第3話 思い出

乙武さんの家に来た。

俺はまさかの展開に心臓をバクバクさせながら乙武さんをチラ見する。

そんな乙武さんは俺の視線を他所に「あっちがたっちゃんのお家」と人差し指を隣の家に向ける。

そこには確かに表札に高島と表札に書かれていた。


「...そっか。隣同士なんだね。本当に」

「そうそう。たっちゃんとは昔からお付き合いがあるんだ」

「それ...は?」

「うーん...難しいけど幼馴染だよ。それ以上でも...それ以下でも無いかな。今は」


そう言いながら乙武さんはニコッとする。

俺はその姿を見ながら「...」となりつつ乙武さんの家に入らせてもらう。

すると...乙武さんのご両親と思われる女性が。

恐ろしく美人だった。


右に一つだけ髪の毛を結っており垂らしている様な髪型をしている...20代?

じゃないよね?

美人だった。


「あら?高島くんかと思ったら」

「うん。お母さん。...この人だよ。...私を助けてくれた人」

「...あら...そうだったの。...初めまして。私、乙武希(おとたけのぞみ)って言います。娘を助けてくれて有難う御座いました。本当にその節は...」

「いや。俺はたまたま居合わせただけで...」

「...いや。それでも助けて下さった。本当に...有難う御座います」


希さんは泣き始めた。

俺は衝撃を受けながら慌てる。

それから見ていると乙武さんが俺にウインクした。

そして笑みを浮かべる。


「...私も。家族も感謝しているの」

「そうなんだね」

「うん。...君はもう少し自信を持って良いよあんな勇敢な事は滅多にできないと思うから」

「いやいや。それは...」


すると希さんが「立ち話も何ですから」とスリッパを用意した。

それから俺に笑みを浮かべる。

俺は頬を掻きながらスリッパを履く。

そして家の中に上がらせてもらう。



「在里くん。...貴方は何処にお住まいなの?」

「俺ですか?俺は...2丁目です」

「そうなんですね。じゃあ...」


希さんは完全なリア充だった。

あれこれ聞いてくる。

俺は慌てながら希さんに受け答えする。

すると奥の方からトイレに行った乙武さんが戻って来る。

それから俺に向いてきた。


「星羅。とても良い人じゃない」

「そうでしょ?アハハ」

「...」


俺はマイペースな感じの2人を見ながら紅茶を飲む。

今日は...清々しい気分になれそうだ。

そう思いながら俺はリビングを見渡す。

小さな女の子が写っている写真を見つけた。


「あ!そうだ!」

「?」

「星羅の小さい時の写真を見ませんか?」

「お、お母さん!?」

「せっかく見つけてくれたもの。ね?」


直ぐに乙武さんの小さな時の写真を取り出した希さん。

それから俺にニコニコしながら紹介してくる。

そこには2人の女の子。

うん?


「この子、実は双子なの。星座っていうのだけど別の学校に入学しているの」

「そうなんですね」

「そうだよ。えへへ」

「...」


乙武さんは何か嬉しそうに話をしてくれる。

そして俺は2人の運動会での写真。

テストで100点を取った時の写真。

卒業式、入学式の写真。

色々を見せてくれた。


「そうだ」

「...?」

「今度...君のお家に行っても良い?機会があったら」

「え!!!!?」


俺はギョッとして固まる。

すると乙武さんは「駄目?」とキュルンとした小動物の様に見てくる。

し、しかし。

あの部屋は色々なものが置いてある。

まあ片付ければ良いのかもしれないけど。


「...で、でも何で俺の家?」

「うん。興味があるから」

「興味って...」

「...色々とね。...何だか君にも興味が湧いているし」

「俺に?な、何で?」

「それは内緒。...だけど興味は湧いているから」


そしてウインクする乙武さん。

無茶苦茶に可愛い仕草だ。

俺はそんな姿に赤面してから頬を掻いた。

それから「...考えておきます」と返事をした。



そして乙武さんのお家で一服した後。

俺はそのまま帰宅の為に乙武さんの家の玄関まで向かう。

乙武さんが「彼をお見送りしてくるね」と笑顔になって希さんに言った。

俺達は家を出る。


「...今日は有難う」

「えっと...何もしてないよ。お呼ばれしただけだから」

「...君は不思議な人だね」

「不思議な人かなぁ...よく分からないよ」


乙武さんと一緒に薄暗い世界を歩く。

それから歩いていると乙武さんが「私...」と言った。

俺は?を浮かべながら彼女を見る。

彼女は俺を見上げてくる。


「...君はもう少し自信を持って。君に本当に助けられたから」

「そうだね...うん」

「...有難う。すっごく嬉しかった」


そして乙武さんはふわっという感じで俺に近づいて来る。

俺は?を浮かべながらその姿を見ていると。

だんだん近付いて来て俺に寄り添った。


「...ちょ」

「...私はあくまでたっちゃんが好きなので」

「え?!」

「...じゃあね」


乙武さんは俺から離れる。

それからそのまま駆け出して行った。

理由を聞く暇が無かったが。

どういう事だ...。

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ハイスペックイケメンが好きな乙武さん。だけど何か話しかける相手を俺と何故か間違っている アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou

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