第一話 目指すは魔法王

人は魔法がキラキラ輝いて綺麗だと言った。


確かに綺麗かもしれない。けど⋯⋯、綺麗なものほど残酷だ。

こちらの意思など関係なく残酷だ。



とある話を出来うる限りの敬意を払ってしよう。


その少女は⋯⋯魔法が私のように大好きだった。キラキラしているからではない。魔法そのものを友人のように大切に想う少女だった。

その少女は古代に生まれた少女だ。


彼女の名前はミィア。後の世に残酷なことをある人にされてしまった妖精様として伝わる少女だ。


少女はある日、神聖と謳われた池のほとりの木でゆらゆら、ゆらゆらと魔法と戯れ遊んでいた。


ずーっと一人ぼっちだった少女はその日、とある少年と出会う。

少年はとにかく一人になりたかった。かの少年は魔法が嫌いだったのだ。嫌いな自身が異端なことを理解していた少年はとにかく一人になりたかった。


そうして神聖な池のほとり辺りなら誰もいないと思った少年は魔法が大好きな少女と出会ってしまった。

その出会いは必然というべきだった。


木の根に二人で腰掛け沈黙が続く中、先に切り出したのは少女だった。


少女が「どうして魔法が嫌いなの?」と少年に聞くと

少年は「みんな魔法ばかり見て魔法を持ち上げる奴ばかり。嫌気が差す。魔法は勝手なのに。」と言う。


少女はそれを見て聞いて目を大きく見開いたかと思うと大笑いした。


「あははっ! よく知ってるね! そうさ、魔法は何時だって勝手さ!」と。


少年はその反応がやけに新鮮に感じ、彼らは友達になった。


きっかけは、出会いは何時だって些細な出来事から始まる。


それを読んで本を閉じた。これは実際にあったお話し。教訓として後世に伝わってきたお話し。



私はこの本を、この事実を知り更に魔法が好きになっていた。どうしようもない馬鹿だ。


そんな馬鹿は今もこのお話しの最期に登場する場所を探している。


きっとその星屑のような花が咲き誇る場所には彼女のお墓があるのだ。彼女の本当の居場所が。彼らの居場所が。

そこに踏み込むのもやっちゃいけないと分かっている。けど、それでも彼らに聞きたい。


美しく咲き誇り、時にフザケ合い笑って、互いの危険の為に、仲間の危険の為に何度も命を賭し、それぞれがそれぞれの道を極める。

それに困っているようだったら一緒に悩んで時に手を貸す。ヒドイことをしてきた相手にさえも手を貸す。

世紀の事件も本当なら死人が出ていた事件も躊躇いなく助ける。

最期は仲間の為に死に見事助けた少年。けど、最期までフザケた時のように笑っていた。

そんな彼らに聞きたい。

憧れだから聞きたい。


――どうしたら私もあなた方のように歩みを止めず笑い合うことが出来ますか? と。


でも応えはない。当たり前だ。なら、私が咲き誇っていつか聞きに行こう。憧れの彼らに。


そう思い、伝説に出てくる池のほとりの木を撫でる。よし、覚悟は決まっている。

私は先祖の王のように人を愛しふざけ合える魔法王になろう。


測って、全ての魔法を極める。それが最適解だと思った――


「もっと肩の力を抜いて。最適解じゃなくてやりたいことをしようよ。ほら、笑って?」


そう何処からか声がした。慌てて周りを見るも誰もいない。今のは――いやまさかな。


そう考えた私はやけに落ち着いていた。暖かかった。目から暖かいものを感じる。


あぁ、やっぱり好きだ。あのお話し。敬愛すらしている。


行こう。ゆっくりでもいい。焦らず笑えるような最期を。


そう思い鞄を肩にかけて自然と歩き出すと疲れは一切なく心が暖かかった。


魔法王になるには先ずは試験。だけどその為の学校。私はそこに通っている一生徒でしかない。今は。


「行ってらっしゃい、アマラ」


「行ってきます、大好きなお二方。」


風がゆらゆらと日差しは暖かくある中、後ろを振り向き笑って答えた。



そこからは遅刻すると不味いので慌ててバスに乗り、バスを乗り換え、着いたら走って学校行きのバスに乗った。


と、到着。乗り換え途中結構ギリギリだったけど間に合った。


ふっと顔を上げる。あぁやっぱりデカイな。いつ見ても。

そしてあの二人の時代の王がフザケたからだろう。外観がめっっちゃカラフル。赤に緑に青に黄色に⋯⋯。これ誰も止めなかったのかな?


