三章 テキストの比較分析

 ここでは、テキストの比較分析を行う。比較するにあたり、以下の項目を定義し、比較する。


▼地の文、使われている言葉・表現

 地の文は、会話文以外の文章を指し、その中でも特に人称について注目する。また、東の指摘する「キャラクターの属性」という観点もここで分析する。キャラクターの属性とは、主に服飾や髪・肌・瞳の色、体型などといった外見や性格などについての描写についてであり、それに注目する。使われている言葉・表現は、会話と地の文の区別に問わず、使われている言葉や表現の特徴を指す。また振り仮名の有無にも注目する。


▼心理描写

 主に地の文において、登場人物の心理描写を表現している物を指す。特にわかりやすい物として、喜び・怒り・諦め・困惑・の感情を記している物を引用している。


▼終わり方

 作品のエンディングを指す。複数の解釈ができるかどうかといった複雑性、続編に繋がるか(続編があるとなった場合に、繋がりやすいか)どうかを確認する。


 地の文の項目において、人称に注目した理由は、違いが一番わかりやすいという理由である。また、東の指摘する「属性」とは以下のような物である。『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』でも引用されていた『涼宮ハルヒの憂鬱』(谷川流 角川書店 二〇〇三年)から具体例となる記述を引用する。


 長くて真っ直ぐな黒い髪にカチューシャつけて、(中略)この上なく整った目鼻立ち、意志の強そうな大きくて黒い目を異常に長いまつげが縁取り、淡桃色の唇を固く引き結んだ女。


 白い肌に感情の欠落した顔、(中略)いわゆる神秘的な無表情系


 小柄である。ついでに童顔である。なるほど、下手をすれば小学生と間違ってしまいそうでもあった。(中略)光る玉の付いたステッキでも持たせたらたちどころに魔女っ娘にでも変身しそう


 これらのような「登場人物を示す為の記述」が東の言う「属性」である。これがライトノベルであることの指標であると仮定し、一つのキャラクターに付与された属性の数や性質を見ていく。

 なお、地の文においては、作品の記法(記号の使い方や振り仮名など)をそのまま引用する。ライトノベルが中学から高校生に向けた作品であるならば、難しい漢字を使わざるを得ない場合、振り仮名が振られていられると考えられるからだ。さらに、先の項目で


 ここで取り上げる作品は、ライトノベルは電撃小説大賞での大賞受賞作品と宝島社が毎年刊行している『このライトノベルがすごい!』の最新版である『このライトノベルがすごい!2022』(宝島社 二〇二二年)において、総合ランキング一位を獲得した作品であり、大衆文学は選定したライトノベルの初版刊行年と同じ年の直木三十五賞(以下、直木賞と記述する)の上下期受賞作である。これは、どちらについても、万人が「これはライトノベル/大衆文学である」と納得するためには「そのジャンルにおける賞」を受賞した作品を選択すれば問題ないと考えたからである。『このライトノベルがすごい!』については、先行研究において作品リストを作成する際の資料として用いられていること、出版社、つまりライトノベルの生産者側から提示されているものであることから、使用について問題ないと判断した。また、児童文学については、日本大百科全書や広辞苑での字義を確認し、本論では「小学校低学年から中学生までを対象とする文学作品」であるとした。そして、日本児童図書出版協会公式ホームページにある検索機能を用いて選定を行った。検索条件は以下に記す通りである。


ジャンル(NDC)大分類:文学

   中分類:日本文学

対象読者     :小学校低学年から中学生


 本論においてライトノベルから三作品、大衆文学から六作品になっているが、これは直木賞が上期と下期で一作品ごとの年二作品が受賞することに起因しているので問題ないと考える。また、ライトノベル及び大衆文学と同じ手法で児童文学を選定しようとしたが、ライトノベルと大衆文学で取り上げている作品と同年に刊行された作品が無いため、最新の作品から一作品、二十年程前の作品から一作品を選定した。

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