第14話
身体に衝撃が走る。
え、
ええ、な、
何
どういうこと?
今何、が?
力が抜け手にしていたコップは床に落ちた。
耳を塞ぎたくなるような音を立てて粉々に割れたがそれさえ意識が向く余裕もない。
「んッ ぅ、やっ」
本能で唇を逃そうとするも私のより大きいそれは逃してくれない。必死に隙間を作ってもあっという間に距離を埋められまた深くくちづけられてしまう。私の、抵抗の音だけが唇と唇の間から非情に溢れ落ちていく。
だめ、だ、力じゃ勝てない。
それどころか、どうしてか、潡々力は抜けていく。
「ふぁ…、!」
息継ぎをしようとした瞬間それを知っていて待っていたかのように感じたことのない感触が咥内に侵入った。
熱、い。
熱を持ったそれは簡単に涙を生む。
堅く目を瞑ったままの私に、軽く力を乗せただけの唇。薄く瞼を持ち上げた男は押さえていた手を離して腰を引き寄せた。
その際、驚いて動いた私は落ちて割れた破片を踏んでしまい声を上げた。
「!」
そこでやっと解放されたと思いきや今度は突然、身体が浮いた。
瞬きする間もないその感覚は勘違いではなく持ち上げられたことによる現実のものだった。
まだ、ぼうっとしている。力の抜けた身体ではもう降ろしてほしいと抵抗することも叶わず私はお酒の匂いの中にどこか焦ったような表情を最後に、家に上がり込む男に抱えられて廊下を進んでいるらしい。
「アホか!!」
そう言って投げられたのはベッドの上。
状況が、把握できない。
明るい場所に出て初めてちゃんと見えた男の顔は今まで目にしたどの人よりも綺麗なものだった。
黒髪の下の白い肌は感じたお酒の匂いを裏付けるようにほんのり朱い。
「切ってねぇよな」
ベッドに乗り出し見下ろされている足先。
男の手が私の足首を掴み、靴下を脱がされた。
「や、やめ…」
「黙れ」
確認するように言われたかと思えば苛々を漂わせながら既に緩んでいたネクタイをこんな状況でも感じる程色気ありありと解き切った。
「何ともねぇな。おい」
「ふ」
「ふじゃねーよおまえに聞いてんだよ…」
擬音を背負う迫力で再び縮められていく距離に悲鳴を上げるのを堪えて震える。
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