第13話 告白
【古賀春華視点】
正直、こんな日が来るなんて思ってもみませんでした。
これまで、お友達もできなかった私が。
少し前に、ようやく念願叶って初めてのお友達ができたばかりの私が。
「古賀さん。僕と付き合ってくれませんか?」
────告白される日が来るなんて。
……時は、少し前に遡ります。
「古賀さん。少しだけ時間貰えないかな?話したいことがあって……」
お昼休み。
千歳君とお昼を食べ終えて教室に戻っている途中、とある男子生徒にそう声を掛けられました。
上級生の鈴木涼太さん。
クラスメイトの子がよく話題に出していたのを耳にしたことがあったので、私はこの方の事を少しですが知っています。
なんでも、バスケ部のエースで成績優秀でもある文武両道な方とのことです。
「え、えっと……わ、わかりました」
「ありがとう」
その後、私達は校舎裏へとやって来ました。
生徒達の喧騒が校舎から微かに聞こえてきます。
「ごめんね。いきなり時間をとらせちゃって」
「い、いえ。そ、それで……お話とは?」
正直……何の話をされるのか皆目見当も付きません。
鈴木さんとはこれが初対面ですし。
それから鈴木さんは私の目を真っ直ぐ見て、真剣な面持ちでこう紡ぐのでした。
「古賀さん。僕と付き合ってくれませんか?」
「…………えっ」
告白をされたのだと認識するのに、少し時間が掛かりました。
だって、告白された事なんてこれまでありませんでしたし、される日が来るなんて思ってもみませんでしたから。
「初対面なのにいきなり告白されたら驚くに決まってるよね」
もちろんそれも驚いた理由の一つでした。
「実は僕、古賀さんに一目惚れしたんだ」
えっ!?
その告白を聞いて、私は心の中で再び驚きます。
「話したこともまともにないのに突然告白して、古賀さんを困らませてしまって申し訳ないって思ってる。でも、どうしても伝えたかったんだ」
「……」
鈴木さんは無言で私を見て……私の返事を待っている。
告白されるなんて夢にも思ってみなかった。
だから告白された時はとても驚いた。
でも、返事をする時の私は……驚くほど落ち着いていた。
「ごめんなさい」
私は今の……千歳君と一緒にいる時間がとても幸せで、とても好きです。
かけがえのない時間だと思っています。
だから私は、この時間を手放したくない……変えなくない……まだ終わらせたくない。
今の私にとって、千歳君との時間がなによりも大切。
それを自覚しているので、私の答えは既に決まっていました。
「……そっか。やっぱり断られちゃったか」
「その……本当にごめんなさい」
「一応理由を……ううん、やっぱり大丈夫。それじゃあ……」
そして、鈴木さんは校舎へ戻って行きました。
鈴木さんの姿が見えなくなった後、気が抜けた私は大きく息を吐きます。
「はぁ……き、緊張したぁ……」
でもきっと、告白するのはもっと緊張するのだろう。
今ですらこれまでの人生の中で一番緊張してるのに、これ以上に緊張するなんて……どうやら私に告白は難しそうです。
告白する自分の姿も、その相手の方の姿もまるで想像つきませ──
「……えっ」
不意に、なぜか千歳君のことが頭に浮かび。
刹那、私の心臓は突然早鐘を打ち始めます。
ど、どうして……
その直後、授業開始5分前を告げる予鈴が鳴り響きました。
「あっ……急がないと次の授業に遅刻しちゃう」
思考を中断して、急いで教室へ戻ることに。
その後、先程の出来事について考えることはありませんでした。
……いえ、もしかしたら考えることを無意識に避けていたのかもしれません。
だって、気付いてしまったら……自覚してしまったら……
でもそれも時間の問題であることを、この時の私は知らないのでした。
◇◆◇◆◇
【千歳和樹視点】
「篠宮さん。今回も参加させてくれてありがとう」
放課後。
俺は再び篠宮さんの勉強会に参加していた。
勿論、古賀さんも一緒だ。
「むしろ、参加してくれてありがとうって私の方が言うべき立場なのだけれどね」
そう言って、篠宮さんは他の生徒の様子を見に行く。
隣に座っている古賀さんに声をかける。
「古賀さん。分からない問題があったら、前みたいにいつでも聞いていいからさ」
「はい、ありがとうございます。でも、まずは出来るところまで自分の力で頑張ってみます。本当に分からない時に、千歳君にお願いしようと思います」
「わかった」
その後、間も無くして勉強会が始まる。
ただ、前回の勉強会と違う点があった。
それは、参加している生徒が数名増えていることと。
「それじゃあ……今日もよろしくね、悠斗」
その中に、ヒロインの一人──御影夏美がいることである。
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