スピンオフ 裏編ノート①
1話
「神山君。私は、宿題だと言いましたよね」
「はい」
放課後の生徒指導室。久しぶりに呼ばれた。呼ばれた理由は昨日の課題をしていなかったからだ。
「では、何故課題を終わらせてないのですか?」
「昨日はそのノートとか拾って大変だったので、できなかったんですよ」
「言い訳はよろしいので、手を動かしてください!」
「はいっ」
この後1時間みっちりと課題とさせられたのだった。もちろん部活では遅れて怒られた。
2話
(うちのクラスの前にさっきから不審者がいるんだけど、どうしよう。あれって確か、サッカー部の神山だっけ。何しにきたの。さっきから、2組の教室前をうろうろしているけど。誰か知り合いでもいないの。いないなら何故2組にきた。はああー)
「うちのクラスに何か用?」
なんだかんだ言って、困っている人を放ってはおけない陽菜であった。
3話
(こんな時間の学校にいるなんて不思議な気持ちだ。夜の学校の探検は一度でいいからしてみたいんだよな。誰もが一度は想像はする夜の学校。このまま学校で1日いても私バレないんじゃないかな。友達いないし……。あーあ、虚しいことを考えるのはやめようか。それよりも遅いな神山君。19時はもう過ぎているのに。私寒いんだけど。早く来ないかな)
七海が集合時間を間違えていたことに気づくのは、もう10分待ってからのことであった。
4話
「くそ。何個目覚まし時計をかけているんだ」
「先輩。こちらの目覚まし時計は止め終わりました。両親も麻酔で眠っています」
「よし。こっちも終わった。あとはスマホだけだな。友人のモーニングコールを鳴らないようにする。よし、電源切ろう」
「そんなことして大丈夫ですか。怪しまれますよ」
「大丈夫大丈夫。起きる前に解除するから」
海辺ノートの裏方が、したくないことランキングの第1位は、地味な嫌がらせらしい。
5話
(おすすめの紅茶と言われても……そんなおしゃれなものの飲み方なんて知らないぞ。コップも白地に植物や、金の装飾がついているし。初めてのカフェ、初めての紅茶。飲めるのだろうか。)
「あちっ」
(そう言えば俺、猫舌だった……
冷めるまで持っていよう。)
ホットがアイスになるまで冷めるのを待っていた勇人は、冷めるよりも先に時間の方が迫り、最後に紅茶を一気飲みをするのだった。
6話
(何で俺は地学室に呼ばれたのだろうか。というか、昼休みに特別教室は開放していないのではなかったか。なぜ開いている。そしてなぜ三好は地学室で昼ごはんを食べているのだ。先生の許可は得ているんだろうな。毎日ここで食べているのなら少し羨ましいな。俺も毎日来ようかな)
非日常な時間を過ごしている七海を羨む勇人であった。
7話①
(誰だよ勝手に歴史を変えたやつは。面倒なことをしてくれたな)
「それじゃあ、前回の小テストを返すぞ」
世界史の先生は俺にテストを返すときに、あからさまなため息を吐いた。
(まあ、毎度のことだし。でも世界史だけは得意だから。覚えるだけだから)
『0点‼︎』
歴史改変した人間を激しく恨んだのは、後にも先にもこの1回だけだった。
7話②
(うちのクラスの前に、また神山がいる。この間も2組の前に来たばかりだというのに、何をしに来た。そして何でその目的の人物はいつもいないんだ。教室の前で立たれるのは迷惑なんだから。もう、仕方ないわね)
「どうしたの? 誰か探しているの?」
なんだかんだ言っても、困っている人を放ってはおけない陽菜だった。
8話
(また紅茶をご馳走になってしまった。今度は、少し冷ましてから飲もう)
(5分くらい経ったしもう大丈夫でしょ)
「あちっ」
農村にいる爺さんが飲む温度だと七海を恨んだ勇人であった。
9話①
三好にノートを預けられたけど、俺1人で地学室の鍵を得ることはできるのだろうか。そもそも、誰先生に言えば鍵を貸してくれるんだ。地学の山下先生か。三好のことを話せば大丈夫か。
「山下先生。地学室の鍵を借りることってできますか?」
「忘れ物?」
「あ、はい。そうです」
咄嗟に嘘を吐いてしまったけど、鍵を借りることができたからいいか。
それで、確か、地学室の後ろの方にある金庫に入れてほしいって言っていたよな。
……地学室に金庫は確かにあった。それもいくつも。でも……俺三好から鍵預かってないんだけど。金庫の中に入れられないんだけど。
9話②
(何だろう。神山君から電話が来ている。三好さんのことで最近話すようにはなってきているけど、いきなり電話をしてくるとは。これだからスポーツ人は苦手なんだよね)
「もしもし、どうしたの?」
そう思いつつも、放ってはおけない性格の陽菜だった。
10話①
(山内さんと放課後デート。行き先は三好の家だけど……俺がリードしないと。山内さんに何もできない男だと思われるのだけは嫌だ。
それにしても、今日に限って話が長い。先生、俺は山内さんと約束をしているんだ。俺が山内さんを待たせるわけにはいかないんだわかってくれるよな)
この日、5組のホームルームが終わったのは、学校全体で1番最後だった。
10話②
(よし! 山内さんをリードできるように、道案内をしっかりするぞ!)
