第2話 応援(?)

そもそも俺、在里はそんなに良い奴では無い。

というのも人を助けるとかそういう事はしないタイプだ。

今回は本当にたまたま救っただけ...の筈だが。

乙武さんが襲われているのを救ったのをきっかけに。

俺の横に何故かその乙武さんという美男子の高島が好きな女の子が居る。


ややこしいかもしれないけど何故かそうなっている。

俺は頭に疑問符を思い浮かべながら乙武さんを見てみる。

乙武さんは俺の視線に気が付いたのか笑みを浮かべた。


「どうして?って顔だね。君はボディーガードだよ」

「...ボディーガード?」

「そうそう。ボディーガード。...私がまた襲われた時に...君なら助けてくれるかなって」

「し、しかし偶然助けただけ...」

「うん。でも私は貴方なら、って思っている」

「...」


どっからそんな自信が。

そう思いながら俺はぎこちなく歩く。

周りの視線が「何であんなのと一緒なんだ?」的な感じを受ける。

俺はその視線を痛く感じながら歩く。


「乙武さんは...その。...彼に守ってもらったら...」

「彼?」

「高島...」

「ああ。たっちゃん?たっちゃんは...無理だよ。...うん。無理」

「え?」


言いながら乙武さんは黙り込む。

1分経ったけど口を閉ざしたまま。

俺は少しだけ居心地が悪い感じで歩く。

それから露店を見つけた。


「ね、ねえ。乙武さん」

「...?」

「何か飲まない?」

「...え?」


我ながら何を言っているんだ。

そんなキザな人間でもなかろうに。

そう思いながら話題を逸らす為に言ったその事に乙武さんは笑みを浮かべた。

それから頷いた。


「うん。...君は何を飲むの?」

「俺は...紅茶かな」

「じゃあ私も同じものを。お金はら...」

「要らない。俺が...その。言い出しっぺだから」

「え...」


乙武さんに待つ様に言ってから俺は駆け出す。

その際にポツリと何か聞こえた。

「優しいね」という感じの言葉が、だ。

俺は?と思いながらも振り返らず露店に駆け寄った。



「ハーブティーとミルクを掛け合わせているんだね」

「...らしいね。美味しい」

「...うん。すっごく美味しい」


周りのカップルからの視線が相当に痛い。

「何であんなの?」とでも言いたそうだ本当に。

俺はその姿を見ながら必死にハーブティーを飲む。

すると乙武さんが俺をジッと見ているのに気が付いた。


「...ね。在里君」

「...は、はい?」

「何で私を助けてくれたの?」

「...そ、それは...」

「可愛いから?」

「...それは...」

「それとも魅惑的だったから?」

「...1人の女の子が困っていた。それだけだよ」


その言葉に乙武さんは!となりながら衝撃を受けた様な顔をする。

そして俺は続けてから言葉を発する。


「俺は女性は中身って思っているから」

「...君は...」


乙武さんは赤くなる。

それからそっぽを向いた。

俺は?を浮かべながらその姿を見る。

すると乙武さんが再びこっちを向いた。


「...君ってそんな...考え方を持ってくれる人だったんだね」

「外見なんて愛にとっては意味無いからね」

「...あはは。実は君、モテるでしょ?」

「モテないよ。アハハ」


それから俺は苦笑する。

そしてハーブティーをずるずる飲んでいると乙武さんは俺のそんな姿にまた呟いた。

「君って本当に...」と言ってからまた外の方を見る。

俺はその言葉に乙武さんを見る。


「...と、とにかく。私、たっちゃんとうまくいく様に応援してくれるかな」

「そうだね。応援してる」

「...と、止めてもらっても構わないよ」

「止めるって何...?」

「い、いや。やっぱり良いや」


そして乙武さんはハーブティーの入っているカップを潰した。

それからリサイクルボックスに捨ててから伸びをした。

俺はその姿に笑みを浮かべてからそのままゆっくり立ち上がる。

そうしてからリサイクルボックスにカップを入れてから笑みを浮かべる。


「...じゃあ帰ろうか」

「そうだね。...あ。そうだ」

「...?」

「お礼をしてない。...強姦に襲われた分もそうだけど」

「え?...いや。良いよ。たまたまだから」

「私の家に来て。お礼をするから」

「は?」


今なんて言った。

そう思いながら俺は眉を顰める。

それからボッと赤面する。


は!?そ、その。

まさかと思うが...乙武さんの家にお呼ばれしているのか?俺!?

なんで!?


「ま、待って。乙武さん。俺は...」

「?」

「...い、いや。本当に今日は良いよ。...また今度...」

「駄目だよ。恩を返したいから」

「で、でも高島が...」

「今日はたっちゃんは部活。問題無いよ」

「でも君は...高島が好きなんだろ?!」

「そうだよ?」

「そうだよって...」


それで良いのか!?、と思いながら俺は彼女を見るが。

思いっきり引っ張られて行った。

いや待て。

本当に良いのかこれ!?

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