第30話
三好は改めて咳払いをして話し出す。
「ところで、そろそろ私からもいいかな?」
そう言って、俺の方を見つめる。
どうやら用事があるのは俺に対してみたいだ。何だろうか。
「ああ。うん、何かな?」
「私が死んでいた時のことについていろいろと教えてほしい」
とんでもないこと言い出すな。
「特に何が知りたいの?」
はっきり言って、いろいろなことがありすぎて、よく覚えていないことがほとんどだ。なんせ隣の山内さんが急に敵になったのだから。あれは本当に驚いた。
「うーん特にと言われても、何が起きたのかさえ知らないから、時系列に話してくれると助かる」
俺は山内さんの方を見つめる。
だって、俺には荷重い。時系列に説明なんて俺の頭がごちゃごちゃになりそうだ。もうすでにごちゃごちゃなのに。
山内さんはため息を吐いて、紅茶を1杯啜った。
「わかった。私からでよかったら、話すよ。その代わり、私部分部分しか知らないから、補足はしてよ」
「わかった」
俺には頷くことしかできなかった。
補足か……俺にできるかな。
「三好さんが学校に来なくなってから、神山君が預かり物を返したいって、三好さんを学校中探していたの。だから私が声をかけて……」
「神山君を殺そうとしたの?」
「違うから。私そんなに非情じゃないから。もう、話がわからなくなるからヤジ禁止」
「質問ならいいの?」
「質問も禁止。とりあえずは最後まで私の話を聞いて」
この2人、なかなかいいコンビになりそうだ。三好が意外とボケをできるのか。文化祭くらいならウケるんじゃないか。
顔を上げると俺はなんでか睨まれていた。
ごめんなさい。真面目に話を聞きます。
「それで、学校中で私を探していた神山君をどうしたの?」
「どうもしてない。単に、協力してあげただけ」
“だけ”心に刺さるからもう少しオブラートに包んで欲しかった。そうか……だけなのか。
「三好さんが学校に来たら、連絡先くらいは聞いてあげようかと思っていたけど、あんた全然来ないから。挙げ句の果てには遺体で見つかるし、神山君を疑ったわよ」
俺、山内さんに疑われたの⁉︎ 何もしていない、1番健全に
あ、「送る」って初めて言った時も、疑っていたから「いい」って言っていたのか。そりゃ怖いわな。もしかしたら三好を殺したかもしれない奴が、「送る」とか言ったら。よく、許可してくれたよ。俺なら、全力で拒否しているわ。ありがとう山内さん。受け入れてくれて。
「それから、神山君をお茶に誘ったの……」
三好は何かを言いたそうにしていたけど、山内さんが物理的に手で三好の口を押さえて、口を封じる。
「そこで、神山君がノートの家族に返したいって、この店に来て、目の前でノートを出すから、あの時は本当に驚いたわ。まさか、神山君じゃなくて、三好さんがノートを持っていたなんて。もう何が何だかわからなくて、その日以降怖くなって神山君と連絡を取れなくなっていたの。神山君には悪いことをしたけど」
なんだかごめん山内さん。なんの事情も知らなくて、簡単に会いに行って。俺、あの間だけはストーカーだったんだ。通報されなくてよかった。
「まあ、そんなこともあって、私は三好さん殺しを神山君だと決めつけて、手紙で呼び出したの。まだメッセージを送るのは怖かったから……そこで……神山君を……ちょっとごめん……」
山内さんはトイレに駆け出した。
ああ、そうか。あれはトラウマだもんな。俺も山内さんが生き返ってくれるまでトラウマだったもん。
「何があったの?」
ようやく俺の出番がやってきた。
「まあ、簡単に言えば、山内さんはそこで殺されたんだよ」
「何それ。もっと詳しく聞かせて!」
山内さんが殺された話で興奮をするな。まあ、話はするけど。
「そこで俺は山内さんに殺されかけたの。そこに、三好が2枚目のノートに書いていた会長が現れて、山内さんを殺したの」
「どうやって!」
「首を切ってだけど……」
うっ……。
俺もまだ思い出したら、嘔気を感じる。あれは誰だってトラウマだって。
「そこからは、この間話した通りだよ」
「ふーん」
俺もトイレに行ってもいいかな。ちょっと危ないかも。
「それで、三好さんはなんで殺されていたの?」
トイレから帰ってきた山内さんはすっきりとした顔をして三好に言う。
ああ、そうか。俺が話していないから山内さんは詳しいことは知らないんだ。
「六花に殺された」
その「六花」って言葉を聞いてまた思い出した。俺、三好姉妹の仲直り計画を立てないといけないんだった。何も考えていないや。山内さんと事前に話をするつもりだったのに、三好がいたから。
「六花って誰?」
何も知らない山内さんが羨ましい。
「……」
絶対バレるだろうになぜ言わない。
「妹だよ」
三好の代わりに言った。
「え⁉︎ あんた、実の妹に殺されるって何したの?」
「私が優秀すぎたから」
何を自慢げに言っているんだ。
「ごめん。私が妹でも殺しているわ」
「なんだと」
「いや、当然でしょ。こんな姉ならいない方がいいでしょ」
それは言い過ぎでは。
「そんなこと言わないでよ。お姉ちゃん泣くよ……」
もうすでに泣いていた。それも割と
「ご、ごめん……流石に言いすぎたわ」
「いいよ。私は不出来なお姉ちゃんだから」
「学年1位が不出来とか言わないでよね。それ以下の人はみんな不出来になるでしょ」
「テストなんて単なる数字だよ。人生においては何も関係ないんだよ」
「そうでもないでしょ。テストでいい点取らないと、将来の選択肢は減ってしまうでしょ。全教科いい点とっているんだから、なんでもできるってポジティブに考えなさいよ」
2人とも俺がいること忘れているな。山内さんの言葉結構刺さるから、そろそろやめて欲しいな。俺こそ泣いちゃうぞ。
そんなことより、俺にはしないといけないことがあるんだった。
「山内さん。少し話があるんだけどいいかな?」
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