第45話:できればマアジのことも


「まぁどうせしないとは思っていたけどさ」


 で、一応の理解は得られたのか。首輪を外して、普通の雰囲気に戻ったルイは、俺の膝の上に座った。ちなみに俺はソファに座って、今コイツをどうしてくれようと思っている。ベビードール姿で男の膝の上に座ろうっていう、その根性が凄い。


「ありがと」


「何が?」


 何かしたか?


「誘拐されたボクを助けてくれたぞ」


「ああ」


 別にお礼を言われることをしたわけでもないんだが。


「あの時とってもカッコよかった。マアジが王子様に見えたぞ」


「照れる」


 実際にちょっと照れてみたり。


「あの時の。攫われた時の絶望は筆舌に尽くしがたいの。おそらくだけど、あの時抱いた恐怖と絶望は、それこそマアジでも想像できないほど深かった」


 それを俺が助けた。めでたしめでたしじゃないのか?


「ん……」


 で、俺の膝に座っているルイが、ちょっと顔を下げて、俺の唇に唇を重ねる。キスと呼ばれる行為。ついばむような軽くて深いキス。


「本当に嬉しかったの。ボクの王子様。ボクを救ってくれた星の王子様」


「まぁお前が困っていれば助けるって決めているからな」


「うん。わかってる。マアジは本当に打算なくボクを助けた。でもさ。それによって刺激されるボクの性欲については鑑みてないでしょ?」


「エッチ……したいのか?」


「超したい。マアジに抱かれたい。マアジのものでボクの身体を貫いてほしい。できればマアジがボクを独占して、そのコレクションに加えて欲しい」


 コレクションて。


「マアジにならいいよ? マアジの性欲の都合にしていい。むしろそれをボクは求めている」


「自己敗北性パーソナリティ障害?」


「まぁ偏に言って。そうだね。マアジ以外の男の人は全員キモオタ。ボクはマアジにだけ傅きたい。マアジに全裸土下座をして、その下げた頭を踏まれたい。踏みにじられたい」


「大丈夫か? お前。病院に行った方がいいのでは?」


「それだけの信用をマアジは得ているってこと」


「何もしてないんだが」


「してくれたよ。マアジはボクにしてくれた」


 だから首輪を嵌めて服従宣言をするというのは行き過ぎでは。


「タマモだって放尿プレイを提案するじゃん」


 あれはまぁ。病気だと俺も思っている。


「サヤカだって参戦してきて」


「だから言うて、俺の股間はそんな御大層なモノじゃないんだが」


 我が心明鏡止水。

 されどこの股間は烈火の如く。


「マアジ。大きくなってる」


 俺の膝に座っているルイが、その事に気付く。


「恥ずかしながら、俺も年相応の少年でな」


「さすってあげようか?」


「いや。ちょっとな。そういうのでは果てたりしない」


「鈍感だぞ?」


「鈍感……まぁ鈍くはあるな。だから示威行為をするのも一苦労だ。ソフトの側で補填しないと俺は果てることができないからな」


「ボクがくわえてあげるって言ったら容認する?」


「するわけないだろ」


「エッチな女の子は嫌い?」


 大好き!


「でもルイを抱くと、それはそれでなぁ」


「言っておくけどビッチじゃないからね? マアジの前ではメスブタってだけで」


 まぁその二つの距離がどれほどだって言われると俺も困るのだが。


「まぁマアジのも大きいから、どうにかしないとね」


「感度悪いんだよ。ミストルテインの影響かね」


「ボクはそういうの気にしないから。果てるまでボクのドミンゴ突き刺していいよ」


 チュ。チュ。チュ。


 子供のツバメが親のツバメにするように、俺の唇に突っつくようにキスをするルイ。そのキスの意味を俺が違うことはしないのだが。それでもルイのファンにとっては割腹モノだろう。まさかトップアイドル黒岩ルイが地味な男子に服従してメス奴隷に志願しているとは思うまい。


「だから黒くて悪いからボクの芸名は黒岩ルイ……だぞ?」


 知ってる。


「マアジはボクのこと嫌い?」


「大好きだ。好意的。惚れていると言ってもいい。ルイとタマモは俺を救ってくれた。だからお前らのどちらかを蔑ろにする行為は俺には出来ない。もういっそハーレム宣言すれば見限ってくれるか?」


「うーん。タマモのGカップを利用して、ついでにボクを抱いてくれるならタマモも触媒としては有益だと僕は思うぞ」


 何という上級者。


「嫉妬はそれはするよ。でもメス奴隷はご主人様の思惑には絶対肯定。嬲られることだけが寵愛の証だと、ボクはそう受け止めているよ」


 だからさぁ。自分の人権くらいは守って欲しいんだが。


「マアジを前にしたら普通の女の子は財産も貞操も捨てて傅くものだけどなぁ」


 そんな俺にとって生きやすい世界とは思えんのだが。


 実際に学校での俺は散々だし。


「じゃあマアジもウチの学校に来て?」


「進学希望だ。芸能科のある高校って偏差値低いだろうが」


「進学コースあるから」


「とは言ってもな」


 ふと思い浮かぶ女子の顔。


「今考えていること当ててあげようか?」


「当てたら明日は萌えキュンオムライスだ」


「ん。じゃあ。コホン」


 わざとらしく咳をして、ルイは言う。


「ルイを前にしていながら別の女の子のこと考えている俺サイテー」


 ぐ……。


「明日は萌えキュンオムライスだね」


「了解」


「もちろんマアジがメイド服着て美味しくなる呪文を唱えてくれるんだぞ?」


「やるとなったらガチだぞ?」


「多分マアジが女装したらボクとタマモ……新しい世界が開けちゃう」


「見苦しいか?」


「逆。絶対愛らしくなる。それもトップアイドルオメガターカイトのメンバーでも敵わない程度には」


「男らしくないマスクってのは俺のコンプレックスなんだが」


「オティヌティヌは付いているんでしょ?」


「申し訳程度にはな」


「大きくなくても大丈夫だって。そもそもこっちだってガバガバじゃないから」


 そう言ってくださると安心はするんだが、寝取られフラグにも思えて。やっぱり大きい男になびく空気あるじゃん。


「でも今私のお尻を押し上げているジーパン越しの感覚で言えば、結構覚悟の要る体積っぽいけど。そもそも誰と比べて小さいと思ってるの?」


「あー。その。ネットで日本人のアレの平均が何センチか調べたりして」


「情報化社会の弊害だぞ。でもどんなマアジで受け止めるから。ボクの初恋ハンター様。アイユースタースクリーム。ボクは君に首ったけなんだよ?」


 ネット耳年魔。年齢的には女子高生ではあるんだけども。

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