながら「いくら持ってる?」とささやいた。
「大したものはないけど……」
リオナは少し戸惑いながらも、金貨を取り出して見せた。
その瞬間、ミレイの目が大きく開かれ、驚愕の表情を浮かべた。
「えぇっ!?それ、かなり高価な金貨じゃないの……」
横で見ていたルビィは、口笛を吹きながら「ヒューッ、こいつはすごいね」と感心していた。
リオナは金貨を爺さんに差し出した。すると、爺さんの虚ろだった目が急に輝き始め、顔に活気が戻ったかのように見えた。
「おおお、これは……!」
爺さんは金貨を受け取ると、いきなり饒舌になり、嬉しそうに話し始めた。
「いやぁ、これさえあれば、もう安心だよ!最近は商売もうまくいかなくてね、困ってたんだよ、ほんとに。ああ、それから昔、あの湖で釣った魚は本当においしかったんだよね、そういえば……それでさ、私の若い頃は……」
ポップ爺さんは急に話が止まらなくなり、余計なことまで喋り始めた。エリオとリオナはあっけに取られた顔で聞いていたが、しばらくしてミレイがため息をつきながら遮った。
「うん、その話は置いといて……真実の泉の場所を教えてくれる?」
「おお、そうだったな!」
爺さんは慌てて話を戻し、口を閉じたかと思うと、指をまた違う方向に向けた。
「真実の泉なら、公爵のところにあるよ。最近はそこに移動したって聞いてる」
その言葉を聞いた瞬間、ミレイは露骨に嫌な顔をした。
「公爵のところ……か」
ミレイの表情からは、明らかに「また面倒なことになる」と言わんばかりの不快感が漂っていた。リオナとエリオもその空気を察しながら、不安げに顔を見合わせた。
「公爵って……誰?」エリオが恐る恐る尋ねると、ミレイは苦笑いしながら答えた。
「それは……まぁ、行けばわかるわよ」
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