第1章第8話: 「空高く舞い、地面に落ちる」
「じゃあ、飛ぶよ……」
エリオが深呼吸をし、翼を大きく広げた。その瞬間、リオナは彼の背中にしっかりとしがみついた。エリオはゆっくりと地面から浮かび上がり、リオナは初めての空中体験に胸を躍らせた……はずだった。
「おお、飛んでる……!」
だが、その次の瞬間、エリオは予想外の勢いで一気に高度を上げ始めた。風が急に激しく吹き付け、リオナの髪がばさばさと乱れ、空気が一瞬で薄くなる感覚があった。
「ちょ、ちょっと待って!上がりすぎじゃない!?」
リオナは叫んだが、エリオはまったく制御できず、どんどん上空へと昇っていく。森の木々は遥か下に見え、空の青さがますます濃くなっていった。
「うわああああ!こんなに高く飛ぶなんて聞いてないわよ!」
リオナは恐怖に駆られ、エリオの背中にしがみつきながら叫んだ。エリオもまた、明らかにパニック状態に陥っていた。
「高すぎるよ!降りなきゃ!降りる、降りる!」
そう言いながら、エリオは一気に急降下を始めた。今度は、まるで崖から飛び降りるような速度で地面に向かって突っ込んでいく。
「ぎゃああああ!やめてぇぇぇぇぇ!」
リオナは再び叫び声を上げ、目をぎゅっと閉じた。風が猛烈な勢いで彼女の顔に吹き付け、地面がどんどん近づいてくる感覚が恐ろしかった。まさに地面に激突するかと思われたその瞬間、エリオは慌てて再び翼を大きく広げ、急上昇を試みた。
「ぶ、ぶつかるぅぅぅ!痛いのは嫌だ!」
エリオは必死になって地面を避けようとし、再び高度を上げる。しかし、またしても高さにビビったエリオは、すぐに恐怖に駆られてしまった。
「高いのはダメ!また下がる!」
「どっちなのよ!!」
リオナは怒りをぶつけながらも、必死にエリオにしがみついていた。上がったり下がったりを繰り返すこの恐怖の空中散歩に、リオナは耐えきれなくなり、叫び声や怒鳴り声を次々に上げた。
「もういい加減にしてぇぇぇぇ!早くどっかに降ろして!」
エリオもパニック状態で、どこに降りるべきか分からず、ただ恐怖に駆られて空を彷徨っていた。
「僕もわからないよ!どうしたらいいんだぁぁぁ!」
リオナはついに泣きそうになりながら、エリオに叫んだ。
「いいから、なんとかしてよ!もうこれ以上は無理ぃぃぃ!」
その瞬間、二人は突然、大きな衝撃と共に何かにぶつかった感覚を覚えた。次の瞬間、二人は空中から急激に落下し、冷たい水の中にドボンと飛び込んだ。
「……うわっ!」
リオナは驚きの声を上げ、水面から顔を出した。どうやら、彼女たちは森の外れにある泉に落ちたらしい。冷たい水が彼女の全身を包み、ずぶ濡れになったリオナはしばらくその場でぼんやりしていた。
「いったい、何が起こったのよ……」
エリオも同じく水の中で顔を出し、弱々しく肩をすぼめていた。
「ごめん……僕、飛ぶのって思ったより難しかった……」
リオナはエリオを睨みながらも、力なくため息をついた。
「もう、次はちゃんと練習してから飛びなさいよ……」
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