第3話

ふと、陽毬は目を覚ます。


どうやら帰ってきた服のまま寝てしまっていたようだ。着ていたワンピースが少し皺になり、つい目を擦ると指にマスカラが付いている。


「…取り敢えずお風呂かな」


ベッドから降り、洗面所に向かう前に床に放り投げたバッグからスマホを取り出す。きっかけとなった由美に事の顛末を伝えることと、あの2人の連絡先をブロックするためだ。龍二はともかく、佳奈は部署が違うが同じ会社。否応なく顔を合わせる機会があるだろうけど、プライベートでのメッセージのやり取りはしたくない。


スマホをタップすると、ある人物からメッセージが届いている。


「朔兄から…珍しい」


朔兄…戸塚朔夜とつかさくやは4つ上の28で兄の親友。兄の光が家に連れてきたことから妹である陽毬とも親しい間柄。


地元の大学に進学し、そのまま就職した兄と大学からずっと関東の朔夜は今でも仲が良く、出張や休みで兄がこっちに来た時や帰省した時3人で良く会っていた。


陽毬が関東の大学に進学した際は色々と気にかけてくれた、もう1人の兄のような存在。龍司と交際するようになってからは朔夜と2人きりで会うことは避けていたが、時折こちらを心配してメッセージを送ってくれる。


「えーと…今年も年末は帰省しないのか?」


龍司は年越しを陽毬と過ごしたがり、陽毬も同じ気持ちだったので実家へ帰るのは年明けに数日だけになっていた。その分大学時代は夏休みや春休みは長く帰っているので大目に見てもらってた。


「そうか、もう年末こっちにいる必要ないんだ」


龍司とは、さっき終わった。彼と過ごすことはもうあり得ない。


『今年は帰るよ、多分28日から』


陽毬の勤務する印刷会社はカレンダー通りの休みで年末年始は12/28から1/4まで休みだ。久しぶりに年末年始実家で過ごせるのだから、特に予定もないので休み一杯滞在しようと思う。


すぐさま朔夜から返信が来る。

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