第1章第2話: 「迷いの森」
リオナは城を飛び出し、広がる森の中を一人で進んでいた。彼女の心は高鳴り、自由を手にした興奮でいっぱいだった。柔らかい草の上を軽快に歩き、木々の間から差し込む陽光がまるで自分を歓迎しているかのように感じられる。
「やっぱり外は最高ね!」
彼女は心の中で叫び、勢いよく両手を広げた。城の窮屈な生活を抜け出し、これから始まる冒険に思いを馳せていた。リオナの冒険心は尽きることがなく、彼女にとって未知の世界は全てが輝いて見えた。
だが、しばらく歩いているうちに、リオナはふと足を止めた。
「あれ、ここ、さっき通った気がする……?」
振り返ると、見覚えのある木が目に入った。リオナは険しい顔をしてその木を見つめるが、心当たりがあった。その木の形、曲がった枝がどうにも記憶に残っている。何かが変だ。
「まさか、迷子……?」
彼女は自信満々で森に入ったはずだったが、方向感覚を失っていたことに気づく。リオナは一瞬だけ不安がよぎるものの、すぐにその気持ちを振り払った。
「大丈夫、大丈夫。こんなの、ただの偶然よ!このまままっすぐ進めば、きっとすぐに出口が見えるはず!」
リオナは自分を励ますように言い聞かせ、再び歩き始める。しかし、森は思っていたよりも広大で、同じような風景が続くばかり。木々は彼女の行く手を遮るように茂っており、陽光もだんだんと薄れてきた。
「うーん、もしかしてちょっとだけ……危ないかも?」
そうつぶやいた途端、彼女の耳にかすかな音が聞こえた。何かが森の奥で動いている。リオナは反射的に剣の柄に手をかけ、身構える。
「なんの音……?」
リオナは周囲を見渡しながら、ゆっくりと前進する。森の中は静かで、彼女の心臓の鼓動だけがやけに大きく感じられた。音は徐々に近づいてくる。まるで何かが彼女を追いかけているかのような感覚が広がる。
「こんなところで誰かに追われるなんて、ありえない……よね?」
リオナは不安を感じながらも、剣を抜き、いつでも戦えるように身構えた。その瞬間、背後から「ガサッ」という音が響いた。リオナは反射的に振り向くが、そこには何もいない。
「気のせい……?」
自分を安心させるように呟くが、心の中では警戒心がさらに強くなっていた。森は静かで不気味さが増していく。突然、風が吹き抜け、木々がざわめき始めた。リオナはその音に耳を澄ませ、何かが近づいてくる気配を感じ取る。
「やっぱり、誰かいる!」
リオナは剣を握り直し、戦闘態勢に入った。何が現れるのか分からないが、彼女は臆することなく立ち向かうつもりだった。だが、その時、茂みの中から飛び出してきたのは――。
「えっ、ウサギ……?」
リオナの目の前に現れたのは、ただの小さなウサギだった。リオナは拍子抜けし、肩の力が抜ける。剣を下ろし、深いため息をついた。
「なんだ、ただのウサギか……」
しかし、その瞬間、背後から再び音が響いた。今度は確かに大きなものが近づいてくる気配がする。リオナは再び剣を握り直し、緊張感を取り戻す。
「さっきのは冗談じゃないみたいね……次は本物が来る!」
彼女は再び身構え、何が現れるのか、心の中で次の動きを考えながら準備を整えた。森の中で一人、リオナの冒険は予想外の方向に進み始めていた。
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