第8話 モグモグパクパクタイムのデート中お二組

「しっかし、お前らとは会うとはな。確かにお前ら二人にはデートをするとは言っていたが、内部までは言ってないぞ。……ストーキングでもしたか?」


「ひっでぇ誤解!俺と理亜はそんなつもりで水族館に来てる訳じゃねえよ。元々この日にデートするのは予定として組み込んでいたし、水族館に行くのも理亜が好きだからだ。他意はない!」


「だろうな。お前ら二人、そういう性格じゃないのは知っている」


水族館から抜け出し、目的のレストランで食事を食べつつ、裕二と陸はそんな会話をする。

あまりの偶然にどんな運命だ、とツッコミたくなってしまう。

この県が幾数も持っている市区町村の中で、ピンポイントでデートする箇所が合わさっているのだから。

裕二や由美が通っている高校からは離しているので、なおさら。


陸や理亜が相手でなければ、ストーキングを疑っているところだった。


「しかしながら、めっちゃイチャイチャしてたよね。裕二と金城さん。見ている方が胸焼けする程のイチャイチャ具合だったよ。学校で普段からイチャイチャしてる私達が言えた内容ではないけどさ、もう少し抑えたらー?公共の場なんだよ?」


「「まことに申し訳ありません」」


非常に残念な事に、裕二と由美に"イチャイチャをしていた"という実感はない。

しかし、普段から相方とイチャイチャしている理亜が「もうちょっと抑えて」と言ったのだ。己らの会話は、普通の"イチャイチャ"を容易に帰るのは想像に難くない。


即謝罪の言葉を出した二人に、理亜は呆れとため息を吐く。

反省の色が感じられるが、具体的に何なのかが分かっていないのだ。意識はしてくれるだろうが、周りが胸焼けする現実は変わらないだろう。

その現状に、ため息を吐いたのだ。


「というかさ、祐二と金城さんってどんな関係なの?プライベートでも色々関わりはあるみたいだし、金城さんは祐二に甘えてるし、祐二もそれを甘やかしてるし」


「前から言ってるだろ。俺と金城はただの友達だ」


「ごめん。全然全くそうは思えない」


否定をした上からの否定。陸が自分の意見を絶対だと思いがちなタイプではないと思っていた為、ここまでの否定は珍しい。

それ程、祐二と由美の関係が側から見れば特殊なモノだと感じれるのだろう。

その突きつけられた事実、祐二はそれに唸るしかない。そこまで邪推をされてしまうのなら、どうすれば良いのだ、と。


そして、様々な思考を巡らせてから一つの考えが指す。

そう、ようやく気がついたのだ。友人というのは、デロデロに甘やかしたりするものではないと。

しかし、しかしだ。甘やかすのをやめたとして、皺寄せが来るのは由美である。甘やかすのをやめたら料理ができない由美が一気に困り始める。

それは不健康な生活に逆戻りのイコールでもあった。


もはや思考の類が子を心配するお母さんである。


「あぁ、ようやく分かった。なんか微妙な違和感あったんだよなー」


「りっくん?それってどういう事?」


「妙に恋人っぽいけど、明確に恋人じゃない要素があった、それが分からなくて引っかかってたんだ。祐二、お前金城さんの事…妹みたいに思ってるだろ。完璧な妹じゃなくて、ちょっと異性を感じてもいる。そんな手のかかる身近な人」


「あー、確かに」


「そりゃ照れもするけど、イチャイチャに気づかない訳だ。妹とただの戯れあいをしているだけなんだからな。それを指摘しようもんなら、変態紳士に認定させてしまう」


色々とややこしい現状に愚痴を吐いている陸に対して、祐二は静かに頷きで返す。

自分がその事の中心人物である事はマグマの中にでも放り投げておくとしよう。


「さてと、課題はできたという訳で」


「え、なになに。私を妹みたいに思ってる雨宮裕二さんの課題は何なんですか…?」


「ちょっと嫌な予感するけど聞こう」


「妹じゃなくて友達として見る事。そして一方方向で甘やかされるんじゃなくて、金城も俺を甘やかすのを覚える事」


「えぇ!?それ私の課題も入ってない!?」


元々友達になる為のデートである為、友達として見る事は大前提。

由美が裕二を甘やかせるようにする、というのは「できたら良いな」レベルの追加項目である。

裕二も努力するつもりであるが、そのレベルへと届くのは遠くになるかもしれない。


そんな思考を抱えつつ、由美に体を揺らされている祐二は呆れの目で隣を見る。

友達となるのが目的で開いたデートなのだから、少し協力してもらいたいと考えてしまうのだ。

そこで一つの「待て」が思考に入り込む。何も聞かず課題を作ったのがまずかったのではないかと。


その答えに祐二は頷き、二人の為の課題を作る覚悟が灯った。


「ぇ、いや、そういうのじゃ…うん、もうそれで良いよ。二人で頑張って課題を作ろ」


由美は祐二の言葉に一度の動揺を見せ、二度目はしょうがないなと割り切り、言葉に乗る。

大部分で言えば裕二が親のように映るかもしれないが、現実は大して変わらないのかもしれない。





「カップルになるのは近いうちかな」


「かな〜」


そんな二人を見て!未来を予言する二人がいたらしい。

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