第1章第7話: 「暴れたいリオナと飛べるかも?」
リオナとエリオは森の中を進みながら、次から次へと魔物に出くわす状況が続いていた。リオナはそのたびに、心の中でワクワクし、剣を握りしめて戦いに備えた。冒険者として、自分の力を試す絶好の機会だと思っていたからだ。
「よし、戦闘だ!」
リオナはいつも通り剣を抜き、意気揚々と構えた。だが、魔物たちはリオナの背後にいるエリオ――ドラゴンの巨大な姿に気づくと、たちまち表情を変え、叫び声を上げながら逃げ出した。
「……またか」
リオナは剣を下ろし、肩を落とした。最初のうちは、魔物が自分たちを避けて逃げていくのは、エリオのおかげだと思い、助かったと感じていた。戦う手間が省けるのは悪いことではない、と。
だが、それが何度も続くうちに、リオナの中で少しずつ違う感情が芽生え始めた。
「こんなに逃げられるんじゃ、全然戦えないじゃないの……」
リオナはため息をつきながら、次の魔物が現れるのを期待して歩き続けた。そして、再び道の先に魔物たちが現れた。今度はもっと大きなグループだった。
「今度こそ……!」
リオナは再び剣を構え、戦う準備を整えた。だが、またしても魔物たちは彼女を見た後、エリオの方に視線を向け、恐れおののいて逃げ出した。
「うわあああっ!ドラゴンだー!」
魔物たちの叫び声が森に響き渡り、そのまま森の奥へ消えていくのを、リオナは呆然と見つめた。
「……また逃げた」
その後も、出くわす魔物が次々に逃げ出すばかり。エリオが背後にいるだけで、全ての魔物が恐怖に駆られてしまい、リオナはついに限界に達した。
「もういい加減にしてよ!」
リオナはついに怒りを爆発させ、剣を地面に突き刺した。エリオは驚いた様子でリオナを見つめ、怯えたように一歩後ずさりした。
「ど、どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ!あんたのせいで、全然戦えないじゃないの!」
リオナはエリオを睨みつけ、フラストレーションをぶつけた。
「なんとかならないの?火を吹くとか、その爪で引っかくとか、空を飛んで何かできるんじゃないの?」
リオナはそう言いながらエリオの体を見上げ、ふと彼の背中にある大きな翼に気づいた。
「あんた、飛べるんじゃない?」
エリオは目を丸くし、リオナの言葉に困惑したように首をかしげた。
「え……飛べるかどうか、わからないよ。僕、飛んだことないし……」
「そんなの、やってみなきゃわからないでしょ!とにかく試してみようよ」
リオナはそのまま強引にエリオの背中に飛び乗ろうとした。エリオは一瞬ためらったが、リオナの勢いに押されて、しぶしぶ了承する。
「え、えっと……わかった。でも、慎重にね」
リオナはエリオの背中に乗りながら、彼の体をしっかりと掴んだ。
「これで準備は万全ね。さぁ、飛んでみなさいよ!」
エリオは一度深呼吸をしてから、翼を広げた。彼は少しだけ緊張しているようだったが、リオナはその緊張を感じる暇もなく、興奮していた。
「さぁ、行くわよ!」
だが、その瞬間、エリオがぽつりと呟いた。
「……見かけより重いんだね」
「……は?」
リオナは一瞬、何を言われたのか理解できなかったが、すぐにその意味が分かると同時に怒りがこみ上げてきた。
「重い?私が?」
「いや、そんなつもりじゃ……」
「重いって言ったわよね、今!」
リオナはエリオの背中に拳を振り下ろし、力いっぱい殴った。エリオは驚きの声を上げながら、痛みを感じていた。
「ご、ごめん……でも、ちょっと重いかも……」
「黙りなさい!もう一度言ったら、もっと痛い目に遭うわよ!」
リオナは怒りをぶつけながらも、エリオの背中にしがみつき、飛び上がる瞬間を待った。エリオはため息をつきながら、翼を大きく羽ばたかせ始めた。
「……じゃあ、行くよ……」
エリオは再び深呼吸をして、翼を大きく広げ、地面から離れる準備を整えた。
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