ギャルゲーのモブキャラに転生した俺は覚えてない間にヒロイン達を攻略していたらしい〜主人公がヒロイン達を不幸にするので、代わりに俺が幸せにしようと思います〜
第36話 主人公がヒロイン達を不幸にするので、代わりに俺が幸せにしようと思います
第36話 主人公がヒロイン達を不幸にするので、代わりに俺が幸せにしようと思います
あの後、御影さんと水瀬さんから佐藤とそれぞれ何があったのかを聞いた。
佐藤のことを話している時の二人は、ずっと暗い表情をしていた。
「そ、そんなことが……」
話を聞き終えて、古賀さんは絶句している。
「水瀬さん、御影さん。話してくれてありがとう」
「私にお礼を言われる権利なんてないよ。今の話をもっと早く共有していたら、さっき言ったように篠宮さんが辛い思いをせずに済んだかもしれなかったんだから」
「いいえ、御影さんが責任を感じる必要はないわ。あなたはなにも悪くないもの」
「そ、そうですよ」
古賀さんが篠宮さんに同意する。
「む、無関係な私にこんなこと言う権利は無いかもしれませんが、でも私も御影さんは悪くないと思います」
無関係な第三者だからこそ、古賀さんは公平に判断して御影さんに非が無いと断言したのだ。
そう……御影さんは何も悪くない。
悪いのは佐藤と……そして、俺だ。
原作ストーリーと、まったく違う展開が起こっていることには気付いていた。
けど、たとえ過程が違ってもきっと結末だけは……主人公がヒロイン達を幸せにするハッピーエンドだけはきっと変わらないと、俺は思ってしまっていたのだ。
だってここはゲームの世界であって、そして佐藤が主人公で三人がヒロインという設定なのだから。
でも、それが間違いだった……勘違いだった。
そのせいで、三人にこんな辛い思いをさせてしまった。
もっと早く気付けたはずだった。
佐藤の異変に……本性に。
でも俺は、自分はモブキャラだからと一歩引いて、佐藤と三人のやりとりにも我関せずなスタンスをとっていた。
ちゃんと注意していれば、ここまで事態が悪化する前に防げたはずだったのに。
「……ごめん」
皆が驚いて俺の方を見た。
「どうして、千歳君が謝るんですか?」
「そうだよ、千歳君は何も悪くないよ」
「そうね。むしろ、私と御影さんを助けてくれたのだからお礼を言われるべき立場よ」
「わ、私もそう思います」
俺に非は無い、俺は悪くない、俺に責任は無いと四人は言ってくれた。
けど俺は自分を許せなかった。
そしてきっと、俺はこんな状況を招いた一因である自分をこの先も許せないだろう。
でも……後悔してるだけじゃ何も変わらない。
もう終わったこと……なんて開き直るつもりは勿論ない。
けど、過去を振り返って後悔し続けることよりも、これから先どうしていくのかを考えるべきだ。
過去は変えられないが、未来はまだ変えられるのだから。
まず、佐藤から古賀さんを含めた四人を守るのは絶対だ。
実は少し前に、佐藤から視線を感じることがあると古賀さんに言われたことがあった。
あの時は、おそらく気のせいだと古賀さん自身が結論付けていたが、それでも用心しておくに越したことはない。
そのためにも、佐藤の動向には注意しないとな。
それと、原作ストーリーやキャラ設定のことはもう気にしない。
原作ストーリーだと主人公がヒロイン達を幸せにするが、そんな固定概念はもう意味を成さないと痛いほど思い知ったからな。
……でも、彼女達のハッピーエンドだけは、やっぱりどうしても諦めきれない。
辛い思いをしていたとこうして知ったからこそ、皆には幸せになってほしいとより一層強く思ったのだ。
けど、佐藤に彼女達を幸せにできるとは思わないし、それに期待もしていない。
では、他に誰が……
その答えは、すぐに出た。
「……皆。今後、佐藤と人気の無い場所で会うのは控えた方が良い。特に、二人きりでの誘いなんかは絶対に断るべきだ。後、もしも何かあった時は真っ先に俺に知らせてほしい。いつどこにいても、必ず助けに行くから」
四人は頷いた。
それから古賀さんは既に交換済みなので、他の三人と連絡先を交換する。
これで、もしもの場合はすぐに俺に連絡がいく。
そうならないことを祈るばかりだが。
「それと……もし予定が無かったら今週末、皆で遊びにでも行かない?」
「「「「えっ」」」」
突然の誘いに四人が驚く。
まぁ、当然だよな。
「私は大丈夫だよ」
「私も大丈夫です」
「私も特に予定はないから構わないわ」
「わ、私も大丈夫ですけど……でも、どうして突然?」
古賀さんの疑問はもっともだ。
他の三人も同じことを思ったはず。
暗い雰囲気が嫌だったから明るい話題を出した……それも理由の一つだった。
でも、一番の理由は……
俺は一度息を吐いてから……告げる。
「それは……皆ともっと一緒の時間を過ごして、皆のことをより知りたいから。そして、仲を深めたいからだよ」
「「「「っ」」」」
この状況を招いた責任が俺にはある……だったら、その責任をとらないといけない。
なら、彼女達が不幸にされた責任として、俺が責任をもって皆を幸せにするのだ。
主人公がヒロイン達を不幸にしたのだから、モブがヒロイン達を幸せにしても文句はないだろう。
その為には、まずは仲を深めるとことから始めないと。
そしてこの時、本人は自覚していなかったが、先ほどの発言は告白と捉えられても仕方ない言葉であり、そんなことを突然言われたので四人は赤面するのだった。
しかし、恋する乙女達にとっては、それはむしろ願ったり叶ったり。
断る理由なんて勿論無い。
「「「「……はい」」」」
その直後、予鈴が鳴り響いたので俺達は教室へ戻る。
その途中、笑顔を浮かべている四人を見て、俺は自分の選択が間違っていなかったと確信したのだった。
◇◆◇◆◇
【佐藤悠斗視点】
やばい、やばい……どうしようっ!
教室に戻った後、冷静になった俺は先ほどの出来事を思い出して……後悔の念に駆られていた。
しかし、後悔してももう遅い……遅すぎるということを、俺は今後、嫌というほど思い知らされることになるのだった。
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