第10話

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「はぁ? 大丈夫それ?」



夜、ランチもやっているカフェ居酒屋で一刻も早く会いたかった親友は不信感たっぷりの割と大きめな声を発した。


ちょっと周囲の目が気になったが噛み締めるように首を振る。勿論左右に、だ。



なんっなの危なくない? 冗談でも言わないでしょそんなこと」



バッサリ、確かなもやもやを口にする彼女。今日もサラサラショートが可愛い。

しかしウェーブがかった前髪の下の眼光は鋭かった。



「えー、よくない? めちゃくちゃ格好良いなら。滅多にないことでしょーに」



もう一人の意見は違うようだった。


「待って、『いい』って何が?」


「ね。アタシより綺麗な顔? その人」



「うーん善くんとはまた違う感じだったような」


ふーんと微笑みを湛える彼の隣でフォークに肉を刺したここみが一言、苛ついたように「そういう問題じゃないでしょ」と顔を顰めた。



「まず、誰なの?」


「そうなのそこなの」



言いたいことが第三者の視点からもすらすらと言語化されていく。痒い処に手が届くといった心未の発言は心地よいものだった。



「私二年目になったけど、見たことなくて。割と他部署とも関わりあるのに擦れ違うことさえなかったのかなって疑問…。この4月に入って来た人なのか、もしかしたら完全に外の人かも」



「んー でも最初に会ったのってスーパーよね?」


善くんは微笑みを湛えたままだ。


「うん」


「社宅の」


「うん。あ」


「ってことは社員の可能性が高いわね」


「その通りだ善くん」


善くんは頬杖をついてニッコリ。心未はブスブスと肉を刺す手を止めない。



「あ〜〜......社員の可能性が高いとは......社員かぁ」



諭吉先輩はお返ししたい。ぜったい返したい。すぐさま返したい。が遭いたくない。恐いよー。


がくりと項垂れる。


「心未ちゃん…肉が可哀想」


「ケッ“めちゃくちゃ格好良い”ねぇ〜。男ってだけで最悪だわ」


「心未はバイト女の人が多いんだっけ」


「そ、女の人ばっか。そういう所選んだしね。男はー店長とたまに来る本社の人と、バイトに一人居るくらいかな。きりの会社は逆?」


「逆ハーだ?」


梅酒に手を伸ばしていた私は前のめりな善くんに対し「結婚していたり彼女いたりが殆どだよ」と事実を述べた。


「それでも良いからアタシも囲まれた〜い」


「ゼンは妖怪面喰いだからなぁ」


「心未ちゃん。妖怪はいや」



話題は彼氏難民に移り変わり、近々の憂鬱話を聞いてもらった私はお腹もいっぱいになるにつれ少しずつ心が晴れていった。



うん。


あれも精一杯のジョークだったかもしれないよね…?

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