「前の通りまっすぐ行くみたいだね」
三好の家まで一直線だったことを恨んだ勇人であった。
10話③
(山内さんすごいな。こんな高層階のマンションに住んでいるなんて。うちとは正反対だな)
「はあーー……」
古びたマンションの一角で夕方から酒盛りしている両親にため息しか出ない勇人であった。
11話
(三好妹とのいざこざがあったから『Shaun』に行きづらいな。三好がいつ帰ってくるかわからない今は、外から眺めるだけでいいか。三好の妹と会いたくないし)
「君ここでなにをしているの?」
「あの……違うんです! 誤解です!」
不審者として通報された勇人は、警察の厄介にはならなかったが、警察官からは厳重に口頭注意された。
12話①
熱々のコーヒーを頼んだのはいいけど、俺猫舌なのに飲めないじゃんか。何でこんなところで格好つけてしまうかな。もう、やだこの性格。熱々のコーヒーを受け取っている手前、飲まないのは変だよな。
山内さんの方を見ると、山内さんはフーフーと息でカフェモカを冷まして、そっと飲んでいた。
「あちっ」
うん。ずっと見てられる。
12話②
(今度は話をしにきただけだから水だ。正直、あの熱さは慣れないからよかった)
「紅茶とケーキでも出すからゆっくりしていって」
もう勘弁してほしいと願った勇人であった。
13話①
(あれ……何で俺みんなに睨まれるように見られているの? 俺何かしたかな。バカでクラス平均を下げている自覚はあるけど、ビリ5人が揃っている5組は俺だけのせいではないはず。それ以外に迷惑をかけているのは……もしかしていびき! 寝ている時にかいているのか。それだったら最悪だ)
この時はもっと最悪な事態になっていることを知らなかった勇人であった。
13話②
(最近よく山内さんから誘ってくれる。もしかして、山内さんは俺に気があるのか。ま、まさか、これから……俺は、こ、告白されるのか。「人気のないとこ」と言っていたけど、それって、そういうことだよな。遂に、俺にも春が‼︎)
この後、あんなことが起こるとは予想もしていなかった勇人であった。
14話
部屋の片付け……いつかしようとは思っているけど、やる気は全く起きない。またテスト期間一気にするのでいいか。あの時だけは何でか掃除をしたい気分だから、捗るんだよな。
15話
(最近山内さんと会えていない。メッセージも返信してくれない。俺は山内さんについに嫌われてしまったのか。まあ、俺自身も山内さんと釣り合うとは思ってもいないから、全然ダメージなんてないけどな!)
そう思いながらも、心の中で涙を流す勇人であった。
16話
(山内さんに呼び出されるなんて……告……されるのか……。いやいや、山内さんに限って、そんなことはない。流石に俺と山内さんじゃ釣り合わないから。山内さんにはもっとイケメンで頭が良くて運動もできるやつじゃないと。物語の中以外でそんな人物がいるのかは知らないけど……)
陰から陽菜の表情を見て、絶対に違うことを悟った勇人の心には、何も残ってはいなかった。
17話
ここまでくればもう大丈夫だろう。何なんだあいつ。絶対頭おかしいだろ。人の首を切るなんて、簡単にできることではないだろう。ああ、考えているだけで、胃がムカムカする。
18話
保健室に来るのなんて久しぶりだな。高校では初めてかもしれない。養護教諭の先生全然知らない人だったし。こうして休んでいるのも悪くないな。学校にいるのに授業に出ないなんて悪いことをしているみたいだ。今までサッカーばっかりで、学校生活を無駄に過ごしてきたから、いつもと違うことをしてみるのも悪くないな。
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