第35話 色々と終わったならゴロゴロしたい

祐二が煽られたり、祐二がその喧嘩に乗ったり、挙句に公共の面前で愛を叫んだり。


そのような波乱の体育祭を終えた祐二と由美は、祐二の部屋で寛いでいた。


運動しない組の由美と、運動はできるが混沌に包まれ、疲労した祐二。

精神的と体力的に疲労した二人にとって、その翌日に動く事は不可能に近かったのだ。


「だりぃっす」


「私もダルいよ。あんな事があったらしょうがいって。まあ、それを起こしたのは祐二くんだけど」


「さーせん」


「別に怒ってないって」


気怠いながらも、朝食を作り、食べ終えた二人は、冷たいお茶を飲みながら会話をする。


「どうしよっかなぁ……三連休」


「うぐっ」


体育祭が終わった直後に丁度よく三連休が噛み合っているのだが……二人にはそれをどうしようかという予定がなかった。


普段なら買い物に行ったり、たまに別々の趣味に行ったり、娯楽の施設に行ったり…。


そうして予定を立てている祐二達であるが、今回ばかりは違う。


目の前の体育祭へと夢中になり、その後先の事が考えれていなかったのだ。


いや……全く考えていなかったという説明では不足となってしまうが、今の体力的に元々提案していたモノを実行できなかった。


つまり、二人にとってこの三連休は、やる事が何も決まっていない空虚な休みなのだ。


それはまずいと認識してはいるが、今から何かするのも気怠いという無限ループに陥っている。


「ねぇ、祐二くん。ちょっとぶっちゃけた事言って良い?」


「ん?良いぞ」


「じゃあ言うね。今から何か行動しようと提案しても、今の私達じゃ「頑張ろー」って言いながら自堕落に生活すると思うんだよね」


「おいこらぶっちゃけ過ぎだぞ」


「だってぶっちゃけるって言いましたしー」


由美の言葉に返答を寄せる祐二であるが、正直に言ってしまえば、心境としては由美の言っている通りになるだろう。


何かしようとしても、動こうと宣言した矢先にダラダラと過ごす未来が見えている。

波乱の体育祭の影響が、想定していたよりも大きく心身の疲労を齎しているようだった。


「はい、ではイチャイチャしましょう。多分今日できるのそれぐらいしかないもんねー」


「えぇっと、祐二くん。果たしてそれはどちらが攻めなのでしょうか」


「うーん?俺はただイチャイチャできればそれで良いかなって思ってるからさ。どっちもが攻めで良くない?」


「はい嘘ォ!祐二くんはねぇ、そう言ってから私を攻めるのが何回あった事か。数えきれないほどだよ……」


「えぇ……そんなつもり更々ないんだが」


攻めようと余って攻めた事はあまりなく、大体が予想外の反撃喰らってダウンをしているだけなのだが。


それで不満げな視線を寄せられるのは、少し不本意に感じてしまう。


だが……不本意の感情を表に出す事はしない。

その心のままに行動し、証明したとしても、由美が顔を向けれなくなってしまう。


「うぐぐ……そうかなぁ、そうなのかなぁ…」


「そうだぞ。俺は積極的に接したのなんて……あ、ごめん。全然あった」


「ちょっとー!?祐二くん、サラッと嘘つかないで欲しいなぁ!」


想定外の発言によって頬を膨らませる由美に対して苦笑いをしつつ、忘れていた己の脳を恥じる。


「ごめんごめん。悪かったと思っております」


「本当ですかー?本当に悪いと思っているのなら、誠意を示してくださーい」


「ハグでよろしいですか?」


「うむむ…とりあえずはそれで満足しておいてあげます」


口では渋々頷いているように見せているが、言葉にこもっている感情は嬉々が多々存在していた。


鼻歌で上機嫌のハーモニーを奏でつつ、由美は胸の中に頭を衝突させる。

軽い衝撃に驚きながらも、届く範囲にある黒髪の頭を撫でる。


その行動をキッカケとし、甘えた行動を更にエスカレートしていく。

服を掴みながら擦り寄ってくるその姿……懐いている動物を思わせる行動は、普段の心臓のビートを底上げさせるには充分だったと言えるだろう。


気のせいか、事実か。人を蕩けさせる甘い匂いも漂っているのがより上昇させた。


何回もしている交わりイチャつきであれど、破壊的な魅力に抗う術を見つけるにはあまりにも少なかった。


下唇を噛み、暴れ出す心臓を顔に出さないように抑えているが、あまりにも無力。

胸の近くにいる由美にとって、心臓の鼓動を把握するなど、あまりにも容易い行為に他ならない。


通常よりも大きく、早く高鳴る鼓動に対して妖美な笑みを浮かびつつ、胸にキスを落とす。

ここまで鼓動を変化させたのは自分の力だ、と言わんばかりに。鼓動すらも自分のモノだと独占欲を見せるように。


由美は桃色を付けた。


「ちょっと……本当に…もう…」


「どうしたのさー。言葉は出てるけど、言いたい事はずーっとに伝わないよー?」


全て軽度の交わりしかしていない……そう由美の顔が物語っているが、祐二個人としては、それが混ざり合えば大きなモノとなるのを理解して欲しいところである。


「…むり」


「ふふっ、無理になっちゃったか。まあ、しょうがないよね。祐二くんって、軽度の組み合わせ、すぐにのぼせ上っちゃうもんね」


「…少しムカつくな」


「じゃあ攻守逆転するー?」


「ごめんけど、ノーって言える状況じゃないからね?」


「好きにすれば良いと思うよ。私は祐二くんに委ねるからさ」

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