第2章第1話: 「ギャル魔女の自己紹介」

「よく眠れた~?」


ルビィがニヤニヤしながら、からかうような口調で声をかけてきた。リオナは重い頭を押さえつつ、睨むように彼女を見た。二日酔いで頭が痛い中、この軽い感じが余計に腹立たしい。


「……全然よ。頭が割れそうだわ」


リオナは不機嫌に返事をするが、ルビィは「まぁまぁ」と流しながらタバコをふかしている。隣では、焦った表情のエリオが、目の前にいるギャル風の魔女に訴えかけていた。


「あなたが僕をドラゴンにした魔女ですよね!?お願いです、元に戻してください!」


エリオは必死の思いで懇願する。ドラゴンにされてしまったおかげで、普通の生活ができず、人々からは恐れられる毎日。故郷に戻ることすらできない。必死の思いで訴えるエリオを見つめながら、魔女はふと「あぁ~」と頭をぽんと叩いた。


「あんたかぁ~、あの時の王子様ね!懐かしいわ~、あたしが願いを叶えてあげたんだもんね!」


魔女はにやにやと笑みを浮かべながら、エリオを指さした。


「そうよ、あたしはあの伝説の大魔導士、ミレイ様よ~。よろしくね!」


彼女の軽い自己紹介に、リオナは眉をひそめた。


「……伝説の魔女?そんな軽いノリで?」


ミレイは肩をすくめて「ギャルっぽくていいでしょ?」と言いながら再び笑った。リオナは半ば呆れつつも、言葉を返す余裕もなく、ただただ戸惑っていた。エリオはそれでも必死に頼み続ける。


「お願いします!僕を元に戻してください!」


エリオの訴えを受けたミレイは、軽く考え込む仕草を見せたが、次の瞬間にはまた笑いながら答えた。


「なんで~?ドラゴンになれてるんだし、強くなったんじゃん?むしろラッキーじゃん!」


「いや、そんなことないです!みんなが僕を怖がって、国にも帰れないんです!」


エリオは泣きそうな顔で懸命に頼み続けた。リオナもその真剣な顔に同情し、魔女に一歩詰め寄った。


「本当に困ってるのよ。だから、お願い!何とかしてあげて!」


リオナが強い口調でそう言うと、ミレイはようやく少しだけ真剣な顔をし、肩をすくめた。


「まぁまぁ、そう熱くならないでよ~。でもね、あんた、結構特別なんだよ」


「特別?」エリオが驚いて問い返す。


「そうそう、普通の人間はドラゴンにはなれないんだよね~。だからあんた、特別なのよ。簡単に戻るとか、そういうことじゃないわけ」


リオナとエリオは、ミレイの言葉に戸惑いながら顔を見合わせた。


「どういうこと?」リオナが聞き返す。


「ま、それは後でちゃんと説明してあげるってば~。今焦っても、仕方ないでしょ?」


ミレイはニヤニヤ笑いながら、軽く手を振った。エリオはすぐにでも真実を知りたかったが、ミレイは何やら楽しんでいるように見える。


「でもね、戻る方法とか、そういうのは簡単じゃないからさ~。おいおい、ちゃんと教えてあげるから、まずはリラックスしてよ」


リオナは少し苛立ちながらも、仕方なく「もう少し聞かせてもらう」と腹をくくる。ミレイは、あくまでゆったりとした態度を崩さず、そのまま話を続けた。


「強くなるのは悪いことじゃないし、あんたの運命にはきっと必要なことなんだよ~」


リオナが「運命?」と口を挟むが、ミレイはニヤリと微笑み、続ける。


「そう、あんたはただの王子じゃないのよ。あんたの運命には……まあ、続きはキチンと教えてあげる!」


エリオとリオナは、突然の中断にさらに混乱し、ミレイを見つめた。


「僕は戻れるんですか?」とエリオが少し困惑して尋ねる。


ミレイはニヤリと笑みを浮かべ、「それには、ドラゴンのこと知らないとね!」と謎めいた返事をしながら、二人にウィンクした。


「それには色々準備もいるしね」


「準備……?」リオナが呆然と呟く。

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