第2話 楓の日常

 二年三組。ここに楓は居る。クラスメイトの大半が何かしらの配信をしたり見たりしていている。だから常にどこでもどんな配信を見たとかの話題になる。

楓はなるべく自分の事がバレないようにしているのであまり誰かと話さない。

それでも、クラスに一人はいる明るい性格の子に話しかけられる事がある。


「時任さん。昨日の配信見た?」

「えっと、なんの配信?」

「NO(えぬおー)の新人紹介の企画だよ」

「それ私も見た!私はやっぱりあおやま君だな」


 別の女子が入ってきた。話題の話になるとやはり話に入りたくなるのが

普通だが楓はなるべく自分から話さないようにしていた。聞かれたら答える

ぐらいにしていた。


「時任さんは誰か推しの人はいるの?」

「えっと、司会をしてたさくやさんかな」

「定番だね。でも彼女がNOを大きくしたからわかるな」

「うん。歌ってる時なんてかっこいいもんね」


 休み時間はほぼこんな話をしているのが学生だ。放課後になると皆すぐには帰らず

スマホで動画を見たり、ある者は撮影したりしている。ただ学生が動画で収益を

得るには当然親の承諾が必要だ。楓はもちろんしているのでもらっている。他の

生徒も今は親から応援される方が多いのでそこは心配ない。でも、今では多くの

ライバーがいるので競争率は激しい。


 特に個人勢は大半が途中で挫折をしてしまう。成功するのは一握りで成功したら

そこからは最後まで続けていける。

下校中。楓は電車で数駅先まで生き下りて徒歩で20分ぐらいで家に戻る。

その間に自分の配信の事を考える。ほぼ毎日する仕事なので何をするのか

考えるのも大変な事だ。だから続けるのが難しいとされていた。


「今日はこのゲームか。初めてだしうまくできるかな」


 楓はゲームはあまりうまくない。企業に入る前は歌枠でやっていたので

自身がなかった。そうして配信を始めてやっぱり序盤でもつまずいてしまうが

楓、あやねのリスナーは意外と優しいので頑張れとか励ましてくれる。そこに

たまにだが別のライバーがコメントしてくれることもある。この時も他の

ライバーが来てくれた。来てくれたのは同じあおやまかいだった。


「苦戦してるな」

「悪かったわね。アクション苦手なんだもん」

「それは簡単な方の奴だぞ。まぁゲームしてないとどれでも難しいけどな」

「あおがやってみせてよ」

「無理に決まってるだろ。最初ぐらい自分だけでやってみろ。失敗しない

奴なんていないんだからな」

「わかったわよ」


 あおやまに励まされながらプレイしていくあやね。あおやまが来てリスナーも

より応援してくれてる。あおやまは少し口調が冷たい感じだが根は優しく仲間

思いなのであやね達のまとめ役にもなっている。スターシンガーの中で一番人気だ。

それから苦戦すること3時間。ようやく終盤まで来たので今日はここまでに

することにした。明日クリアをしてリスナー達と雑談をする。これが今のあやねの

スタイルだ。


 配信スケジュールは金曜日を休みにしている。土日に長時間やるのが今のライバー達の主流なので楓もそうしている。特に学生は土日でするのが多い。

その休日の時も配信の準備は済ませてからゆっくりするようにしている。

楓の休日はだいたいが部屋で音楽を聴いているか、一人でカラオケに行くかだ。

この日は久しぶりにカラオケに行くことにした。


 出かけるときは変装をする。サングラスと帽子、と言ってもいかにもな恰好だと

逆に怪しまれるのでおしゃれな感じのにしている。それでもたまに声をかけられ

たりすることがある。今でもまだ楓のファンはいるからだ。復活を願う声もネットは

多く、そのせいであやねが楓じゃないかと噂される。


「とりあえず部屋に入れてよかった。やっぱりまだ声はかけられるな。その人達には

本当に申し訳ないけど、私はVtuberとして生きてくんだ」


 歌の練習を数時間する。それから家に帰ろうと思ったがとあるライバーから

連絡が来てよかったら会社に来てと言われたので楓は向かおう事にした。

NWOの会社は高層ビルの中にある。大手企業ともなるとそういう所にありがちだ。

だから今でも入るたびに緊張する。受付の人には認識されるので簡単に入れるが

他の人からみれば子供が入ってるので不思議に見られていた。


 指定された場所に行くとそこには他のライバー達もいた。


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