第1章第4話: 「イライラの頂点」
「はぁ……」
リオナは深いため息をつきながら、剣を鞘に戻した。目の前のドラゴンは情けなく泣いているし、自分は道に迷ったまま。これでは冒険どころか、ただの無駄足だ。とりあえず、この状況をどうにかしないといけない。リオナは剣を持ち直し、もう一度森の中を見渡したが、どの方向に進めばいいか全くわからなかった。
「こんなところでウロウロしてても仕方ないし……歩くしかないか」
そうつぶやくと、リオナは無言で歩き始めた。少しでも前に進めば、何か手がかりが見つかるかもしれない。それに、動いている方が気分も落ち着く。リオナは無駄に時間を費やすのが大嫌いだ。だからこそ、何もしないで待つことはできなかった。
だが、彼女が数歩進んだところで、後ろからズシッ、ズシッと重い足音が聞こえてきた。振り返ると、あの巨大なドラゴンがついてきている。
「え……ついてくるの?」
リオナは眉をひそめ、ドラゴンをじっと見つめた。ドラゴンは彼女の視線に気づくと、立ち止まり、もじもじとした様子でその場に留まった。リオナはもう一度歩き始めたが、ドラゴンもまた動き出す。リオナが立ち止まると、またドラゴンもピタリと止まる。
「……なにこれ?」
リオナは困惑しつつも再び歩き始め、今度は少しだけ速足で進んでみた。だが、やはりドラゴンはズシズシとついてくる。何度か歩いては止まり、振り向いてはドラゴンも止まり、その繰り返しが続くうちに、リオナの中に徐々に苛立ちが募り始めた。
「もう……何なのよ……」
リオナはついに立ち止まり、振り返って大きくため息をついた。ドラゴンも同じく立ち止まり、リオナを見つめている。その様子は、まるで迷子の子供が誰かに頼ろうとしているかのようで、リオナはさらに苛立ちを抑えられなくなった。
「ちょっと……何か用?」
リオナは腕を組み、険しい表情でドラゴンに尋ねた。だが、ドラゴンはまごついたように口を開き、もごもごと何かを言い始めた。
「いや……別に……その……モゴモゴ……」
その煮え切らない態度に、リオナの苛立ちは爆発した。
「何よそれ!はっきりしなさいよ!こっちは道に迷ってるんだから、邪魔しないでっての!」
リオナは一気に文句をまくし立て、ドラゴンに対して容赦なく怒鳴り散らした。何も言い返さないドラゴンを見て、さらに怒りが増し、ついてくるなと言わんばかりに手で追い払うようなジェスチャーをした。
「ついてくるなって言ってるでしょ!私一人で十分よ!何もできないくせに、邪魔するだけならさっさと消えなさい!」
リオナの言葉が鋭く響き、ドラゴンはその場で縮こまるようにしてうつむいた。そして――。
「そんなこと言わないでぇぇ~!」
突然、ドラゴンが大声で泣き始めた。リオナは驚きのあまり、その場で固まってしまった。涙をボロボロと流し、情けない声で泣き喚くドラゴンの姿は、あまりに現実離れしていて、彼女は呆然とするしかなかった。
「ちょ、ちょっと……泣かないでよ……」
リオナは困惑したまま、どう対処すればいいのか分からず、無意識に後ずさった。泣きじゃくるドラゴンは「ついていきたい」と繰り返しながら、まるで子供のように情けない声を上げていた。
「……なんなのよ、このドラゴン……」
リオナは頭を抱え、どうしていいかわからず、再びため息をついた。これまで自分が想像していた冒険とは、まるで違う展開に困り果ててしまった。追い払おうとしても、泣いてしがみついてくるドラゴンを前に、リオナは次の一手が思い浮かばなかった。
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