そんなカラフルな城のような外観の建物の門をくぐる。やたら豪華なのも誰も止めなかったのかな?


そのフザケ倒した王は、私のご先祖様である。泣けばいいんだろうか? 笑っていいんだろうか? 複雑な心境である⋯⋯。


彼女の髪色は私にも受け継がれている。

けど――私は言いたくない心労で色素が抜け落ち白髪になった。元はブロンドだったのだが。


「おはよう、アマラ!」


そう声をかけてくる同級生がくせっ毛の髪とスカートを揺らしながらこっちに駆けてくる。


「おはよう、キイナ!」


「昨日さ、慌てて休み期間の課題終わらせたんだよねー。そっちはどう?」


「私も。しかも兄さんにはこれで行ったら怒られると思うって言われてしまった⋯⋯。」


「あー、つまり怒られる覚悟で来たってこと?」


「いいや、褒められる覚悟。」


「相変わらずの凄い自信。まぁ、楽しみにしてるよ。」


「ふふん。」


「あ、そうだ。宿題の方は終わった? あの戦略考えろーとかいつの時代だよってやつ。」


「もち。でもあれ面白いけどな。」


「えー。大変だったよー。戦略っていってもそもそも何? って感じでさ。あれ、誰が考えたのかな?」


「かなり前の時代の王の試験に肖ったとか?」


「なるほどー。あり得そう、うちの先生方なら。」


そう会話をしながらも学校に入っていった。中も相変わらず豪華だな。


「あ、そういえば今日転入生来るらしいよ。」


「転入生? よほど優秀なんだろうな。」


「ねっ! 転入生なんて初めてだから緊張しちゃうよ!」


「確かに初めて。⋯⋯なんか悔しい。」


「気持ちは分かるけど⋯⋯、まぁ優秀なら良い競争相手が出来たと思おうよ。」


そんなことを話していると教室が近かったのも相まって直ぐついた。席は空いているところを自由に座る。


「転入生、いの一番に見たいし前の席に座ろうよ!」


「まぁ確かに。まぁ生意気だったら実力で分からすか。」


「どうしてそうなったの?」


そんなことを言いながら席についた。鞄も下ろしたし本読もうか――


「じゃあ、転入生どんな人か想像しよ! 当たり外れたら奢りね。」


え、本⋯⋯。いや、でも友人は大切にしよう。あとぶっちゃけ気になるし。転入生。


「乗った。私は生意気に一票。」


「どうしてそうなるの⋯?」


「キイナはどう思う?」


「えー、自分はかっこいい人が良いかな。」


そう目を逸らし、ゴニョゴニョ言うキイナ。


「あ、出会いないって嘆いてたからか。」


「ちょ、ちょっと!」


みんな魔法王になるべく切磋琢磨してるからな。どっちかというと友人しか出来ない環境。


「ま、新しい新入生が良い顔立ちだったら恋愛に現抜かす女子も出てきそう。」


「うぅ、気をつけます。」


あれ? なんかキイナが反省してしまった。


「じゃあ他――」


「全員、席につけ。」


いつの間にか入ってきた厳しいことで有名な先生がポニーテールを揺らしそう言った。


「予定より転入生が早く来てしまったので、紹介しようと思う。」


え、早く来るほどの熱意を?


「入れ。」


「失礼します。」


ガラガラッとデカイドアを開けて入って来たのは良い顔立ちの青年だった。

あぁ、これは。そう思いキイナを見つめる。うん、現抜かしそう。


女子からキャーと悲鳴が上がっている。そんな悲鳴、実際出るんだな。


「あ、俺ってやっぱモテるよな。なんでアイツあんなこと言ってたんだろ。悔しいからか?」


そんなことを転入生は言った。よし、生意気だった。勝った。いや、どっちも当たってたのか。


「ま、お前らに負ける気なんてサラサラないんで。よろしくなー。」


「「「「は?/あ?」」」」


あ、アイツ。全員の怒り買った。

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