第4話 案件配信で歌うあやね

 休日。楓は大輔と朝からPCの事を教えてもらっていた。今日の19時から

案件配信をするのでそれに向けての勉強をしていた。

大輔は超デジタル派で誰かに教える時は喜んで教えていた。

教えてもらっている時に案件以外でもコラボをしようと誘われた。しかも

歌枠でだ。大輔は歌うより楽器を演奏している配信をしている。それもギターでは

なくシンセサイザーを使ってのだ。だから大輔が演奏し楓が歌うというスタイルを

したいらしい。


「本当になんでもできるんですね木村先輩」

「機械系でならね。他はあまりだよ。だからこの仕事は天職だよ。好きな事で

稼げるから」

「天職か。私もそう思いたいな」

「違うのか?お前は向いてると思うが」

「ありがとうございます。でも今はまだあまり自身がなくて」

「まぁ若い学生だから。だから今はそれでいいぞ。もっと経験をつめばいつか

自身がつく。だからそれまでは諦めるなよ。失敗してもいいからな」

「先輩」


 失敗してもと言われるとあの事を思い出してしまう。会社の誰にも自分の事を

話していないので失敗してもいいと言われるが今の楓には少しダメージを

受ける言葉だった。そうして時間まで打ち合わせをしていよいよ初めての案件配信を

する時間になった。いつも通りのあいさつで今日は案件だという事を伝えその後に

大輔を紹介した。誰かとコラボするかもというのは少し言っていてそれがリスナーの

間では誰だという話題になった。でもこういう案件の場合は大体大輔が来るので

9割は正解していた。


 順調に紹介をしていき、この為に勉強をしたから何でも聞いてと言うとコメントの

流れが速くなる。多少は答えるがわからないときは大輔に交代する。そういう

やりとりもリスナーは他で見てるので突っ込みコメントが増える。たまにきついのを

見たりするが大輔がすぐにそれを察しして話題を変えたり笑いに変えたりする。


 二時間程が経過して終わりが近くになってきた頃に大輔が演奏をするコーナーに

なる。あやねはもちろん見たい事あるが生で聞くのは初めてだ。

その演奏はプロ級で実際に大輔はメジャーデビューもしている。なのでその演奏の

時間になると視聴者はさらに増えてきて同接20万を超えだした。一曲終わると

大輔が急にあやねに歌ってくれと頼んだ。そんな事は打ち合わせにはなかったが

大輔の演奏を聴いて楽しそうだと思いすぐに承諾し、大輔はNOのテーマ曲とも

なっているのを演奏し始めた。もちろんあやねもそれは歌えるので安心した。


 あやねの歌は視聴者を呼び30万を超えた。そうして歌も終わり改めて二人は

同接が多い事に気づいた。あやねの普段の配信は多くて1万なので驚いているが

感謝はわすれずしっかりとお礼を伝える。時間になり二人の案件配信は無事に

終了し、その事はすぐにトレンドになった。


「やっぱりあいつ歌がおまいな。それにあの子と同じだ。これは確定かな?」


 大輔はうすうす気づいていた。あやねがあの元アイドルであるという事に。他の

ライバーやリスナーも確信はないが、大輔は確信に変わっていた。

楓はすぐに見返して改めて大輔の人気を知った。登録者もそうだが何より演奏が

うまいのに驚いた。


「やっぱりすごかったな。あれならメジャーにもなるよ。しかも最初からこっち

でならそこまで何かを心配する事もないだろうし。私は最初の選択が間違い

だったのか」


 楓はアイドル時代の事を思い出していた。デビューした時はそれこそ国民的アイドルとも言われるぐらいではあった。歌も新人とは思えない程で将来も安泰だと周り

から言われていた。でもあの事が起きてしまい。それから一瞬で回りが離れ自分にも

被害が及ぶ影響を出してしまった。


 それがあって引き持ってしまったが、その時にVtuberを改めて知りこの世界に

入ってきた。何かあったら相談してくれと大輔にも言われたりしてるのでそこは

安心していた。しかも会社の人もいい人が多く、収録の時はいつも優しく接して

くれたりもする。そんな良い会社に翌日向かった時、楓は呼び出された。


 そこは一度入った事ある部屋でそれは面接をした所だった。今は普通に入れるが

当時は緊張しながら入ったのでよく部屋を見ていなかったが以外と広かった。

楓はそこで待ってるように言われて席に座って待っていると誰かが部屋にやってきた。それはスタッフの人とどこかで見た事ある人がやってきた。楓はそれにすぐに

気づいて席を立った。


「お、おはようございます。社長」

「おはよう。直接会うのは初めてだね。社長の氷室賢一(ひむろけんいち)だ」

「あらた、えっとあらたあやねです」

「そんな緊張しなくてもいいから座りなさい」

「は、はい」


 やってきたのこのNWOを作った若い社長の氷室賢一だ。社長だが、彼は

率先してメディアに出てたり、ライバーの配信にも度々出たりして面白い

社長として人気である。ライバーやリスナーからも尊敬を込めてヒムと

呼ばれている。そんな社長が楓に会いに来たのは昨日の配信の話をする為に

会いに来たようだ。

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