2日目、長葱と俺様の名は。

第17話

チュンチュンチュンチュ……ギシ…




ここは、21階。聞こえる筈のない小鳥の囀りを心の中で聞いていると、謎の雑音に妨げられた。


続いて、身体が沈む感覚。居心地の悪さを覚えてゆっくりと瞼を持ち上げると、天井と自分の間に黒くて良い匂いのぼやぼやした何かが——



「キリ。そのまま」


「はぁい…」



良い匂〜い——。


何だろう。お花…お花みたいな…ちょっと違うか、甘くて、でもこれは女の子の匂いじゃないよね?



「おー にこにこえらいな。じゃ、腰上げよっか」



「…腰?」



ばっっちり丁寧に瞳孔まで開いた私は、お目覚め一番自分の胸元に顔を寄せた妖怪の姿を見た。


「ぎゃああああ」


「チッ」


盛大な舌打ちも構わないで違和感を感じた胸元を見下ろすとTシャツが捲り上げられて下着が露わになっていた。



「えっ何っ何事っ事件」


慌てて着直しベッドサイドに置いている眼鏡に手を伸ばして掛けたら、朝から爛々と輝く男の姿が目に入った。思わず眩しさに目を細める。



「おまえさー」


名前も知らない男は甘ーく口元を緩ませながら私に馬乗りになったまま。



「良いモン持ってんなー」



ニッコリ♡



別人のような笑顔を見せた。



「や、やばい、やばい」


何がやばいのか定かでなかったが本能が逃げてと命を下した為寝返りを打った私は男の立ち膝の隙間から腹這いになって下半身を引き抜こうと前進した。


「おっと」

「わああああ」


途端、背後から腰を掴まれて引きずり戻されてしまう。



「どうしたどうした、逃げたい?」


後ろから聞く声に涙目を堪えながら必死に頷く。


すると伸びてきた手が私の胸に触れた。


「ひ」



「んー?どうしたー? ほら…逃げねーと」



耳元で囁かれるも、着いた腕に力が入らない。



「あーあ可哀想になぁ。気持ちよくて逃げられねぇのな…」

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