お転婆姫とドラゴン(仮)

@anichi-impact

第1章第1話: 「自由を求めて」

リオナは、城の一室で大きく伸びをしながら窓の外を見つめていた。平穏すぎる日常、退屈な儀式、そして無意味な礼儀作法の勉強――すべてが彼女にとってはうんざりするほど退屈なものだった。リオナは城の中で自由に動き回るが、外の世界は彼女にとって未知の冒険の場所であり、その魅力に取り憑かれていた。


「はぁ……退屈だなぁ……」


彼女はため息をつきながら、腰に手を当て、思いっきり背筋を伸ばす。背は高く、体も引き締まっていて、男勝りの強さを感じさせる。金色の髪はポニーテールに結んでおり、いつでも走り出せるような準備万端な姿だ。彼女の姿勢や態度は、王家の姫というよりも、冒険者のような印象を与えていた。


突然、ドアが勢いよく開かれた。


「リオナ!お前、また外へ出ようとしているんだろう!」


怒鳴り声とともに現れたのは、リオナの父、カリウス王。彼の厳しい表情と大きな声は、王国を統べる者としての威厳を保っているように見えるが、リオナはその威圧感に全く動じない。むしろ、彼女は父の小言には慣れっこだ。


「お父様、そんなに怒らないでよ。私はただ、少し外の空気を吸いたいだけなの」


「空気を吸う?それがまた城を抜け出す口実だろう!前回はどれほどの騒ぎになったか覚えているか?」


カリウス王は腕を組み、娘の行動にいつも振り回されていることを嘆くように眉をひそめた。彼は強固な姿勢を崩さず、リオナを真っ直ぐに見据えるが、リオナは全くその視線を避けようとしない。


「前回は偶然、馬に乗っただけよ。そんな大げさに騒ぐことじゃないでしょ?私はこの城に閉じ込められているわけじゃないのよ!」


「だがな!お前は王国の姫だぞ!姫には姫の役割というものが――」


「そう、役割ね!その『姫の役割』ってやつは、退屈な宴会に出席して、お堅い顔で挨拶することばっかり。そんなの、全然楽しくないわ!」


リオナは反抗的な目で父を睨み、しっかりと自分の意思を主張する。彼女の強気な態度に、カリウス王は額に手をやり、深いため息をついた。


「まったく……お前は、母親に似てしまったんだな」


その瞬間、背後から優雅な声が響いた。


「おほほほほ、カリウスったら、そんなに怒っても仕方ないわよ」


リオナの母、エレーナ王妃が笑いながら入ってきた。彼女は華やかで気品あふれる女性だが、実はかなりのお茶目な一面を持っている。カリウス王は彼女の登場に一瞬表情を崩しつつも、すぐにまた厳しい顔に戻した。


「エレーナ、これは真剣な話だ。リオナがまた勝手に外に出るつもりだと言うんだ」


「まあまあ、カリウス。そんなに大騒ぎしなくても、リオナには冒険心があるんですもの。若いころの私たちだってそうだったでしょう?」


エレーナ王妃は軽やかに笑い、リオナにウィンクを送る。リオナは母のその気軽な態度に少し救われたような気がした。


「母上、ありがとう。でも、お父様の言うことも一理あるわ。ちゃんと計画してから外に出ればいいのよね、そうでしょ?」


リオナは少しだけおどけた調子で父に目配せする。カリウス王は彼女のその様子に困惑し、頭をかきながらさらに深いため息をついた。


「本当にお前たちには……敵わん」


こうして、リオナは父王の厳しい叱責をかわし、またしても自由を求めて外の世界へ出ようとするのだった。彼女の冒険は、まだ始まっていないが、その一歩はすぐそこまで迫っている。

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