第1章第12話: 「ドワーフの朝と魔女の手がかり」

翌朝、リオナはトンカントンカンというリズミカルな音に目を覚ました。頭がガンガンと痛む。昨夜の酒がまだ残っているのか、二日酔いのせいで頭を押さえながら起き上がる。音の方に目を向けると、外ではドワーフたちが忙しそうに働いている。大きなハンマーや工具を手に、木を削ったり、金属を鍛えたりと、まさに職人の集まりだ。


「ふぅ……やっぱり二日酔いか……」


リオナは頭を振りながらゆっくりと立ち上がり、宿泊していた部屋を出た。体がだるく、ふらつきながら廊下を歩いていくと、ドワーフたちの働く様子が目に入った。彼らはそれぞれ自分の仕事に没頭しており、周囲のことなど気にも留めていないようだった。


「昨日のこと、聞かなくちゃ……」


リオナは思い出した。昨夜ドワーフたちが話していた「ドラゴンは魔女の魔法で変えられた」という話が、エリオの呪いに関わっているかもしれない。それを詳しく聞くために、彼女はドワーフたちに質問しようと決意した。


しかし、誰に話しかけてもドワーフたちは忙しそうにしていて、全く相手にしてくれない。


「ねえ、ちょっといい?昨日の話、もう少し聞きたいんだけど……」


リオナは一人のドワーフに声をかけたが、彼は軽く手を振って、すぐに自分の作業に戻ってしまった。


「今忙しいんだ、後にしてくれ!」


「後っていつよ……」


リオナはため息をつきながら、別のドワーフにも声をかけるが、誰もまともに話を聞いてくれない。彼らはみんな目の前の仕事に集中していて、リオナの質問に答える余裕がなさそうだった。


「もう……全然相手にしてくれないじゃないの……」


リオナは苛立ちを感じながら広場を歩き回っていると、ふと目の端に何かが映った。そこには、泉のそばで寝ているエリオの姿があった。彼はよだれを垂らし、幸せそうな顔をしてぐっすり眠っていた。


「……本当に呑気なやつね」


リオナはため息をつきながら、エリオの方に近づき、彼の顔を見下ろした。そして、無造作に彼の体を蹴っ飛ばした。


「起きなさいよ!」


「うわっ!?何だよ、痛いじゃないか!」


エリオはびっくりして目を覚まし、リオナを恨めしそうに見上げた。


「何するんだよ、リオナ!まだ寝ててもいいじゃないか……」


「寝てる場合じゃないのよ!昨日の話、ドワーフたちが言ってた『魔女』のこと、ちゃんと聞かないといけないでしょ!」


エリオはぶつぶつ文句を言いながら体を起こし、頭をかきながら不満そうな顔をした。


「そんなに焦らなくてもいいじゃないか……」


すると、その時、近くを通りかかったドワーフがちらっとエリオを見ながらぼそりと一言言った。


「そんなにドラゴンのことが知りたいなら、魔女に聞くこったな」


その言葉に、リオナは驚いて振り返った。


「魔女……ってことは、ここにいるってこと!?」


その時、エリオが急に大きな声を上げた。


「あー!魔女がいる!」


リオナはエリオに驚いて振り向いたが、その目線の先にはルビィが見えた。ルビィは、何やら楽しそうに誰かと話している。リオナが目を凝らして見ると、そこにいたのは――魔女らしき女性の姿だった。


「……あれって、もしかして……」


「もしかしたら僕に魔法かけた魔女かも!」


そう思った瞬間、リオナとエリオは顔を見合わせ、同時に魔女の方へと駆け出した。次なる冒険の予感を感じながら、物語は第2章へと続いていく。

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