第4話

『いいのか、いつも彼氏と過ごしてるだろ』


「…どうしよう、別れたって言うと心配させちゃうかな」


何しろ理由が理由なのでメッセージだけで伝え切れるか。それに朔夜は一人っ子で、家族と折り合いが悪いせいか陽毬達を本当の家族のように思ってくれている。彼にとって陽毬は妹も同然。


元カレと別れた理由を、当時関東の大学に通ってた朔夜に兄がうっかり話してしまい彼が怒って電話をかけてきて大変だったことを思い出す。


別に二股をかけられたわけでないし、むしろ元カレは誠実に対応してくれたと陽毬が電話で説得してどうにか宥めたくらいだ。


今不用意に伝えてしまうと、朔夜がどう出るか想像出来ない。


「適当な理由つけよう。えーと、龍司は友達と旅行に行くって言ってたから、私も久しぶりに実家で年越そうと思って…」


すぐに既読がつき返事が来る。


『旅行?珍しいな、ずっと年末年始陽毬と過ごしてたのに』


『偶には友達と羽を伸ばしたいってさ』


『今まで陽毬を付き合わせておいて、自分に用事が出来たらあっさりと辞めるんだな』


「な、なんか怒ってる?」


文字だけなのに、朔夜が怒ってるのが伝わってくるのは気のせいだろうか。


だがすぐに朔夜から「まあいいや、光やおばさん達も喜ぶだろうな。陽毬と年越せるの久しぶりだから」と返事が来て、気のせいだったとホッとした。


朔夜の会社も確か28、29あたりから休みだだった気がする。もしかしたら、同じ新幹線に乗って地元に帰るということもあり得るかもしれない。


(流石にそれはないか)


朔夜は実家には顔を出す程度しか立ち寄らず殆ど陽毬の実家で年末年始は過ごしている。実家より陽毬の実家にいる時間の方が絶対に圧倒的に多い。何なら彼が泊まる部屋も用意されている。


それも彼の事情を知っていれば仕方ないことなのだが。


(朔兄に会うの久しぶりだな)

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